25%削減に対する世論
                          2009年10月18日 寺岡克哉


 最近は、

 新聞やテレビなどによる、各政党や政策への世論調査で、

 「温室効果ガス削減」についての項目が、入るようになりました。



 なので、

 2020年までに日本の温室効果ガス排出量を、

 1990年比で25%削減することに対して

 いま現在の国民がどう思っているのか、よく分かるようになって
来ました。



 いよいよ、温室効果ガスの削減が、

 「社会的に重要な問題」として、認識されるようになったのでしょう。

 それを私は、とても嬉しく思っています。



              * * * * *


 さっそくですが、

 近ごろ行われた、各報道機関による世論調査で、

 「温室効果ガス25%削減」に関する部分をピックアップしてみると、

 以下のようになりました。



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                         25%削減に対して
     調査日       報道機関    賛成   反対

  9月16日〜17日   読売新聞    74%   ・・・・・
  9月16日〜17日   毎日新聞    69%   ・・・・・
  9月18日〜20日    NHK      42%   13%
  9月19日〜20日   テレビ朝日   63%   22%
 10月 2日〜 4日   読売新聞    75%   ・・・・・
 10月 3日〜 4日    JNN      79%   16%
 10月10日〜12日    NHK      71%   22%
 10月11日〜12日   朝日新聞    72%   21%
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(※注1) 報道によって、「反対」の数字が無いものもあります。

(※注2) 
 10月3日〜4日のJNNによる世論調査では、賛成と反対のほかに、
「わからない」が5%ありました。

(※注3)
 10月10日〜12日のNHKによる世論調査では、鳩山首相が国連で
25%削減を表明したことに対して、
 「大いに評価する 29%」と、「あるていど評価する 42%」を合わせ
たのを「賛成 71%」とし、
 「あまり評価しない 17%」と、「まったく評価しない 5%」を合わせた
のを「反対 22%」としました。


              * * * * *


 上のように、世論の結果をまとめてみて、

 まず私は、ものすごく驚きました!

 というのは、25%削減に賛成している人の割合が、とても多いから
です。

 とくに10月に入ると、「25%削減に賛成」が、

 JNNの79%を最高として、軒並み70%以上
になっています。



 私は最初、

 25%削減による、国民への負担や、経済への影響などの危惧から、

 それに反対する人が多いのではないかと、心配していました。



 また、エッセイ396で書きましたが、

 日本経団連など経済界から、全体的に伝わってくる雰囲気として、

 「国民への負担や、経済への影響をひろく喧伝(けんでん)すれば、
25%削減にたいして国民が反対するだろう」

 という、「経済界の思惑」も感じていました。



 さらには、インターネットによる掲示板やブログなどでは、

 国民への負担や、経済への悪影響を強調し、

 25%削減にたいして批判する言論が、少なくありませんでした。



 だから私は、

 「25%削減における国民負担の、見積もりのやりなおし。」

 「温暖化対策をやらないことによる、被害コスト増大の見積もり。」

 これらを急いで行い、その結果を早急に、国民にひろく知らせな
ければ、

 25%削減にたいする世論の支持が、得られないのではないかと、

 すごく心配していたのです。


             * * * * *


 しかし実際の世論は、

 そんな私の心配をよそに、まったく正反対でした!




 やはり、最近では「異常気象」が多くなり、

 みんなが、地球温暖化のことを心配するようになり、

 豪雨、台風、洪水、高潮、土砂崩れなどの、

 「自然災害への不安」が増してきたのだと思います。



 そして、

 人類の排出する温室効果ガスが、地球温暖化の原因である
ことも、

 ひろく「一般常識」として浸透してきた
のでしょう。



 これらの2つが、「温室効果ガス25%削減」にたいして、

 世論が高い支持を与えている、本質的な理由だと思います。

 こんなに国民の支持が高ければ、政府も落ちついて着実に、

 「温室効果ガス削減への取りくみ」が、出来るようになるでしょう。


                * * * * *


 しかしながら、決して油断してはなりません!

 なぜなら私には、「過去のにがい思いで」があるからです。



 それは、昨年7月の「北海道洞爺湖サミット」まで遡(さかのぼ)ります。

 マスコミで地球温暖化のことが、ずいぶん取りあげられ、環境問題に
対する世論が、すごく盛り上がりました。

 これで、温室効果ガス削減にたいする人々の意識も、だいぶ高まった
だろうと、私は安心していたのです。



 ところが・・・

 今年の4月〜5月にかけて、全国の5都市で行われた、「中期目標に
関する意見交換会 (タウンミーティング)」での意見分布は、

 「1990年比 4%増加」の支持が、7割強もあったのに対して、

 「1990年比 25%削減」の支持は、2割強しかありませんでした。



 また、今年の5月に行われた、「中期目標に対する意見の募集 (パブ
リックコメント)」の意見分布は、

 「1990年比 4%増加」の支持が、74.4%に対して、

 「1990年比 25%削減」の支持が、13.0%にしか、すぎません
でした。



 京都議定書の目標でさえ、「1990年比 6%削減」だったのに、

 その後の「ポスト京都議定書」における削減目標、つまり中期目標
に対して、

 「1990年比 4%増加」への支持が、7割を超えたのです。



 これは明らかに、京都議定書からの後退であり、それは私に
とって、まったく信じられないことでした。

 洞爺湖サミットのときの、「環境意識にたいする盛り上がり」から
すれば、とても考えられません。

 おそらく、温室効果ガスの削減に反対する人々が、危機感をもち、
攻勢を強めたのでしょう。

 そう言えば、昨年に行われた洞爺湖サミットの前後あたりから、
「温暖化懐疑論者」たちの言論も、活発になったような気がします。



 今後、温室効果ガスの25%削減にたいして、

 キャップ&トレードや、再生可能エネルギーの買取り、地球温暖化
対策税などの、

 「具体的な政策」が実施されるようになれば、

 それに反対する人々が、ふたたび攻勢を強めるかもしれません。



 なので、

 「温室効果ガス25%削減」にたいする世論の高い支持を、

 このままずっと維持するように、みんなで頑張りましょう。

 それが、25%削減における「具体的な政策」を進める上で、

 いちばんの原動力となるのです!




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