頭が痛い中国       2010年2月28日 寺岡克哉



 世界全体における、温室効果ガスの削減にたいして、

 中国は、いちばん頭が痛い存在です!




 なぜなら、このままだと2015年〜2023年頃までに、

 中国以外の、すべての国々の二酸化炭素排出を、たとえゼロに
することが出来たとしても、

 世界全体の二酸化炭素排出量を、1990年に比べて半分に減らす
ことが、

 不可能になってしまうからです。



 つまり、

 中国という、たった1つの国だけが排出する二酸化炭素で、

 1990年における世界全体の排出量の、半分を超えてしまう
わけです。



 ところで・・・ 科学的な知見によれば、

 地球温暖化による、「ものすごく大きな被害」を避けるためには、

 2050年までに、世界全体の温室効果ガス排出量を、

 1990年に比べて、半分に減らさなければならないと、言われて
います。



 しかしながら、

 中国の二酸化炭素排出が、そんなすごいペースで増えて行ったら、

 世界全体の温室効果ガス排出量を、1990年に比べて半分に
減らすことが、

 ますます困難になってしまうでしょう。



 私は最近、それに気がついて、愕然としてしまいました。

 なので今回は、このことについて、お話したいと思ったのです。


             * * * * *


 まず、私が知っている最新のデータでは、

 2007年における、中国の二酸化炭素排出量は60億トンで、 

 アメリカの58億トンを抜いて、世界第1位になりました。



 そして一方、

 1990年における、世界全体の二酸化炭素排出量は、210億トン
となっています。

 そうすると、

 その半分は105億トンであり、105÷60=1.75なので、

 将来、中国の二酸化炭素排出量が、2007年の1.75倍
超えると、

 その他すべての国々が、たとえ二酸化炭素の排出をゼロにする
ことが出来たとしても、

 世界全体の二酸化炭素排出量を、1990年比で半分に減らす
ことが、

 不可能になってしまいます。



 ところで・・・

 中国は、これから2020年ころまで、年率8%もの勢いで、GDPが
増加していくと予測されています。

 つまり1年間で、中国の経済規模が、1.08倍になるわけです。

 なので、

 それが7年間つづけば、1.08を7乗して(7回かけて)、1.71倍に
なり、

 8年間つづけば、1.08を8乗して、中国の経済規模は1.85倍に
なると予測されます。



 だから、このままだと2007年から数えて、7年〜8年の間。

 つまり2014年〜2015年の間に、中国の経済規模が1.75倍を
超えてしまいます。

 そして、

 経済の規模と、二酸化炭素の排出量が、比例すると考えれば、

 2015年までに中国の二酸化炭素排出は、1990年における
世界全体の排出量の、半分を超えてしまうわけです。



 しかしながら中国は、2020年までに温室効果ガスの排出を、

 2005年に比べて、単位GDPあたり、40〜45%削減するという、

 目標を表明しています。



 ここで、上のなかの「いちばん希望的な値」について、考えてみましょう。

 つまり2005年〜2020年の15年間で、単位GDPあたり、最大45%
の削減が達成されるとします。

 そうすると、

 (1−0.45)の15乗根(15回かけると0.55になる数)は、およそ
0.96なので、

 単位GDPあたり、年率4%の削減になります。



 つまり1年間に、中国のGDPが8%増加しても、単位GDPあたりの
二酸化炭素排出が4%減少するので、

 1.08×0.96= 1.037倍の二酸化炭素増加に、抑えられるわけ
です。

 しかしそれでも、

 1.037の16乗は、1.79なので(1.75倍を超えてしまうので)、

 2007年から数えて16年目。つまり2023年には、中国の二酸化炭素
排出が、

 1990年における、世界全体の二酸化炭素排出量の、半分を超えて
しまいます。



 私は、以上のような考察から、

 2015年〜2023年の間に、中国の二酸化炭素排出量が、

 1990年における世界全体の二酸化炭素排出の、半分を超えて
しまうと結論したのです。


              * * * * *


 この、

 ものすごく頭が痛い問題にたいして、一体どうすれば良いの
でしょう?



 私は、我が国にできる国際貢献として、

 日本の低炭素技術を、中国にどんどん導入させれば、

 良いのではないかと考えています。



 というのは、たとえば2009年におけるGDPは、

 中国が、およそ459兆5000億円で、

 日本は、およそ476兆9000億円です。

 かろうじて日本の方が上ですが、「ほとんど同じ」だと言えるでしょう。



 しかし一方、

 2007年(私の知る最新データ)における二酸化炭素排出量は、

 中国が60億トンで、

 日本は12億トンです。

 このように、GDPがほとんど同じであるのに、

 中国は、日本の5倍もの二酸化炭素を出しているのです。



 以上から分かるように、

 たとえば電力や鉄鋼など、その他さまざまな分野における、日本の
低炭素技術を、どんどん中国に導入させれば・・・

 つまり、単位GDPあたりの二酸化炭素排出量を、日本とおなじレベル
まで削減させて行けば、

 中国は、二酸化炭素の排出をまったく増やさずに、5倍の経済成長を
遂げることができます。



 そうすれば、

 たとえ中国が、毎年8%の経済成長をしても、21年間は二酸化炭素
の排出を増やさずに済みます。(1.08の21乗は5.03)

 つまり2007年から数えると、2028年までは、中国の排出増加を
「ゼロ」に抑えておくことが出来る
のです。



 そして日本は、その時間を稼いでいる間に、

 さらなる低炭素技術を開発し、低炭素社会を構築していくのです。

 将来的には、その新しく開発された技術を、中国に導入させて
行けば良いでしょう。

 このようにすれば、

 中国の排出増加をゼロに抑えるだけでなく、排出量そのものを
「減少」に転じさせることが、できるかも知れません。


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※注
 ここで話したように、日本が「技術的な優位性」を保ちつづけて
行くためにも、「25%削減」という自己鍛錬は必要不可欠です。
 もしも自己鍛錬を怠ったら、ブッシュ政権時代のアメリカのように、
低炭素技術において日本は落ちこぼれてしまうでしょう。
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 このままだと・・・

 絶対に起こってしまう、中国の破滅的な二酸化炭素増加!


 それに対して、

 日本が何とかできるのは、以上のようなことではないでしょうか。



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