COP15 その4 2009年12月27日 寺岡克哉
ここでは、COP15で留意が決定された、
「コペンハーゲン協定(Copenhagen Accord)」について、
もう少し詳しく、見てみたいと思います
* * * * *
まず、各種の報道をまとめてみると、
コペンハーゲン協定の要旨は、だいたい次のようになっていました。
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コペンハーゲン協定 要旨
1.(産業革命前からの)気温上昇が、2℃を超えるべきでないという科学
的な見地を認識。
世界の温室効果ガス排出量を、大幅に削減する必要があることに
合意。
2.先進国は、発展途上国が温暖化の影響に適応するため、十分かつ
継続的な資金を提供するべきと合意。
3.先進国は、2020年までの排出削減目標を定め、2010年1月31日
までに付属書に掲載。
京都議定書の加盟国は、それまでの目標をさらに強化。
先進国の、削減や資金支援の取りくみ状況を、報告・検証。
4.途上国は、排出量増加を緩和する計画を実施。
計画の内容は、2010年1月31日までに付属書に掲載。
計画の取りくみ状況は、2年に1度、国連を通じて報告。
実施された計画は、各国内で監査・査定。
ただし先進国の支援をうけて実施した計画は、国際的な監査・査定。
5.森林の破壊や劣化による、温室効果ガスの排出を減らすことの重要性
を認識。
6.先進国が共同で2010年〜2012年の間、途上国に資金を提供する
と約束。
新規かつ追加的な資金の額は、300億ドル(2兆7000億円)。
資金は、排出削減や適応、森林保護などに充(あ)て、最貧国や島国、
アフリカ諸国が優先。
7.先進国は2020年までに、途上国のニーズに応えるため、共同で毎年
1000億ドル(9兆円)の資金を可能にすることを目標。
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つぎに、
上の「コペンハーゲン協定」における、問題点について、挙げてみたい
と思います。
まず、この協定には「法的な拘束力」がありません。
また、協定への署名は任意で、全世界の参加も保証していません。
京都議定書は2012年に期限切れになりますが、その後の、「拘束力
のある枠組み」については、決定を先送りしました。
京都議定書に代わる「新議定書」を作るのか、京都議定書に加えて
新たな協定を結ぶかのという問題も、先送りしました。
2050年までの削減数値目標について、合意を先送りしました。
(2050年までに世界全体で1990年比50%削減とか、2050年までに
先進国全体で1990年比80%削減というような、「数値目標」が盛り込ま
れていません。)
先進国における2020年までの削減目標(中期目標)で、基準とする年
(1990年比とか2005年比とか)について、合意していません。
先進国は、2010年〜2012年までに300億ドルを拠出することになっ
ていますが、各国の拠出額や受取額についての合意を見送りました。
航空や海運による排出量を削減目標に含むか、農林業を含むことを
義務化するかどうかについて、合意していません。
二酸化炭素の回収・地中貯留、および森林の保全を、CDM(クリーン
開発メカニズム)の対象に含めるかどうかについて、合意していません。
森林保全を目的とする基金創設について、合意していません。
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これらを見るかぎり、
現段階では「具体的な内容」が、ほとんど決まっていないこと
が分かります。
私が今まで、「COP15」の流れをみてきて思うことですが・・・
まず、
世界の温室効果ガス削減において、もっとも重要なのは、
アメリカと中国が、どうするかと言うことでしょう。
一刻もはやく、
アメリカと中国に、法的な拘束力のある削減義務を負わせる
こと。
それが、
その他すべての国々が、いちばん求めており、また願っていること
だと思います。
そのために、日本も、
1990年比25%削減という、思い切った削減目標を提示したので
しょう。
この日本の頑張りが、
アメリカは2020年までに、2005年比17%(1990年比3〜4%)
削減。
中国は2020年までに、対策を取らなかった場合にくらべて40〜
45%削減。
という目標の発表を、促(うなが)した可能性はあると思います。
しかしながら・・・
アメリカや中国にたいする、さらなる削減目標の上積み。
アメリカや中国にたいする、温室効果ガス削減の義務化(法的拘束)。
これらには、つなげることが出来ませんでした。
このたびのCOP15で、
「人類全体の運命が、アメリカと中国の動向にかかっていることが
決定的になった!」ように思えます。
とくに、中国の目標が達成されたとしても、このまま経済成長が続けば
2020年には、二酸化炭素の排出量が2倍になります。
つまり、(たとえ不可能でも)アメリカが2020年までに、排出量がゼロ
にできたとしても、中国の排出量増加によって、それが帳消しになって
しまうほどです。
一方アメリカは、これから排出量が減ることはあっても、増えることは
ないでしょう。
この意味では、
人類全体の運命を、いちばん握っているのは、中国だと言えます。
今後、世界全体は、
中国の排出量増加に、どう対応するかについて、ものすごく悩むことに
なるでしょう。
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ところで日本は・・・
コペンハーゲン協定の付属書に、「1990年比25%削減」を
明記するのでしょうか?
すでに経済界からは、25%削減にたいして、見直しを求める声が
出ているようです。
また現時点では、コペンハーゲン協定に「法的な拘束力」がありま
せんが、
しかし後々は、「25%削減」が法的拘束力を持つようになって行く
可能性もあります。
これに関して、12月22日の閣議後に、小沢鋭仁 環境相は、
「日本の立場は今まで通り」
「条件付きで、”25%削減”を書き込むことを目指したい」
と言いました。
また、
12月24日に開かれた、「地球温暖化問題に関する閣僚委員会」
では、
1990年比25%削減の目標を、これからも維持していくと確認
しました。
鳩山首相は、各主要排出国が意欲的な削減目標を揚げることを
条件に、
「25%削減」を来月末までに、気候変動枠組み条約の事務局に
提出する意向を示しています。
これまで話してきたような、COP15の結末では、
さすがに日本政府も、25%削減にたいして、少しは怯(ひる)む
かも知れないと思ったのですが、
なんとも力強い対応です!
それをバネにして、
日本における低炭素技術の開発や、低炭素社会を構築していく、
「推進力」となってほしいものです。
けっして十分とは言えませんが、とりあえず日本としては、
1人あたり年間7トン以下の、二酸化炭素排出量で暮らせるような
社会を、
早急(10年以内)に、構築して行かなければなりません。
そしてそれを、可能なかぎり早く、
とくに中国などの新興国に、普及させなければなりません。
もしも、それが出来なければ、
世界中が、気候変動による「大災害」に襲われるでしょう!
地球温暖化の問題は、COP15で終わった訳ではありません。
これからますます、重要で深刻な問題となって行くのです!
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