今年の台風は要注意!   
                           2009年8月30日 寺岡克哉



 最新の情報ですが、

 「アメリカ海洋大気局 気候データセンター」の分析によると、

 今年7月の、世界の平均海水温が、16.99℃となり、

 過去およそ130年間で、「最高の値」になりました。



 16.99℃という海水温は、

 これまで最高だった1998年の記録を、0.01℃上回り、

 20世紀全体の平均よりも、0.59℃上回っています。



 このように、海水温が上昇した原因は、

 地球温暖化の影響に加えて、エルニーニョ現象が重なったためと、

 見られています。



 エルニーニョ現象だけでなく、「地球温暖化も影響している」
見られているのは、

 南米ペルーや、エクアドル沖だけが、海水温が上がっているのでは
なく(エルニーニョの場合は、この海域のみ海水温が高くなる)、

 北半球のほとんどの海域で、通常よりも海水温が高くなっている
からです。

 (とくに北極周辺において、海水温の上昇がいちばん大きく、20世紀
の平均にくらべて5℃以上も高くなりました。)



 このように、世界中の海水温が高くなると、

 エッセイ391でお話しましたように、「はげしい豪雨」が降るように
なるのは、もちろんですが、

 しかし、それだけでなく、

 台風が巨大化して強力になることも、ものすごく心配になります。


              * * * * *


 ところで、

 海水の温度が高くなると、台風が巨大化して強力になるのは、

 「水蒸気」が、台風のエネルギー源になっているからです。



 だから、

 海水温が上がって、海水の蒸発が活発になり、

 空気中の「水蒸気」が多くなると、

 それだけ、たくさんのエネルギーが台風に与えられることになります。

 このため、台風が巨大化して強力になるわけです。



 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ※ すこし詳しい話・・・ 水蒸気が、台風にエネルギーを与えるのは、以下
   の過程によります。

1.台風の中心部に、反時計回りに集まってきた「海上の水蒸気」は、上昇
  気流によって上空に運ばれ、凝結して「雲や雨(つまり水滴)」になります。

2.このような、「水蒸気」が「水」にもどる時には、「熱エネルギーが放出」
  されます。
  (これは、「水」が蒸発して「水蒸気」になるとき、「熱エネルギーが吸収」
  されるのと、ちょうど反対の現象です。)

3.放出された熱エネルギーによって、付近の空気が暖められると、その
  空気は軽くなって「浮力」をもち、さらに上昇気流が活発になります。
  (暖められた空気が、軽くなって浮力をもつのは、「熱気球」とおなじ
  原理です。)

4.活発な上昇気流によって、空気が吸い上げられると、台風中心部の
  下層(つまり海上)の空気は薄くなり、気圧が下がります。

5.台風の中心気圧が低くなることで、さらに周りから多くの水蒸気が集まっ
  てきます。

6.以上の1〜5の過程をくり返すことにより、台風が巨大化し、強力になっ
  て行きます。

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 ちなみに、

 水蒸気が、台風のエネルギー源になっていることは、

 海から陸地に上がると、台風の勢力が衰えることから分かります。

 なので、中国大陸の内部まで進む台風は、ほとんどありません。



 また、

 たとえば台風が、フィリピンに上陸して、せっかく衰えたのに、

 フィリピンを通過して、暖かな「南シナ海」に出ると、ふたたび勢力が
回復することからも、

 台風のエネルギー源は、水蒸気であることが良く分かります。


              * * * * *


 とにかく、上で話したように、

 「水蒸気」が台風のエネルギー源になっているのは

 絶対に間違いありません。



 だから今年のように、

 海水温が「過去最高」になり、水蒸気の量がとても多くなれば、

 台風が巨大化して強力になるのも、絶対に間違いないのです!




 その証拠として、

 8月7日に、台湾に上陸した「台風8号」は、

 「50年ぶり」といわれる大被害をもたらしました。

 もちろん、死者もたくさん出しています。



 また、

 8月10日から11日にかけて、日本に接近した「台風9号」は、

 上陸したわけでもないのに、「はげしい豪雨」による被害を
もたらし、

 死者まで出しているのです。


              * * * * *


 以上から、

 今年の台風は「要注意」です!



 いつもの年よりも、台風情報によく注意し、「早めの避難」を心がけ
るべきです。

 台風が上陸しなくても、住んでる場所が「暴風圏」に入らなくても、
避難が必要な場合があるかも知れません。

 もしも「避難勧告」があった場合には、すぐに従うべきです。

 また、台風がそんなに接近していなくても、むやみに外出するのは、
避けた方が良い
でしょう。



 過去の台風経験を過信して、

 「これくらいなら、まだ大丈夫だ」と、判断してしまうことが、

 ものすごく危険だと、私は感じています。



 台風に限らず、「爆弾低気圧」などの、

 近年の異常気象による、海難事故や、山での遭難を見ていると、

 かなり経験を積んだ「熟練者」でも、被害に遭っています。



 今までの経験が、まったく役に立たない・・・

 予測のできない事態が、つぎつぎと起こってしまう・・・

 それが、「地球温暖化」による異常気象なのです!


 くれぐれも、過去の経験を過信することの無いように、願っており
ます。



      目次へ        トップページへ