弱い台風でも要注意!
                          2010年9月19日 寺岡克哉


 気象庁が、9月9日に発表したところによると

 今年8月の、日本の周辺海域における「海面水温」は、

 平年よりも1.2℃高く、

 人工衛星による観測を開始した1985年以降で、

 最も高くなりました!




 とくに日本海や、オホーツク海、

 そして、北海道から東北にかけての太平洋側の海域では、

 海面水温が、平年よりも2℃以上高くなったのです。


             * * * * *


 このように、海水の温度が高くなると、

 いまの時期では、やはり「台風」のことが心配になってきます。



 というのは、

 海水温が高くなると、海水の蒸発が活発になり、

 大気中の「水蒸気」の量が、多くなるからです。



 さらに、そうすると、

 水蒸気は、「台風のエネルギー源」になっているため、

 台風が巨大化し、強力になるからです。



 そのメカニズムについては、エッセイ393で簡単にまとめて
ありますが、

 それに少し説明を補足して、再掲しますと、以下のようになり
ます。

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1.台風の中心部に、反時計回りに集まってきた「海上の水蒸気」は、
 上昇気流によって上空に運ばれ、凝結して雲や雨などの「水滴」に
 なります。

(一般に北半球において、大気下層の地表付近では、低気圧の中心に
向かって、反時計回りに風がふきこんで来ます。その反対に南半球
では、時計回りに風がふきこんで来ます。
 低気圧の中心にふきこんだ風は、もはや上方にしか行くところが無く
なり、上昇気流となって、大気下層の空気も水蒸気も、上空に運ばれ
ます。)


2.上のように、「水蒸気」が凝結して「水」にもどるとき、「熱エネルギー
  が放出」されます。

(これは、「水」が蒸発して「水蒸気」になるとき、「熱エネルギーが吸収」
されますが、そのときの熱が、凝結するときに放出されるのです。)


3.放出された熱エネルギーによって、付近の空気が暖められると、
  その空気は軽くなって「浮力」をもち、さらに上昇気流が活発になり
  ます。

(暖められた空気が、軽くなって浮力をもつのは、「熱気球」とおなじ
原理です。)


4.活発な上昇気流によって、空気が吸い上げられると、台風中心部
  の下層(つまり海上)の空気は薄くなり、気圧が下がります。


5.台風の中心気圧が低くなることで、さらに周りから多くの水蒸気が
  集まってきます。


6.以上の1〜5の過程をくり返すことにより、台風が巨大化し、強力に
  なって行きます。

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 以上が、

 水蒸気によって、台風にエネルギーが与えられるメカニズムです。

 ちなみに、海上にあった台風が、上陸すると勢力が衰えていく
のは、

 エネルギー源になっている水蒸気の、補給が断たれるからです。



 とにかく、最初で話したように、

 今年は、海水の温度がとても高いので、まず第一に、巨大で
強力な台風の襲来に、

 ものすごく警戒しなければなりません!



              * * * * *


 しかながら・・・

 今年の台風をみていると、強力で巨大なものだけでなく、

 比較的に弱い台風であっても「要注意」です!

 というのは、

 弱い台風でも、「はげしい豪雨」を降らせているからです。



 たとえば9月8日に、

 福井県の敦賀市付近に上陸した「台風9号」は、

 上陸時の中心気圧が1002ヘクトパスカル、最大風速は18メー
トルでした。

 これは普通なら、何てことのない弱い台風です。

 しかしながら、

 静岡県の604ヶ所で、「豪雨による被害」が発生したのです!



 たしかに、

 中心気圧が1000ヘクトパスカル台と高く、風も弱かったので、

 高潮や突風などによる被害は、ありませんでした。

 しかし「はげしい豪雨」は、降ったわけです。



 恐らく、その理由は、

 海水温の上昇によって、大気中の「水蒸気の量」が、増加して
いるからでしょう。

 つまり、空気に含まれる水の量が多くなれば、単純にそれだけ、
雨となって降る水の量も多くなるはずです。

 それで、たとえ弱い台風であっても、「はげしい豪雨」を降らせた
のだと思います。



 だから、

 海水の温度が高いときは、巨大で強い台風だけでなく、

 「弱い台風にも、注意をしなければならない!」と、

 私は思うようになったのでした。


           * * * * *


 以上、今年のように海水の温度が高くなると、

 たとえ弱い台風であっても、「はげしい豪雨」による被害が、

 発生するようになります。



 これは私にとって、

 今まで気がつかなかった、まったくの「盲点」でした。

 地球温暖化による本当の深刻さを、

 とてもリアルに、ひしひしと感じるようになった次第です。



 その上さらに、もしも強くて大型の台風が発生して、

 それが日本に接近したり、上陸して来たらと思うと、

 なおのこと「ゾッ」としてしまいます。



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