世界のCO2排出が減少
2010年8月22日 寺岡克哉
世界の二酸化炭素排出量が、過去10年間で、初めて「減少」
しました!
ドイツ環境省の諮問機関である、「ドイツ再生可能エネルギー
研究所」が、8月13日に発表したレポートによると、
2009年の世界における二酸化炭素排出量は、311億トンで
あり、
2008年にくらべて、1.3%減少しました。
エッセイ398で書きましたが、
近年における二酸化炭素排出量の増加は、
「IPCCが想定していた最悪のケースを上回っている」という
報告もされている中、
上の発表は、とても良いニュースだと言えます。
* * * * *
しかしながら・・・
世界における、二酸化炭素の排出量が減ったと言っても、
「大気中の二酸化炭素濃度」が、減少したわけではあり
ません。
大気中の二酸化炭素は、そう簡単に減らすことが出来ないの
です。
たとえば、もしも今すぐに、
世界が排出する二酸化炭素量を、「ゼロ」にできたとしても、
大気中の二酸化炭素濃度が、産業革命前の値までもどるのに、
数万年の時間が必要だと言われています。
それほどまでに、
「大気中の二酸化炭素濃度」は、なかなか減らないのです。
よく、
地球温暖化による、深刻な被害を回避するためには、
「大気中の二酸化炭素濃度を、450ppmで安定化させなければ
ならない」と言われますが、
「大気中の二酸化炭素濃度を、産業革命前の280ppmに戻さな
ければならない」とは、絶対に言われません。
それは、人類のだす二酸化炭素の削減により、
大気中の二酸化炭素濃度を、上げないようにする(安定化する)
ことは出来ても、
いちど上がってしまった二酸化炭素濃度を、下げて元にもどすこと
は、出来ないからです。
また、とうぜん、
2009年の二酸化炭素排出量が、2008年より1.3%減少した
と言っても、
311億トンもの二酸化炭素を排出していたわけで、
大気中の二酸化炭素濃度は、依然として増えつづけています。
* * * * *
ところで、世界の二酸化炭素排出量が、過去10年間で初めて
減ったのは、
世界的な「経済危機」によって、日本、アメリカ、ヨーロッパなどの
景気が低迷したからです。
なので、
世界の景気が回復すれば、二酸化炭素の排出量が、ふたたび
「増加」に転じてしまう可能性も大きいでしょう。
また、
世界の二酸化炭素排出量は、2008年にくらべて1.3%減り
ましたが、
1990年にくらべれば、37%も増加しています。
(地球温暖化による深刻な被害を回避するためには、2050年
までに世界の温室効果ガス排出量を、1990年比で50%削減する
必要があります。)
これらのことや、上で話した「大気中の二酸化炭素濃度」のことを
考えると、
まったく予断を許さない状況であることは、依然として変わり
ません。
* * * * *
しかも中国は、
世界的な経済危機の中にあっても、成長をつづけており、二酸化
炭素の排出量が増えています。
2008年の排出量は68億1000万トンでしたが、2009年では
74億3000万トンになり、
9.1%も増加しているのです。
一方、それに比べてアメリカは、
2008年の63億7000万トンから、2009年の59億5000万
トンへと、
二酸化炭素の排出量が、6.6%減少しました。
2009年の時点において、
中国の排出量は、アメリカよりも14億8000万トン多く、
(2007年以降から)世界第1位になっています。
たしかに中国は、
1人あたりの二酸化炭素排出量でみれば、先進諸国よりも低い
レベルです。
しかしながら中国の排出量が、こんなペースでどんどん増加して
行ったら、
やはり、
地球温暖化による気候変動で、世界全体が大変なことになって
しまうでしょう。
エッセイ419で考察しましたが、
もしも中国が、いまの日本と、おなじレベルの「省エネ技術」を
導入すれば、
排出量の増加を「ゼロ」に抑えたまま、(つまり現在の排出量
のまま)、
なお5倍(500%)もの経済成長が可能になります。
中国にたいする日本の技術協力を、できるかぎり強く推しすすめ、
中国における「省エネ技術」の大々的な普及を、
可能なかぎり速やかに、実現しなければなりません。
* * * * *
しかし、とにかく世界の二酸化炭素排出量は、
「まったく手がつけられないほど、絶望的に増えつづける」
という類(たぐい)のものでは、ありませんでした。
経済の低迷が原因とはいえ、
「世界の二酸化炭素排出量を、減少させることが実際に
できる!」
というのが、「事実によって示された」ことで、ものすごく希望が
湧いてきました。
今回のニュースは、
「世界全体が本気になれば、温室効果ガスの排出量を削減
することは、けっして不可能ではないのだ!」
ということに、とても大きな手ごたえを、感じさせてくれるもので
した。
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