尖閣ビデオ流出事件
2010年11月14日 寺岡克哉
11月4日の午後9時ころ、
政府が、「国家機密」(法律に基づき政府が公表しない事実)として
いる、
尖閣諸島沖で発生した中国漁船衝突事件の「現場映像」が、
インターネット動画投稿サイトの、「ユーチューブ」に流出しました!
私はエッセイ450で、中国漁船の衝突事件をレポートしていたことも
あり、
これから日中関係がどうなって行くのか、すごく気になっていたので、
最新の情報に、よく注意していました。
そんなわけで私も、
テレビが大々的に報道する前の、11月5日の未明に、ユーチューブ
の流出映像を見ることが出来たのですが、
日本の巡視船の対応に、間違ったところや、過失などを見い出すこと
ができず、
とても正当な行動のように思いました。
そのことが分かったので、
今まで何となくイライラしていた心が、流出映像を見ることによって、
反って落ち着くことができたと言うのが、私の個人的な感想です。
しかしながら、
中国に対する憤りを、さらに募らせた人々も多かったのでしょう。
11月6日には、東京都内でおよそ4500人が参加した、
中国政府に対する「抗議デモ」が行われています。
* * * * *
ところで・・・
このたびの映像流出について、「ものすごく不可解なこと」があり
ます。
それは、「流出映像そのもの」が、テレビで大々的に報道された
ことです。
私は最初、ユーチューブで流出映像を見たとき、
「この、いま見ている”流出映像そのもの”は、テレビで絶対に
報道されないだろう!」
と、ほぼ確信に至るほど、つよく思っていました。
なぜなら、テレビ放送は「許認可事業」だからです。
つまりテレビ放送というのは、政府が認めた者(放送免許が与えら
れた者)だけしか、
行うことが出来ないからです。
逆に言えば、
政府(総務省)は、各テレビ局に対して、
「放送免許を取り上げることにより、放送事業を禁止させて、
廃業に追い込むことができる!」
という、「ものすごく強い権限」をもっているわけです。
この理由から、
政府が非公開としている(つまり国家機密としている)映像が、
テレビで報道されることは、まず絶対に、あり得ないと思ったの
でした。
ところが・・・ 11月5日が明けてからの数日間、
ユーチューブへの「流出映像そのもの」が、テレビで大々的に
報道されてしまったのです!
これは、
政府が非公開、つまり「国家機密」だとしながらも、テレビ報道
による漏洩(ろうえい)を、黙認していたことに他なりません!
(もしも政府が、本気になって国家機密の漏洩を守ろうとするなら
ば、少なくてもテレビ報道だけは制止できたはずです。)
そしてまた、
テレビによる大々的な報道が無ければ、ここまでの大騒ぎには
ならなかったはずです。
* * * * *
いま現在においては、
流出した映像が、はたして国家機密に当たるのかどうかという議論
も、巻き起こっています。
しかし、仙谷由人 官房長官は、
今回のビデオ流出をうけて、「機密漏洩にたいする厳罰化」を検討
する考えを、11月8日の衆議院予算委員会で示しています。
そして海上保安庁も、
ユーチューブを運営しているグーグルにたいして、これまで投稿された
「コピー映像」をすべて削除するように要請しています。
ところが一方、
テレビ報道による「大々的な機密漏洩」は、まったく黙認していた
わけです。
はたして流出した映像は、ほんとうに「国家機密」なのでしょうか?
もしも、流出した映像が「ほんとうに国家機密」ならば、
それを報道した各テレビ局も、国家機密を大々的に漏洩した責任を、
免(まぬが)れないのではないでしょうか?
その逆に、もしも流出した映像が「国家機密でない」ならば、
ユーチューブに映像を投稿した海上保安官にたいして、「国家公務員法
の守秘義務違反」は、
適用されないのではないでしょうか?
私は、その筋(放送法や国家公務員法、国民の知る権利の問題など)
の専門家でないので、よく分からないのですが、
それにしても、なんとも不可解な話です。
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