地球温暖化の原因はCO2か? 6
2008年8月10日 寺岡克哉
今回は、「太陽の活動と、地球温暖化の関係」について、見て行きたいと
思います。
というのは、地球温暖化への懐疑論者たちが、
「太陽活動の活発になっていることが、いま起こっている温暖化の、おもな
原因である。」
「だから二酸化炭素は、温暖化の原因などではない。」
という主張しているからです。
* * * * *
しかしながら、まずはじめに結論から言ってしまうと、そのような主張は、現在
すでに破綻しています。
なぜなら、近年(20世紀後半)においては、太陽活動が活発化していない
からです。
しかし、それなのに、地球の平均気温が上昇しているからです。
とくに1980年以降は、地球に降りそそぐ太陽エネルギーについて、すごく
精密な測定がなされています。
それによると、1平方メートルあたり1366ワット(1366W/m2)ぐらいの
値で、太陽エネルギーの強さ(太陽放射量)が安定しています。[参考文献
CLIVAR/PAGES Newsletter Vol.13,No.3,p14]
それなのに1980年以降も、地球の平均気温は、どんどん上がり続ける一方
なのです。
たとえばIPCCの第4次報告書によると、1980〜2005年の間に、地球の
平均気温が0.4度も上昇しています。
(※注意)
太陽の活動は、およそ11年の周期で、強くなったり弱くなったりします。たとえ
ば、いま話した「太陽放射量」について見ると、変動の幅が0.1%ぐらいで上下
しています。
それぐらいの上下があるものの、しかしながら「全体の傾向」として、20世紀
後半の太陽活動は安定してるのです。少なくても、活発化の傾向は絶対に見ら
れません。
「太陽が活発化していないのに、気温が上昇している!」
この一点の事実によって、
近年における温暖化のおもな原因を、太陽活動に求める説は、
すべて誤りであると判断できるのです。
そのことさえ、しっかりと理解しておけば、例えどんなに難しい理屈をこねくり
回されたとしても、懐疑論者たちに騙される心配はありません。
* * * * *
以上のことを踏まえた上で、懐疑論者たちが主張する「すでに破綻した仮説」
を、見てみましょう。
まず、太陽の表面には「黒点」と呼ばれる、小さな「黒い染み」があります。
しかし「小さな染み」と言っても、地球の大きさと同じぐらいか、それより大きな
ものもあります。
ところで、太陽の活動が活発になると、その「黒点」の数が増えます。しかし
反対に、太陽活動が沈静化すると、黒点の数は減ります。
そして上でも話したように、太陽の活動は、だいたい11年の周期で、活発
化と沈静化をくり返しています。
だから太陽の黒点も、およそ11年の周期で、増えたり減ったりを、くり返して
いるのです。
しかしながら、太陽黒点の「11年周期」は、キッチリと11年なのではあり
ません。
太陽周期の全体にわたる活発さに応じて、11年よりもすこし短くなったり、
反対にすこし長くなったりします。
たとえば太陽の活動が、全体的に活発化すると、その11年周期が短くな
り、9.7年ぐらいになります。
しかし、太陽活動が全体的に沈静化すると、その周期が11.8年ぐらいに
長くなるのです。
この11年周期の長短と、地球の平均気温とが、よく一致しているという
研究報告があります。
つまり、黒点周期が短いとき(太陽が活発化しているとき)は、地球の平均
気温が高くなっており、
その反対に、黒点周期が長いとき(太陽活動が沈静化しているとき)は、
地球の平均気温が低くなっているのです。
そのようなデータを根拠にして、懐疑論者たちは、
「地球温暖化の原因は、二酸化炭素でなく、太陽活動である」
と、主張しています。
* * * * *
たしかに黒点周期のデータをみると、1860〜1980年の間では、北半球
における平均気温のデータと、傾向がよく一致しています。つまり、「よい相関
関係」になっています。
[参考文献 K.Lassen: Solar Activity and Climate]。(この論文では、地球
の平均気温でなく、北半球の平均気温を使っています。)
それを見る限りでは、懐疑論者たちの主張を、否定することは出来ません。
しかし1980年以降では、黒点周期をみても太陽の活動が安定しており、
活発化の傾向は見られません。
Lassenが1999年にアップデートした論文では、1995年までのデータが
掲載されていましたが、
それによると、1980〜95年の間における黒点周期は、10.25年〜
10.50年ぐらいで安定しています。
さらにデータを詳しく見ると、1990〜95年にかけては、むしろ太陽活動が
沈静化しているようです。つまり黒点周期が、10.25年から10.50年へと
長くなっているのです。
しかし一方、気温は1980年以降も、ぐんぐんと一直線に上昇し続けてい
ます。
論文のデータでは、1980〜95年における北半球の平均気温が、ほぼ
一直線に0.4℃も上昇しています。
だから、1980年以降の気温上昇を、太陽の黒点周期(つまり太陽活動)
で説明するのは、もはや不可能になってしまったのです。
そして1990年以降になると、黒点周期と気温の相関が、完全に破綻して
います。
ちなみに論文のデータを見ると、いちばん太陽が活発化していた(つまり、
いちばん黒点周期が短かった)のは、1930年代でした。
そのときの黒点周期は9.70年で、北半球の平均気温は高いときでも、
(ある基準値からの差で)+0.1℃でした。
一方1990年代は、黒点周期が短くても10.25年で、気温は+0.5℃
にもなっています。
それをまとめると、つぎの表のようになります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
年代 黒点周期 気温(基準点からの差)
1930年代 9.70年 +0.1℃
1990年代 10.25年 +0.5℃
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
上の表から明らかなように、
1930年代にくらべて1990年代は、太陽の活動が弱くなっている(黒点周期
が長くなっている)のに、気温が0.4℃も高くなっています。
懐疑論者たちが主張する「太陽黒点周期の仮説」が、すでに破綻している
のは一目瞭然です。
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事実は、以上なのですが・・・
悪質な懐疑論者のなかには、1980年代までのデータしか見せないで、
「黒点周期と気温の相関がよく一致している」と主張する者が、まだ今でも
いるかも知れません。
なので皆さんは、それに騙されないようにして下さい。
また懐疑論者たちは、現在では「太陽黒点周期の仮説」が破綻してしまった
ことを、公に認めるべきです。
そうしなければ、良識ある一般の人々から、なおさら信用されなくなってしま
うでしょう。