地球温暖化の原因はCO2か? 8
2008年8月24日 寺岡克哉
今回は、「地球温暖化の原因はCO2か?」という問題について、これまで
お話してきた要点を、まとめてみたいと思います。
ところで・・・
「地球温暖化への懐疑論」を調べていて、思ったのですが・・・
懐疑論者たちの中には、ずいぶんと難しい理屈を、こねくり回す者がい
ます。
だから、科学の勉強をかなりやっている人、たとえば理系の大学院生や、
プロの科学者であっても、
懐疑論者たちの「ウソ」を的確に見抜くのは、なかなか骨の折れることで
はないかと思います。
それが一般の人々ならば、懐疑論者たちの「ウソ」を見破ることは、なお
さら難しいでしょう。
しかしながら、そのような懐疑論者たちの「ウソ」を見抜くのに、いちいち
懐疑論者たちの議論に、すべて付きあう必要はありません。つまり、
「いちばん効いている要因は何か」
「いちばん本質的な要点は何か」
ということに、着目すれば良いのです。
私は、そういう方法によって、懐疑論者たちの主張が正しいのかどうかを
判断しています。
以下に、懐疑論者たちの「ウソ」を見破るための、いちばん本質的な要点
を挙げてみましょう。
* * * * *
☆ 懐疑論者たちの主張
二酸化炭素による温室効果は飽和している。(エッセイ333)
二酸化炭素は、
地球から放出される「赤外線」を吸収し、
宇宙に熱が逃げるのを妨(さまた)げることで、
温暖化を生じさせている。
しかし、
二酸化炭素が吸収する波長の赤外線は、
すでに今の二酸化炭素濃度で、すべて吸収されている。
だから、これ以上いくら二酸化炭素が増えても、さらなる温暖化は起こら
ない。
★ ウソを見破るための要点
二酸化炭素による温室効果は、飽和していない!
それは、「金星」という実例によって示されている。
金星の表面温度は462℃であるが、その原因は、二酸化炭素による温室
効果である。
もしも、この温室効果がなかったら、金星の表面温度は−50℃にも下がっ
てしまう。なぜなら金星は、地球よりも太陽に近いが、厚い雲に覆われている
ため、地表にとどく太陽光が、地球よりも少ないからである。
ちなみに、金星大気の二酸化炭素量は、地球大気のおよそ25万倍にも
なっている。
そんな莫大な量にまで、二酸化炭素が増加しても、その温室効果は飽和
しないのである。
また、「ニンバス」という人工衛星により、
地球から放出されている、波長15ミクロン付近の赤外線が、実際に
観測されている。
この赤外線は、二酸化炭素がもっとも吸収しやすい波長である。それにも
かかわらず、地球から放出されているのである。
この観測事実によっても、
二酸化炭素による赤外線吸収が、飽和していないこと。
したがって二酸化炭素の温室効果が、飽和していないことは明白である。
* * * * *
☆ 懐疑論者たちの主張
水蒸気の温室効果が大きいので、二酸化炭素が少しぐらい増えても、温暖
化には関係ない。(エッセイ335)
★ ウソを見破るための要点
たしかに、水蒸気の温室効果の方が、二酸化炭素よりも大きい。
現在の地球大気においては、温室効果全体の60%が水蒸気によるもの
で、26%ていどが二酸化炭素によるものである。
もしも温室効果が存在しなかったら、地球の平均気温は−19℃ぐらいに
なってしまう。しかし実際は14℃ていどである。
これは、地球大気の温室効果によって、およそ33℃の温暖化がすでに
起こっているからである。
そのうちの26%だと、およそ9℃の気温上昇ぶんが、二酸化炭素による
温室効果ということになる。
このように見ると、たしかに水蒸気の温室効果の方が大きいが、二酸化
炭素の温室効果も、決して無視することはできない。
また、「ニンバス」という人工衛星により、地球から放出される赤外線が
観測されているが、
波長15ミクロン付近の赤外線は、二酸化炭素による吸収のために、地球
からの放出がガクンと減っている。
この観測事実により、二酸化炭素による温室効果が、たしかに無視
できない大きさであると、明確に証明されている。
(15ミクロン赤外線の放出は減っているが、上で話したようにゼロではなく、
二酸化炭素による吸収は飽和していない。また、15ミクロンから少し離れた
波長では、まだまだ二酸化炭素による赤外線吸収の余地がたくさんある。)
* * * * *
☆ 懐疑論者たちの主張
太陽の活動が、温暖化の原因である。(エッセイ338)
太陽の黒点周期は、およそ11年であるが、
太陽活動が「活発化」すると、その周期が11年よりも少し短くなり、
太陽活動が「沈静化」すると、11年よりも少し長くなる。
この黒点周期の長短と、北半球の平均気温との相関がよい。つまり、黒点
周期が短くなると(太陽が活発化すると)気温が上昇し、その反対に黒点周期
が長くなると(太陽が沈静化すると)気温が低下している。
ゆえに地球温暖化は、太陽活動が原因で起こっているのである。
★ ウソを見破るための要点
たしかに黒点周期のデータをみると、1860〜1980年の間では、北半球
の平均気温と、よい相関関係になっている。
しかし1980年以降では、太陽活動が安定しており、活発化の傾向は見られ
ない。
つまり、1980〜95年の間における黒点周期は、10.25年〜10.50年
ぐらいで安定している。
さらに1990〜95年にかけては、黒点周期が10.25年から10.50年へと
長くなっており、太陽活動はむしろ沈静化している。
しかし一方、北半球の平均気温は、1980年以降もぐんぐんと一直線に上昇
している。
このことから1980年以降、とくに1990年以降の気温上昇を、太陽の
黒点周期で説明するのは、もはや不可能になっている。
つまり、「新たな観測データの出現」によって、近年起こっている温暖化に
ついては、懐疑論者たちの主張が否定されたのである。
* * * * *
☆ 懐疑論者たちの主張
宇宙線の減少が、温暖化の原因である。(エッセイ339)
地球には「宇宙線」が降りそそいでいるが、それが大気に衝突すると、さま
ざまなイオンを作る。
それらのイオンは、「雲をつくる核」となり、雲の量を増加させる可能性が
考えられる。
一方、太陽活動が活発になると、「太陽風」が強くなり、宇宙線が散乱さ
れる。そうすると、地球に降りそそぐ宇宙線の量が減る。
宇宙線が減ると、雲の核になる「イオン」が減り、したがって「雲の量」も
減ることになる。
その結果、地上に太陽光が多くあたるようになって、温暖化が起こるので
ある。
★ ウソを見破るための要点
20世紀後半では、太陽活動が安定しており、とくに活発化の傾向は見られ
ない。
したがって宇宙線の観測においても、20世紀後半では、一方的な減少
傾向が見られない。とくに1990年代以降は、その反対に宇宙線の量が
増えている。
ところが地球の平均気温は、20世紀後半においても、一方的に上がり続け
ている。
これらの観測事実により、近年起こっている温暖化については、懐疑論者
たちの主張が否定される。
* * * * *
つぎに、「二酸化炭素が温暖化のおもな原因だ!」と、確信をもって言える
理由を挙げます。(エッセイ331)
1.二酸化炭素には「温室効果」が存在する。
2.その温室効果をもつ二酸化炭素が、産業革命以降、「大幅」に増え
ている。
3.そして、二酸化炭素の温室効果を考えなければ、現在の気温上昇
が説明できなくなっている。
4.また、二酸化炭素以上に明確な、それ以外の「他の原因」は、今の
ところ存在しない。
ちなみに、IPCCの評価によると、
地球温暖化の原因が、人類が排出した「温室効果ガス」である可能性
は90%以上。
温暖化の原因を、太陽活動など「自然の要因」だけで説明できる可能性
は5%未満。
と、なっています。
以上から、
地球温暖化のおもな原因は、人類が排出した二酸化炭素だと断定して、
ほぼ間違いありません!
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