温暖化テロの脅威 2010年2月7日 寺岡克哉
報道各社によると、1月29日。
国際テロ組織「アルカイダ」の指導者、ウサマ・ビンラディン容疑者の
ものとされる音声メッセージが、
カタール衛星テレビ局の、アルジャジーラによって放送されました。
音声の主が、ビンラディン本人であるかどうかは、「不明」とされて
いますが、
その声明は、
故意であろうとなかろうと、地球温暖化とその危機に責任がある者へ
のメッセージだとし、
「地球温暖化は、イデオロギーの問題ではなく、現実に起きている
問題だ。」
「すべての先進工業国、とくに主要国に、地球温暖化をもたらした
責任がある。」
と、主張しています。
その中でも、とりわけ
アメリカの前ブッシュ大統領が、京都議定書を拒否したことで、自国の
企業保護を優先させたとし、
危機を回避するためには、「アメリカ経済の車輪を止めることが必要だ」
と述べて、
温暖化問題にたいする、アメリカの姿勢を批判しました。
また、今回の声明では、
イスラム教の教義にもとづいた、いわゆる「言い回し」というのが、
ありませんでした。
さらには、環境問題にからめてアメリカを批判したのも、これまでに
無かったことです。
これら2つにおいて、今回のビンラディン容疑者の声明は、ものすごく
異例なものになっていました。
そのため、
イスラム圏を越えた、はば広い同意や理解を求める狙いが、
あったのではないかと見られています。
* * * * *
ところで、
昨年の5月、まだ自民党の政権だったころ・・・
中期目標に関する市民との意見交換会(タウンミーティング)や、
中期目標に関する国民からの意見募集(パブリックコメント)では、
2020年までの温室効果ガス削減目標として、1990年比4%増案が、
意見の大勢を占めていました。
そのとき私は、
あまりにも世界常識と、かけ離れているのではないかという危機感
から、
エッセイ379で、日本が「テロの標的」にされる可能性を、指摘
しました。
その部分の要点を、以下に(補足)抜粋します。
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もしも「+4%案」(1990年比4%増案)を、
日本の中期目標(2020年までの温室効果ガス削減目標)なんかに
したら・・・
「海面上昇による影響」がとくに深刻な国々や、
「気候変動による干ばつ」で食料不足になる国々などの、
「大きな被害」が発生する地域の人々から、ものすごく恨まれること
になるでしょう。
たとえば、IPCC第4次報告書によると、
アフリカでは、2020年までに、7500万人〜2億5000万人の人々
が、気候変動に伴う増加する水ストレスに曝(さら)されると予測されて
います。
また、アフリカのいくつかの国々において、降雨依存型農業からの
収穫量は、2020年までに50%程度減少し得るとしています。
そして、この大陸においては、食料安全保証に一層の悪影響を与え、
栄養失調を悪化させるとしています。
このように、
中期目標がターゲットにしている、2020年までにおいてさえも、
「すごく深刻な被害」が起こる国々があるのです!
そんな世界状況のなか、
もしも「+4%案」なんかを、中期目標に決めてしまったら、
そのうち日本が、「テロの標的」に、されるようになるかも知れま
せん。
あるいは、日本一国だけが、
世界中から非難の的(スケープゴート)にされる恐れも、あるでしょう。
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今のところ、テロリストたちの標的は、おもにアメリカになっている
ようです。
が、しかし、
もしも日本の中期目標が、1990年比4%増などという、全くふざけた
ものであったなら、
今ごろは日本も、「テロの標的」として、目をつけられていたかも知れ
ません。
いま幸いにして、日本の中期目標は、1990年比で25%減ですが、
このように積極的に、温暖化対策に取り組んでいるという姿勢を見せ
ることは、
発展途上国の人々から、日本が「あらぬ憎悪」を受けないようにする
ためにも、
絶対に必要でしょう。
もちろん、
テロを恐れて(テロに屈して)、温暖化対策を推進させるべきだと、
言ってるのではありません。
そうではなく、
日本だけにしか通用しない「エゴ」を、あまりにも強く押し通そうと
すれば、
ほかの国々から、「激しい怒りと憎しみ」を買うことになるのも、
当然だということです。
そしてまた、
温暖化懐疑論者たちが、よく吹聴しているような、
「地球温暖化なんか起こっていない。」
「北極の氷が解けても、海面は上昇しない。」
「温暖化の原因は、二酸化炭素などではない。」
「地球は温暖化する方が、かえって良いのだ。」
・・・・・・ ・・・・・・
こんなことを、
海面上昇で沈んでしまいそうな、ツバル、キリバス、モルディブなどの
小さな島国に住む人々。
気候変動による干ばつで、食糧難に苦しんでいる、アフリカの最貧国
の人々。
氷河湖の決壊による、洪水の危険に、毎日を脅えて暮らす人々。
これらの人々が聞いたら、一体どのように思うことでしょう?
おそらく、
すごく激しい怒りと、とても強い憎しみを買うのは当然ではないかと、
私は確信しているのですが・・・
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