終戦記念日に思うこと
                            2010年8月15日 寺岡克哉



 2010年8月15日・・・

 今日で、日本が終戦を迎えてから65年になりました。



 毎年恒例のことですが、この時期になると、

 新聞では、太平洋戦争の特集記事が組まれ、

 テレビでは、戦争特集の番組が放送されます。



 そのためかも知れませんが、

 私も、この時期になると、何となく考えてしまうことがあります。

 今回は、そのことについて、お話したいと思います。


           * * * * *


 なぜ日本は、あのような無謀な戦争を、回避することが出来なかっ
たのか・・・


 まず第一に、私が考えてしまうのは、このことです。



 日本が、太平洋戦争に突入してしまったのには、

 欧米列強によるアジアの植民地支配をふくめた、国際的な政治経済
の問題や、

 日本軍部の台頭、財閥の存在、日本社会の行きづまり、ファシズム的
な社会風潮の蔓延など、

 いろいろな原因が、とても複雑に絡み合っているのだと思います。



 しかし、いちばん本質的な原因は、

 「戦争の悲惨さを、前もって、本当には理解されなかった!」

 ということに、尽きるのではないでしょうか。



 もしも、

 東京大空襲や、沖縄戦、広島や長崎の原爆投下など、その他
さまざまな戦争による悲惨さを、

 ほとんどの国民が、前もって本当に理解していたなら、

 いくら日本の軍部が台頭していようとも、

 決して、あのような戦争を始めることは、出来なかったと思います。



 おそらく、そのような反省からなのでしょう。

 二度とあやまちを繰りかえさないために、毎年々々、この時期に
なると、

 いろいろな行事をやったり、戦争特集の記事や番組を報道して、

 「戦争の悲惨さを再確認している」のだと思います。


           * * * * *


 そして次に、私が考えてしまうことですが・・・


 「地球温暖化」についても、いま話した太平洋戦争の場合と、

 同じような構造に、なっているのではないでしょうか。



 つまり、

 「地球温暖化の深刻さを、前もって、本当には理解されて
いない!」


 と、いうことが、

 温暖化対策がなかなか進まない、いちばん本質的な原因の
ように思えるのです。


             * * * * *


 最近の報道によると・・・

 日本の食糧自給率が、2008年度には41%でしたが、

 2009年度では、1ポイント下がって40%になったそうです。



 日本の将来を考えると、こんなに低い食糧自給率では、ものすごく
不安になってきます。

 というのは、エッセイ413で話しましたが、

 地球温暖化によって、もしも世界の平均気温が、産業革命前にくら
べて3℃上昇すると、

 氷河の融解によって川の水が減ったり、乾燥化によって降雨が減少
したりして、世界の農業生産が低下し、

 ほとんど全ての国で、自国の食料が足りなくなるか、あるいは食料
が輸出できなくなります。



 つまり、

 3℃の地球温暖化で、

 日本は、どこの国からも食料が輸入できなくなるのです!




 そして同じく、エッセイ413で話しましたが、

 いまの日本のような、とても低い食料自給率では、

 まったく食料が輸入できなくなると、

 5000万人くらいの餓死者がでる可能性があります。



 ところで一方、

 「太平洋戦争」による日本人の死者は、およそ300万人
だと言われています。



 つまり、

 地球が3℃温暖化すると、

 
日本の食料自給率がこのままだったら、

 太平洋戦争のときの10倍以上の死者が、出る可能性がある
わけです!



            * * * * *


 ちなみに今年は、

 ロシアが深刻な干ばつに襲われて、農業の生産が低下しています。

 そのため、

 8月15日から12月末まで、ロシアからの小麦の輸出が、停止される
ことになりました。



 また、2年前の2008年には、

 オーストラリアの大規模な干ばつによって、小麦の生産が低下し、

 それが原因の一つとなって、「世界的な食糧危機」が発生しました。



 近年における地球の平均気温は、

 産業革命前にくらべて、すでに0.76℃上昇していますが、

 しかし、このていどの温暖化でさえ、上のようなことが起こっている
のです。



 それを考えると・・・

 地球が3℃温暖化すれば、日本が、どこの国からも食料が輸入
できなくなると言うのは、

 かなり信憑性のある話だと、判断せざるを得ません。



 そして、これもエッセイ413でお話していますが、

 イギリス気象庁の、ハドレーセンターの研究によれば、

 温室効果ガスの排出が、このまま今のペースで続いた場合、

 2040年ころに世界の平均気温が、3℃上昇する可能性が
あります!




 ところで、

 太平洋戦争が終結してから、すでに65年もの歳月が経っていま
すが、

 しかし一方、それに比べて2040年というのは、たった30年後の
ことです。



 このように考えると、

 地球温暖化の問題は、ほんとうに残された時間が少なく、

 緊急の事態になっているのが分かります。


           * * * * *


 今回、ここで私が言いたかったことですが・・・


 太平洋戦争を回避できなかった、いちばん反省するべき点は、

 「被害の甚大さを、前もって、本当には理解されなかった!」

 と、いうことに尽きると思います。



 そして、

 この反省は、地球温暖化の問題にこそ、最大限に生かされる
べきだ!


 と、考えています。



 それこそが、

 過去の大きな間違いや、ものすごく悲惨な体験を、

 未来を救うための「貴重な教訓」に変えて生かす道であり、

 先人たちの大きな犠牲にたいして、ほんとうに報いることになる
のだと思います。



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