新エネルギーについて    2006年5月28日 寺岡克哉


 今のまま二酸化炭素が増えつづけると、あと200年から300年ぐらいで、地球
の生物の90パーセント以上が死滅するような、「壊滅的な被害」が出てしまいそう
です。(その詳しい話については、エッセイ217、 218、 220を参照してくださ
い。)

 そして、エッセイ221エッセイ222で考察しましたように、このような事態を避け
るためには、二酸化炭素の出ない「新エネルギー」を開発することが、絶対に必要
です。
 (もちろん、「省エネ」や「植林」もたいへん重要です。しかしそれらだけで、どうにも
ならないことは、エッセイ221とエッセイ222を読んでもらえば、納得して頂けると
思います。)

 それで今回は、とにかく「二酸化炭素を出さないエネルギー」にはどんなものが
あるのか、大ざっぱに見てみたいと思いました。


                * * * * *


 さっそくですが、二酸化炭素を出さないエネルギーには、次のようなものがあり
ます。

(1)原子力
 これは既に実用化されているので、もはや「新エネルギー」と呼ぶには、ふさわしく
ないかも知れません。しかし原子力は、二酸化炭素を出さないエネルギーの代表
格です。

 もしも原子力にまったく問題がなかったら、二酸化炭素の問題は、すぐに解決して
しまうでしょう。
 とくに現在研究を進めている、燃料として使えない「ウラン238」という物質を、
燃料として使える「プロトニウム239」という物質に変化させる方法(高速増殖炉)
が完成したとします。
 そうすると人類は、今後14000年はエネルギーに困ることがありません。つまり、
エネルギー問題と二酸化炭素問題から解放されるのです。それで日本政府は、
たくさんのお金を「原子力開発」につぎ込んでいるのでしょう。

 ところが原子力は、時として「大事故」を起こすことがあり、どうしても安全性の
問題がぬぐいきれません。
 また原子力には、「放射性廃棄物」の問題があります。その中には、放射能を
100000年以上も持ちつづけるものがあり、それをどのように保管して置くかとい
う、とても大変な問題があります。
 しかも原子力発電所の設備には、「耐用年数」というものがあります。だから近い
将来、耐用年数を過ぎた「原子炉自体」が、次々と放射性廃棄物になって行くでしょ
う。

 だから出来れば、原子力は極力使わないに越したことはありません!


(2)水力
 これは、昔から使われているエネルギーなので、「新エネルギー」ではありません。
しかし「水力」も、二酸化炭素を出さないエネルギーの代表格です。

 たしかに水力は、二酸化炭素を出さず、放射能もありません。それだけを見れば、
理想のエネルギーのように思えます。
 しかしながら水力は、ダムの建設による森林の水没などで、「環境破壊」をひき
起こしています。つまり水力は、環境にあまり優しくないのです。
 そして、炭素を固定している森林の面積が減れば、それだけ二酸化炭素が増加し
てしまいます。

 だから水力も、将来的には、出来るだけ使わないようにする方が良いで
しょう。



(3)太陽エネルギー
 これには、「太陽熱」を利用するものと、「太陽光」を利用するもの(太陽電池)が
あります。
 太陽熱を利用するもので小型のものは、家庭用の温水器として普及しています。

 ところで、太陽エネルギーを大型発電に利用する場合、「太陽熱」と「太陽光」
のコストは同じぐらいか、むしろ「太陽熱」の方が優れているという試算もあるそう
です。しかし将来への期待は、「太陽光」の方へ向けられているようです。

 そして私も、「太陽光発電」に、いちばん期待をよせています!
 その理由や、太陽光発電の色々なことについては、後の機会にくわしくお話した
いと思います。


(4)風力
 これは、大きな「風車」を回して発電をするものです。その中でも特に大きなもの
は、プロペラの回る直系が100メートル程度のものまであります。

 風力発電は、ヨーロッパ、とくにドイツが力を入れて普及させようとしています。
しかし日本では、あまり普及が進んでいません。それは、北海道や青森や秋田県
などの、ごく一部の地域しか、風力発電に適した風の吹くところが無いからみたい
です。


(5)バイオマス
 これは、木材の廃棄物や、農業廃棄物、あるいは食べ残しや、紙など、「もともと
生物だった」
ゴミを燃やして、エネルギーを得るものです。

 これは物を燃やすので、とうぜん二酸化炭素を出します。しかしそれは、もともと
植物によって固定された炭素を燃やしているので、地球全体としては、二酸化炭素
の収支がプラスマイナスゼロになります。

 つまり、たとえば「木」を燃やした場合、もともと二酸化炭素を吸収して育ったもの
を燃やしただけで、その分の二酸化炭素が大気中にもどっただけです。だから全体
として見れば、二酸化炭素は増えも減りもしません。それでバイオマスは、「二酸化
炭素の出さないエネルギー」とされているのです。

 またバイオマスには、それを直接に燃やすのではなく、「生ゴミ」などを発酵させ
てメタンガスを取り出す方法もあります。

 あと、ブラジルではサトウキビからアルコールを作って燃料にしたり、日本でも
菜種(なたね)を栽培して、菜種油を燃料にしようという話も聞かれます。
 これらも、全体として見れば二酸化炭素を出していることにならず、バイオマス
の仲間に入ります。

 私は、このバイオマスにも、けっこう期待をよせています。


(6)その他としては、
 地熱(火山や、温泉の熱を利用するもの)
 波力(波の力を利用するもの)
 潮力(潮の満ち引きを利用するもの)
 海洋温度差(海の表面海水と、深層海水の温度差を利用するもの)
などがあります。


                 * * * * *


 私は、(1)と(2)を除いた、(3)から(6)を「新エネルギー」であると考えてい
ます。

 これら、「新エネルギー」の開発が出来なければ・・・
 そして二酸化炭素の問題が、どんどん深刻になって行ったら・・・

 もしもそうなったら、「原子力」に、とても大きな動機づけを与えてしまうでしょう。
そうなる前に、ぜひとも科学者や技術者の方々には、「新エネルギーの開発に
力を注いでもらいたい!」
と願ってやみません。



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