COP17 その1 2011年12月11日 寺岡克哉
今回は、COP17が開幕してから閉幕までの流れを、追って行き
たいと思います。
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11月28日。
国連気候変動枠組み条約 第17回締約国会議(COP17)が、
南アフリカのダーバンで開幕しました。
この会議には、190ヶ国以上の政府や非政府組織(NGO)代表
など、1万人以上が参加しています。
COP17の最大の焦点は、先進国だけに温室効果ガスの削減
を義務づけた「京都議定書」の期限が2012年の末に迫るなか、
2013年以降から各国がどのような枠組みで、取り組みを進めて
行くかです。
事前の交渉では、「京都議定書の延長」を求める途上国と、
中国やアメリカなど主要排出国も参加させる「新枠組み」を求め
る先進国との対立が解けずに、打開の糸口が見えていません。
開会式では、
気候変動枠組み条約の、フィゲレス事務局長が、「(アフリカなど
で)温暖化の被害を受けている人のために、具体的な行動を起こさ
なければならない」と、各国の協力を呼びかけました。
また、議長を務める、南アフリカのマシャバネ外相は、「第2約束
期間(つまり京都議定書の延長)の解決策を示すことが大切だ」
などと強調しました。
会議が始まると、
島しょ国の代表として、カリブ海にあるグレナダの交渉担当者
は、「京都議定書だけが唯一、温室効果ガスの削減を義務づける
枠組みであり、今後とも継続しなければならない」と、訴えました。
また中国も、「今回の会議では、京都議定書の下で先進国が
今後も削減義務を負うことを決めるべきだ」と述べて、日本など
先進国が「議定書の延長」を受け入れるように求めました。
これに対して、日本やEUなどは、経済発展をつづける新興国
の中国やインドなど、主要な排出国も参加する「新枠組み」の
必要性を訴えており、
会議初日の冒頭から、双方の主張が平行線をたどりました。
* * * * *
11月29日。
日本政府は、「地球温暖化問題に関する閣僚委員会」をひらい
て、京都議定書の延長に反対し、すべての主要排出国が参加す
る「新枠組み」を目指す方針を確認しました。
野田佳彦 首相は、
「地球温暖化対策は人類の将来にかかわる大きな課題だが、
全世界が一丸となって取り組むことができる、1つの公平かつ
実効的な、法的な枠組みの整備を急がなければならない」と
述べて、
「日本代表においては、本日の委員会での議論を踏まえ、1つ
の法的な枠組みを目指すという、わが国の一貫した立場をつよく
訴え、国際社会の地球温暖化に対する取り組みが一歩でも二歩
でも前進するよう努力してほしい」と指示しました。
細野豪志 環境相は、閣僚委員会後の記者会見で、
2020年までに温室効果ガスを、1990年比で25%削減する
という中期目標について、
「25%という目標自体は、現段階で変えているものではないと
いう説明をしていきたい」と述べ、COP17でも中期目標を維持
する考えを示しました。
この日、COP17の現地で、日本代表が初めて記者会見をひら
きました。
外務省の堀江正彦 大使は、
「京都議定書の枠組みでは、世界の排出量の26%しか削減
できない」と述べて、
議定書の延長には反対し、主要な排出国をふくむ公平で
効果的な枠組みを目指す方針を改めて示しました。
また、
原発事故があり、政府が今後のエネルギー政策を再検討して
いるが、2020年までに1990年比25%削減という中期目標
は、現時点では変わっていないことを説明しました。
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11月30日。
細野豪志 環境相は記者会見で、
COP17で京都議定書の延長が決定されても、「日本は参加し
ない」との考えを、改めて表明しました。
不参加によって、日本の立場が不利にならないよう、「(途上国
支援などの)包括的な提案をする用意がある」とも、述べています。
この日、アフリカ諸国のグループが記者会見し、京都議定書
の延長に反対する日本やカナダなどに対して、
「アフリカの大事なパートナーが、(議定書延長に)参加してくれ
ないことに非常に失望している」と、つよい不満を示しました。
「気候変動はアフリカが直面する厳しい脅威だ」と指摘して、
議定書延長の早期合意をつよく求めています。
また同グループは、前日29日の作業部会で、「(COP17の
会場となった)アフリカの地を、京都議定書の”墓場”には絶対に
しない」と、繰りかえし訴えました。
EUの代表団は、京都議定書の延長に、日本が不参加を決め
た場合、
クリーン開発メカニズム(CDM)を活用することが、困難になる
との見解を示しました。
(CDMとは、先進国の企業などが、途上国で二酸化炭素の
削減事業を行った場合、それを先進国の削減分としてカウント
できるという、「京都議定書で定められた仕組み」です。)
また、発展途上国からも、CDMを使えないようにする意見が
相次ぎました。
ベネズエラの交渉官は、「削減義務を負わなければCDMは
何の意味もなさない。(京都議定書を)延長しなければ(CDM)
の利用を認めない」と力説しました。
日本政府は、この日のCOP17非公式会合で、京都議定書に
代わる「新枠組み」を議論する、新たな作業部会の設置を提案
しました。
* * * * *
12月1日。
EUの代表を務めるヘテゴー委員は、NHKの取材にたいして、
京都議定書の延長について、日本側に受け入れるよう強く迫り
ました。
「京都議定書を延長しなければ、これまで築いてきたもの全て
を失ってしまうおそれがある」として、日本を厳しく批判しました。
また、「議定書の延長で一致した対応を示すことができれば、
中国やアメリカといった主要な排出国にも、削減に向けた圧力
をかけることができる」と述べ、日本が議定書延長を受け入れる
ように強く求めました。
この日、国連のオア事務次長補は、「京都議定書は気候変動
分野で唯一の法的枠組みだ」と指摘して、
「各国政府にとっての課題は、最低でも京都議定書が生み出し
た多くの成果が失われないようにするために、妥協策を見いだす
ことだ」と強調しました。
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12月2日。
欧米などの主要国が、「2020年前後から”新枠組み”によって、
温暖化対策に着手する」との方向で調整を始めたことを、複数の
交渉筋が明らかにしました。
非公式会合で、アメリカは「ポスト20年」という表現をつかい、「新
枠組み」は2020年以降と提案しました。
EUは、「2015年までに交渉を終え、2020年までに発効する」と
いう立場を強調しています。
中国は、「自国の排出量は2030年前後で減少に転じる。2020
年以降は削減に責任をもつ必要に迫られる」との見方を示しました。
日本は、期限を明らかにしませんでしたが、「新枠組み」には賛成
する見通しです。
この日の記者会見で、中国政府代表団の蘇偉副団長は、「新枠
組み」への参加について「排除しない」と述べ、将来的には一定の
ルールの下での削減義務を負う可能性を示唆しました。
ただ、具体的な時期などには触れず、「法的拘束力があるかどう
かではなく、何をやるかの中身が大事だ」とも話しました。
EUの代表団は記者会見で、「新枠組み」に向けた行程表につい
て、「すべての国の目標を盛りこむ」との考えを明らかにしました。
公平で実効的な枠組みにつなげる狙いですが、数値目標につい
ては、「現状を踏まえて決める」との見方を示しています。
日本の代表団は記者会見で、「新枠組み」について、「日本の目
標は1つの包括的な法的文書の採択だ」と指摘し、すべての主要
排出国による、公平で実効的な枠組みを目指す考えを示しました。
京都議定書の延長には、あらためて参加しない意思を表明しま
した。しかし、「京都議定書のルールの議論には積極的に参加し
つづける」と述べ、議定書延長の不参加は、温室効果ガス削減の
努力をやめることではないと強調しています。
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12月3日。
中国政府は、「”新枠組み”の議論を除外しない。交渉次第だ」
と表明し、将来における削減義務の受け入れを示唆しました。
EUは、京都議定書を延長する代わりに、2020年までの「新枠
組み」の発効に向けた交渉日程を提案しました。
アメリカも2020年以降、中国などの参加を条件に、「新枠組み」
の受け入れを表明しています。
中国政府代表団の蘇偉副団長は、EUの提案について、「議定書
の延長を保障するアイディアは、真剣に検討し、支持する」と述べ、
話し合いに応じる姿勢を示しました。
京都議定書の延長を拒む日本にたいしては、「残念だ」と再考
を迫りました。
また、日本が2013年以降も、クリーン開発メカニズム(CDM)
の利用を求めていることについて、「議定書の削減義務の達成
に用いるものだ」と疑問視しました。
さらに日本がCOP17で提案した、日本と途上国の2ヶ国間で
合意して、途上国での削減分を日本の削減とみなす「2国間クレ
ジット」についても、「ルールが普遍的でなく、多国間では通用しな
い」と否定しました。
温暖化による水害などが深刻になっている、カリブ海のグレナダ
などの「島しょ国」は、2020年までも待てないとして、強く反発して
います。
この日の作業部会で、「今回COP17での、”新枠組み”づくりの
完成は断念する」との方針を確認しました。
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12月4日。
中国代表団のトップである、解振華・国家発展改革副主任(閣僚
級)が、
「われわれは2020年以降、何をすべきか議論する用意がある」
と述べて、将来的に温室効果ガス削減義務の受け入れを、排除し
ないという考えを示しました。
また、「国内に、2020年以降の”新枠組み”について協議する
専門機関を設置した」と明らかにしました。
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12月5日。
関係者によると、中国の代表団は、国際的なNGOメンバーとの
会談などで、
(1)京都議定書の延長が最低条件。
(2)2020年に途上国へ1000億ドルを支援する。
(3)グリーン気候基金の運用開始など、昨年のカンクン合意の
実施。
(4)2013〜2015年に締約国の長期目標や進展状況を再検討
する「レビュー」の実施。
(5)条約の基本原則である「(先進国と途上国の)共通だが差異
ある責任」の堅持。
以上の5項目が満たされれば、「新枠組み」に参加するという
意向を、非公式に示していたことが分かりました。
一方、アメリカの参加条件は、以下の3点を挙げています。
(1)先進国と途上国の法的な同等性。
(2)経済発展に応じて、途上国から先進国に移行する「卒業条項」
の新設。
(3)途上国が対策をとる場合、先進国の資金や技術の支援を
条件としない。
これらの「参加条件」について、関係者の中には「明確な方針を
示したのは画期的だ」と評価の声が上がりました。
しかし、その一方で、中国の条件である「共通だが差異ある責任」
と、アメリカの条件である「先進国と途上国の法的同等性」が、真正
面から対立しており、
「両国の条件は、かなりハードルが高い。結局は米中とも、ポーズ
だけではないのか」という冷めた見方も出ています。
この日、細野豪志 環境相がCOP17の会場に到着し、記者団の
取材に応じました。
京都議定書の延長について、「その枠組みには入らない。すべて
の主要国が参加することが必要だ」と強調しました。
また、「京都議定書から離脱はしない」と述べて、2012年までに
課せられた1990年比6%の削減達成に、全力を挙げる姿勢を示し
ました。
「新枠組み」については、「できるだけ早く作って行くことが大切だ」
と指摘して、2020年よりも前に発効させるべきとの考えを示唆しま
した。
この日の作業部会で日本政府は、COP17で採択を目指す成果
文書について、
途上国の削減行動を透明化するルール作りが「ダーバンでの重要
な成果になる」と強調しました。
先送りしようとする途上国側の動きを、「来年まで延期するべきで
はない」と、けん制した格好です。
EUの代表を務めるヘテゴー委員は、この日の記者会見で、「日本
などが京都議定書の延長を拒んでいる状況でも、EUは議定書延長
に合意する用意がある」と述べて、従来よりも踏み込んだ発言をしま
した。
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12月6日。
閣僚級会合が始まりました。
国連の潘基文 事務総長が、「地球の将来は危機にひんしており、
世界がリーダーシップを注視している。議定書の次の目標をめぐる
議論と向き合うよう各国に求める」とあいさつし、拍手を浴びました。
また、
「気候変動問題は京都議定書だけでは解決できないが、土台に
なるものだ」と演説して、議定書延長の検討を出席者に呼びかけ
ました。
議長国 南アフリカの ズマ大統領は、「京都議定書の延長は
必須だ」と述べ、途上国や、島しょ国からも延長論が相次ぎました。
EU代表のヘテゴー委員は、「包括的かつ法的拘束力のある目標
を設定する用意がある」として、2020年までに「新枠組み」を導入
する案を、あらためて主張しました。
そのうえで、京都議定書延長の受け入れを、公式に表明しま
した。
この日の記者会見で、フィゲレス気候変動枠組み条約事務局長
は、京都議定書の延長は「やるかどうかではなく、どうやってやる
か」の議論になっているとして、議定書の延長を前提にして交渉が
進むとの認識を示しました。
また、BASIC(中国、インド、ブラジル、南アフリカ)新興4ヶ国の
代表たちも、記者会見を行いました。
中国の解振華代表は、「BASIC4ヶ国はCOP17に対し、バリ・
ロードマップに基づき、コペンハーゲン合意とカンクン合意を実行
に移すことを期待する」と表明しました。
(※「コペンハーゲン合意」についてはエッセイ410で、「カンクン
合意」についてはエッセイ461で取りあげています。)
インド代表は、「新枠組み」の問題について、「気候変動対策へ
の政治的誠意において各国間には開きがある。現在最も重要
なのは、彼らがこれまでの約束を果たすことだ。この問題におい
て一部先進国は誠意がない」と指摘しました。
ブラジル代表は、「法的拘束力のある文書の調印を支持する。
だが重要なのは、具体的内容のある合意であることだ。現在鍵
となるのは、2020年までの約束を実行に移すことだ」と述べま
した。
細野豪志 環境相は、記者団にたいし、「新枠組み」について
「2020年を待つことなく、できるだけ早急に成立させるべきだ」
と強調し、日本として初めて期限を明言しました。
「新枠組み」を2020年以降に先延ばししようとする、中国や
アメリカの動きを牽制した格好です。
この日、日本政府は関連イベントを開き、気候変動の影響を
受けやすいアフリカを中心とした、途上国への支援をアピール
しました。
イベントでは、日本政府が先に公表した「世界低炭素成長
ビジョン」の内容を紹介し、
先進国の環境技術普及などを含めた、アフリカなど途上国へ
の支援姿勢を、あらためて明確にしました。
また、この日の作業部会では、
今回COP17での「新枠組みの採択」を、正式に断念しました。
* * * * *
12月7日。
細野豪志 環境相が、COP17の閣僚級会合で演説をしました。
この演説で細野環境相は、東日本大震災と福島第1原発事故に
関連して、「このような厳しい国難にあっても、日本国民は気候
変動問題に積極的に取りくみ、世界に貢献する意欲を失っていま
せん」と述べ、温暖化防止に向けた日本の姿勢に変わりがない
ことを強調しました。
「新枠組み」については、EUが2020年までに始めることを提案
しているのに対して、「2020年を待つことなく、できるだけ早急に
成立させる必要がある」と主張しました。
京都議定書の延長については、「加わるつもりはありません」
と述べて、延長に反対する意思を改めて示しました。
2012年までに温室効果ガスを、1990年比で6%削減すると
いう現行の京都議定書の目標については、「原発停止の影響で
厳しいものとなったが、これまでの並外れた努力によって、不可能
ではないと考えている」と述べています。
ただし、2020年までに1990年比で25%削減するという「中期
目標」について、今回の演説ではまったく触れませんでした。
この日の閣僚級会合で、中国の解振華・国家改革発展副主任
は、京都議定書の延長をあらためて主張しました。中国やインド、
そして議長国の南アフリカは、「京都議定書の延長」で意見が一致
しています。
議定書の延長に反対しているのは、日本、カナダ、ロシアです
が、カナダのケント環境相は閣僚級会合で、「カナダにとってキョウ
トはすでに過去のものだ」と述べて、延長に応じない考えを改めて
示しました。
EUのヘテゴー委員は、この日の記者会見で、「日本やロシア、
カナダが参加しなくても、(EUは)京都議定書の延長に参加する
つもりだ」と強調しました。
またこの日、アメリカは作業部会に「新枠組み」への交渉開始
を、事実上拒否する提案をしていたのが分かりました。
交渉筋によるとアメリカは6日夜までに、「新枠組み」の採択や、
それにつながる交渉に関する表現を、いっさい排除した妥協案を
提示し、議長案に盛り込まれました。各国は「事実上、交渉開始
の先送りを求める提案」と受け止めました。
アメリカは記者会見などで、「新枠組み」への議論参加を示唆し
ていました。が、しかしこの提案では、カンクン合意の実施だけに
言及し、カンクン以降の議論を事実上拒否したのです。
その背景には、来年の大統領選挙をひかえて、米国内で温暖化
対策に消極的な共和党などに配慮したものと見られます。
ところでこの日、以下の3つの、途上国を支援する組織が設立
される見通しとなりました。
途上国の温暖化対策や被害に対応する「グリーン気候基金」。
干ばつや豪雨、洪水など温暖化被害に対応する「適応委員会」。
途上国の温暖化対策を技術面から支援する「気候技術センター
・ネットワーク」。
いろいろと交渉が混迷している中で、COP17における最初の
成果になりそうです。
* * * * *
12月8日。
「京都議定書の延長」や、「新枠組み」について、最終的な合意
案をまとめるための調整が始まりました。
しかし意見のへだたりが大きく、この日には「合意案」がまとまり
ませんでした。
日本政府は、この日、太平洋やカリブ海などの「島しょ国」におけ
る、省エネや再生可能エネルギーの開発を支援するために、
2012年からの2年間で1500万ドル(およそ11億6000万円)
を拠出する方針を表明しました。
日本政府は同日、COP17の会場で、関係国などと覚書を締結
しています。
* * * * *
COP17最終日の、12月9日。
途上国の温暖化対策や被害に対応する、「グリーン気候基金」
の設置が合意されました。
先進国が、年間1000億ドル(およそ7兆7000億円)の規模で
拠出すると約束した、「環境対策資金」を元手にします。
議長国の南アフリカは、これをCOP17で最大の成果の1つと、
位置づけています。
また、議長国の南アフリカはこの日、「京都議定書の延長」や、
「新枠組み」についての、最終的な合意に向けた「議長提案」を
各国に示しました。
しかしながら、各国の意見がまとまらず、COP17は12月10日
へと延長することになりました。
* * * * *
12月10日。
この日の夕方になっても意見がまとまらず、合意文書を採択
するための「全体会合」が、いつ開かれるのか未定の状態で
あり、
各国の意見を聞くための、断続的な非公式会合にとどまって
いました。
たとえば「新枠組み」について、9日の非公式会合では、発効
時期を「2020年以降」と明記していました。
しかし、EUや島しょ国が、「2020年以降の発効では遅すぎる」
と反発しました。
10日未明には発効時期を排除し、「可能なかぎり早く、遅くとも
2015年までに交渉を終える」として、採択時期の明記にとどめ
ました。
ところが今度は、アメリカや中国、インドが発効時期の排除に
反発したのです。
なぜなら合意案では、京都議定書の延長期間が2013年〜
2017年とされており、「早ければ2018年の新枠組み開始」とも
読めるからです。そのため、「2020年以降」という記述の復活を
つよく求めました。
議長国の南アフリカは、閣僚級の非公式会合を断続的におこ
ない、各国間の調整を続けていましたが、
しかし、それを急きょ切り上げて、この日の午後7時過ぎに、
公式の「全体会合」を開きました。
なんら妥協点を見いだせぬままに、全体会合を開くという異例
の事態となり、「交渉決裂」という最悪の事態になる可能性も、
ささやかれました。
* * * * *
12月11日。
この日の未明になってようやく、「京都議定書の延長」と、すべ
ての国が参加する法的義務のある「新枠組み」に向けた行程表
をふくむ、
「ダーバン合意」(あるいは「ダーバン・プラットフォーム」、
「ダーバン枠組み」)が採択されて、
COP17は閉幕しました。
とにかく、最悪の結果である「交渉決裂」だけは回避できたのが、
何よりでした。
「ダーバン合意」の内容や、それに対する私の感想については、
次回でお話したいと思います。
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