グリーンランド氷河の大規模崩壊
2010年9月5日 寺岡克哉
アメリカにあるデラウェア大学の、
アンドレアス・ミュンホウ教授(海洋物理学者)が、8月6日に発表
したところによると、
グリーンランドの北部にある「ペテアマン氷河」が、大規模な崩壊
を起こし、
面積260平方キロ、厚さ200メートルに達する「氷の島」が、
氷河から分離して、海上を漂流しはじめました。
ペテアマン氷河は、北極点から1000キロの南にありますが、
全長70キロにも及ぶ、海に張りだした棚氷(たなごおり)のうち、
その、およそ4分の1が、このたびの崩壊によって失われました。
分離した「氷の島」は、
ニューヨークにあるマンハッタン島の、およそ4倍の大きさがあり
(日本の徳之島より少し大きく、西表島より少し小さい面積)、
それが解けた場合の水量は、アメリカ国内で使用される水道水の、
120日分に相当します。
こんなに大きな棚氷の崩壊は、48年ぶりの出来事で、北極圏で
最大規模のものです。
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(※参考)
2002年に、南極半島の「ラーセンB棚氷」が崩壊したときの面積
は、3250平方キロであり、
今回のペテアマン氷河における棚氷崩壊の、12.5倍もの面積が
ありました。
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このたび起こった、
ペテアマン氷河の大規模な崩壊にたいして、
専門家たちは、つぎのような見解を表明しています。
まず、今回の発表をした、デラウェア大学のミュンホウ教授は、
同氷河周辺の海水(の温度?)については、2003年以降の記録
しかないので、
このたびの崩壊が、地球温暖化の影響かどうかを判断するのは、
困難であるとの見解を示しています。
しかし、アラスカ大学フェアバンクス校の、レギーネ・ホック氏(氷河
地球物理学者)は、
(今回のような)、「とても巨大な氷塊の分離は、非常にめずらしい」。
(ほかの多くの地域でも、沿岸部の氷河の崩壊が加速しているため)、
「注視して原因を究明する必要がある」。
「何かが進行していることの兆候かもしれない。」
と、述べています。
そしてコロラド大学の、コンラッド・シュテフェン氏(氷河学者)も、
「これまでグリーンランドで氷河の融解がみられたのは、島の南側
だけだったが、今では北側でも氷河が解け始めている。」
「いま現在、変化が起きているという警告だ。」
と、いうような危惧を表明しています。
さらには、そのほか多くの科学者たちが、
今回ペテアマン氷河で起こった棚氷の崩壊は、その規模と位置
から判断して、
「気候変動の影響によるもの」だと考えています。
そしてさらには、前回のエッセイ445でお話した、
ロシア、パキスタン、中国などで起こった「異常気象」とも、
連動しているという指摘があります。
たとえば、国連の世界気象機関(WMO)による声明では、
パキスタンの豪雨、ロシアの熱波、中国の土石流、グリーンランド
の棚氷分離が、相次いで起こったことに対し、
これらの現象が、規模、期間、発生範囲いずれの面においても、
「前例のない連続的な現象」だとしており、
「自然発生的な異常気象の基準にあてはまらない」ことを
強調しています。
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前回のエッセイ445とも合わせて、私は思うのですが・・・
熱波、干ばつ、山火事、豪雨、洪水、土石流、そして氷河
の崩壊。
これらは確かに、
あるていどの頻度で、「いつも起こっている現象」です。
しかしながら、
48年ぶりに起こった、北極圏で最大規模の氷河崩壊。
過去80年間で最悪だった、パキスタンの洪水。
そして1000年に1度とも言われる、ロシアの異常気象。
こんなに稀(まれ)で、めったに起こらない異常事態が、
なんの関係性もなく独立して、たまたま偶然に、おなじ年に
起こったとは、
とうてい考えられません!
たとえば、もしも仮に、
それらの稀な異常事態が、まったく偶然に、おなじ年に
起こったとすると、
その確率は、1÷(48×80×1000)= 384万分の1。
つまり、0.00003%の確率しかありません。
このように考えると、
今年の夏に、すごく稀な異常事態が、同時多発的に起こった
のには、
やはり、何らかの「共通の要因」が存在するはずだと思うのが、
もっとも合理的で自然でしょう。
そしてさらには、おなじく今年の夏に起こった、
日本の猛暑、中国の洪水や土石流、インド、ヨーロッパ、北朝鮮
の豪雨をも含めた、
それら異常事態のすべてに共通する要因を、いちばん素直に
一般的に考えれば、
やはり「地球温暖化」が、何らかの形で影響しているはずだ
と、思わざるを得ません!
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