地球温暖化の原因はCOか? 2
                             2008年6月22日 寺岡克哉


 前回は、ちがうテーマの話だったので、すこし間が空いてしまいました。

 さて今回は、「地球温暖化のおもな原因が二酸化炭素である」という
「正当な見解」について、まず見ておきたいと思います。



 ところで・・・ 

 一体なぜ、多くのまともな科学者たちは、「地球温暖化のおもな原因は
二酸化炭素である」
と、口をそろえて言うのでしょう?

 それは、この見解が現状において、いちばん確実な「科学的な根拠」を
もっている
からです。

 べつに、世界中の科学者たちが徒党を組んで、人類全体を騙そうとして
いる訳ではないのです。



 懐疑論者たちが、(嘘・デタラメを含めて)どんなに色々なことを吹聴しても、

 上の「正当な見解」よりも、「さらにもっと確実な根拠」を示すことが出来な
ければ、

 「正当な見解における科学的な根拠がいちばん確実である」という事実
は、微動だにしません!


 懐疑論に騙されないようにするためには、まず、このことを十分に理解する
必要があります。

 そのためにも、まずはじめに、「地球温暖化のおもな原因が二酸化炭素で
ある」という「正当な見解」について、お話しようと思ったのです。



 ところで懐疑論者たちは、「正当な見解」に対して、いろいろと「いちゃもん」
をつけるだけです。

 だから、「反論」ではなく「懐疑論」と言われるのです。

 もしも、「地球温暖化の原因は二酸化炭素でない」と、まともに反論を主張
したいのなら、それを科学的に証明しなければなりません。

 それは単に、「二酸化炭素以外にも、このような原因が考えられる」という
レベル、つまり「定性的なレベル」ではありません。

 そうではなく、「その原因が、たしかに二酸化炭素よりも大きく影響して
いる」という、「定量的なレベル」
においてです。



 そしてさらには、大気中の二酸化炭素がこんなにも増えているのに、なぜ、
その温室効果が現れないのかも証明しなければなりません。

 なぜなら、もしも地球温暖化の原因が二酸化炭素でないならば、現在に
おいてもなお、二酸化炭素の温室効果が現れていない訳です。

 なので、なぜそうなのかを証明しなければなりません。



 地球温暖化への懐疑論を、まともに聞く価値があるようにするためには、
少なくてもそれだけのことが必要です。

 ただ単に、「正当な見解」に「いちゃもん」をつけているだけでは、懐疑論の
信頼性は永久に上がりません。

 つまり、「正当な見解における科学的な根拠がいちばん確実である」という
事実を、覆(くつがえ)すことは絶対にできません。

 それを覆したいのならば、「正当な見解における科学的な根拠」よりも、さら
にもっと確実な根拠を、明確に示さなければならないのです。



 さて、その「正当な見解」における、いちばん確実な「科学的な根拠」とは、
次のようなものです。

 (1)二酸化炭素には「温室効果」が存在する。

 (2)産業革命以降、大気中の二酸化炭素が「大幅」に増えている。

 (3)二酸化炭素の温室効果を考えなければ、現在の気温上昇が説明
できない。


 以下、それらについて、もうすこし詳しく見てみましょう。


                * * * * *


(1)二酸化炭素には「温室効果」が存在する

 地球は、太陽の光、つまり「可視光」を受けて温められます。

 その一方で地球は、「赤外線」として熱を宇宙に放出し、冷やされます。

 この、「温められる熱の量」と「冷やされる熱の量」がバランスして、地球の
平均気温が一定に保たれているわけです。



 ところで二酸化炭素は、可視光はよく通すけれども(つまり透明)、赤外線
はあまり通しません。

 なので、大気中の二酸化炭素がふえると、
 太陽の可視光はよく通すので、地球は同じように温められます。
 しかし、赤外線はあまり通さなくなるので、宇宙に熱を放出しにくくなり(つま
り冷やされにくくなり)、地球温暖化が起こるわけです。

 だから、この「可視光はよく通すけれど、赤外線は通しにくい」というの
が、温室効果の本質です。



 そして、二酸化炭素に「温室効果が存在すること」は、科学的にすごく
良くわかっています!
 
つまり二酸化炭素の、「可視光はよく通すけれど、赤外線は通しにくい」と
いう性質は、実によく調べられているのです。


 まず、二酸化炭素は「透明」なので、可視光を通すことは自明です。


 
一方、二酸化炭素が「赤外線を透しにくい」という性質も、「実験室で調べる
こと」ができるので、とても良くわかっています。

 実験データによると、波長が15ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)ぐら
いの赤外線を、二酸化炭素はとても良く吸収します。
 つまり二酸化炭素は、波長が15ミクロンぐらいの赤外線を、ほとんど透過
させません。

 しかし、
 波長が12ミクロンよりも短かったり、
 波長が20ミクロンよりも長かったりすると、
 そのような赤外線を、二酸化炭素はあまり吸収しません。つまり二酸化炭素
は、そのような波長の赤外線ならば透過させやすいのです。

 また、波長が12ミクロン〜20ミクロンの間については、0.1ミクロン毎より
も詳しい精度で、二酸化炭素における赤外線の吸収率(あるいは透過率)が
調べられています。

 このように、「二酸化炭素の性質」は、すごく精密に分かっています。

 だから、「二酸化炭素に温室効果が存在する」という「事実」は、地球
温暖化に関連した色々なことの中でも、「いちばん良く分かっていること」
なのです。


 温暖化のおもな原因が二酸化炭素であるという「正当な見解」は、まず
第一に、この「いちばん良く分かっている事実」を根本にしているのです。



                 * * * * *


 (2)産業革命以降、大気中の二酸化炭素が「大幅」に増えている。

 産業革命前は、大気中の二酸化炭素が280ppmでした。

 しかし現在では、380ppmを超えるまでになっています。

 これは、今までになかった、すごく大変なことです!

 なぜなら過去の65万年間において、どんなに多いときでも、大気中の二酸
化炭素が300ppmを超えることは無かったからです。

 つまり現在は、地球の大気に「大激変」が起こっているのです!

 温室効果をもつ二酸化炭素が、こんなに増えてしまったら、ふつうに考えれ
ば温暖化の起こらないはずがありません。


                 * * * * *


 (3)二酸化炭素の温室効果を考えなければ、現在の気温上昇が説明
できない。


 20世紀の前半にくらべると、現在では、あまりにも地球の平均気温が上昇
しています。
 なので、もはや二酸化炭素の温室効果を考えなければ、現在の気温上昇
が説明できなくなりました。
 大多数の科学者たちが、「地球温暖化のおもな原因が二酸化炭素である」
ということに「確信」をもったのは、そのためです。


 以下は、IPCC第4次報告書からの抜粋です。

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、人為
起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い(90
%以上の可能性)。


 雪氷の消失とともに起こった、広範囲にわたる大気と海洋の昇温について
の観測結果は、過去50年間の世界的な気候変化が、強制力なし(温室効果
ガスの影響なし)で説明できる可能性は極めて低く(5%未満)、それが既知
の自然起源の要因のためだけではない可能性がかなり高い(90%以上の
可能性)という結論を支持している。

 ※ ( )内の文は、私の加えた補足説明。
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 最近の50年間では、地球の平均気温が0.65℃ぐらい上がっています。
 しかし、それを太陽活動などの自然現象で説明できる可能性は、上の文章に
よると5%よりも低くなっています。

 この「5%未満」という数字を、ふつう常識的に考えたら、
 「過去50年間における温暖化を、自然現象で説明することは不可能に
なった!」
と判断して、まったく問題ないと思います。


                 * * * * *


 二酸化炭素が「温室効果」をもつのは、科学的な事実です。

 その二酸化炭素が、ものすごく増えているのも科学的な事実です。

 地球温暖化の原因として、これ以上に確実な「科学的な根拠」は存在し
ません。


 そしてさらには、二酸化炭素の温室効果を考えなければ、いま起こって
いる温暖化の説明ができなく
なっています。

 これらのことから、「地球温暖化のおもな原因は二酸化炭素である」と
いう見解が、科学的にいちばん正当なのは明らかです!




 じつは私も、科学(物理学)の実験研究に携わっていた経験があるのです
が・・・ 地球温暖化の研究が、もしも他の科学研究とおなじ流れだったとし
たら、次のようになるはずです。

 まず、世界中で「気温の上昇」が観測されるようになりますが、それが今まで
にない「異常な現象」なので、問題視されるようになります。

 それで研究者たちが調べ始めるのですが、一生懸命に調査した結果、
「大気中の二酸化炭素が増えていること」に気がつきます。

 そこで研究者たちは、「気温上昇」と「二酸化炭素」の因果関係を調べるよう
になります。

 その結果、二酸化炭素は可視光をよく通すけれど、赤外線はあまり通さな
いという性質、つまり「二酸化炭素は温室効果をもつ」という性質が発見され
ます。

 ここに至って、「地球温暖化の原因は二酸化炭素である」という結論が、
「科学的に確立」するのです。

 つまり一般的に、科学の研究というのは、
 1.異常の発見
 2.原因の推定
 3.原因の確認
というふうに進むわけです。



 しかし地球温暖化の場合は、初めから「二酸化炭素は温室効果をもつ」
ということが分かっていました。つまり根本的な原因が、すでに知られていた
と言うか、最初から「ネタバレ」していたわけです。

 私は理系の大学に進んだこともあり、地球温暖化の話は、20年ぐらい前
から知っていました。そして、このまま二酸化炭素が増えつづければ、いつ
か気温上昇が顕著になるに違いないと、この20年間ずっと思っていました。

 1990年代から、猛暑や水不足が多くなり、地球温暖化が「実感」として
感じられるようになって行きました。

 私自身としては、2005年の終りごろに、地球温暖化に対して「確信」が持て
るようになりました。ヨーロッパの熱波や、アメリカの超巨大ハリケーン、そし
てIPCC第4次報告に向けた最新の研究結果などを、見聞きするようになった
からです。
 そして2006年から、その重大さを世間の人々に知ってもらいたいと思い、
地球温暖化のエッセイを書きはじめました。

 さらに昨年の2007年には、IPCCの第4次報告書によって、
 地球温暖化のおもな原因が二酸化炭素であることが、科学的に明確
にされたのです!



 この後に及んでもなお、懐疑論を吹聴する人間たちには、疑問を持たざる
を得ません。



      目次へ        トップページへ