最近の豪雨について
2009年8月16日 寺岡克哉
このところ、立て続けに、
「はげしい豪雨」による災害が発生しています。
先月は、中国地方や九州北部で、はげしい豪雨が降り、
今月になると、台風9号による、はげしい豪雨が降りました。
これらの豪雨によって、洪水や土砂崩れなどが発生し、
かなりの犠牲者も出ています。
このような災害が起こるたびに、
「これは、地球温暖化が原因ではないのか?」
「少なくても、それが一因になっていることは、否定できないの
ではないか?」
「地球温暖化による犠牲者が、すでに日本でも発生しているの
ではないか?」
と、私は思ってしまうのです。
前々回から、「各国の温暖化対策」について、お話している途中で
したが、
今回は、近ごろ起こっている「はげしい豪雨」について、考えてみたい
と思いました。
* * * * *
まず、すごく基本的な話ですが、
地球温暖化によって、海水の温度が上昇すると、
「海水の蒸発」が活発になります。
そうすると、大気中に含まれる、水蒸気の量が多くなります。
つまり、空気に含まれる水分が、多くなるわけです。
そして、
水分をたくさん含んだ空気が、大気の活動によって、上空に運ばれ
ると、
冷やされて「雲」が作られ、やがて「雨」となって降ります。
つまり雨というのは、蒸発した水が、ふたたび地上に戻ってくる
現象なのです。
だから地球温暖化によって、
海水の温度が上がり、水の蒸発が多くなれば、
雨の量も増える(はげしい豪雨が降るようになる)のは、
まったく当然のことなのです!
* * * * *
さて、
気象庁の、異常気象分析検討会によると、
中国地方や九州北部で起こった、はげしい豪雨については、
以下のことが原因のようです。
まず、
6月に発生したとみられる「エルニーニョ (海水温が上昇する現象)」
に伴って、
大気の活動が、平年よりも南の赤道付近で、活発になりました。
その結果、「亜熱帯ジェット気流 (つまり偏西風)」が、平年とくらべて
南に位置したと考えられます。
とくに、7月下旬以降は、
赤道を30〜60日の周期で、東へ一周する「赤道季節内振動」という
現象に伴って、
大気の活動が、インド洋からフィリピン付近にかけて不活発になり、
太平洋西部の赤道域で活発になりました。
そのことも影響して、日本付近の偏西風は、平年よりもかなり南に位置
しました。
このように偏西風が南下すると、太平洋高気圧の本州付近への張りだし
が弱くなり、
日本は、いつまでも雨雲に覆われる(つまり梅雨明けが遅れる)ことに
なります。
さらには、南下した偏西風が、
東アジアでは東経130度で気圧の谷が深まり、日本の東海上で気圧
の尾根が強まるように、「蛇行した状態」がつづきました。
このため、東シナ海から北日本に向かう、温かく湿った気流が強まり、
西日本から北日本にかけて、前線や低気圧の活動が活発になりま
した。
また、エルニーニョ現象もふくめた、熱帯全体の海水温の上昇は、
偏西風が北半球規模で顕著に強まったことに影響しており、
このことが、前線や低気圧の活動を活発化させた一因と考えられ
ます。
ちなみに・・・ ある報道では、
「6月と7月の海面の水温は、観測史上最高を記録していて、
地球温暖化も要因の一つと考えられる」
という記事があったのですが、なぜか現時点では削除されてい
ます。
* * * * *
一方、
台風9号による、はげしい豪雨については、以下のことが原因の
ようです。
まず、
日本の南海上の海水温が、30℃程度と平年よりも1〜2℃高く、
太平洋高気圧の、西への張り出しも弱くなっていました。
そのため、南海上の温かく湿った空気が、
台風9号と、太平洋高気圧の間から、日本列島に広範囲に流れ
込んできました。
このために積乱雲が発達し、局地的な豪雨をもたらしたのです。
* * * * *
以上のように、
7月の豪雨と、台風9号による豪雨で、共通している根本的な
原因は、
海水の温度が上昇して、温かく湿った空気(つまり水分をたく
さん含んだ空気)が、日本付近に流れ込んできた!
ということです。
そして、「なぜ海水の温度が上昇したのか?」と言えば、
短期的には、エルニーニョ現象がおもな原因と考えられますが、
より長期的には、「地球全体における平均海水温の上昇」
が、本質的な原因でしょう。
そしてさらに、
「地球全体の海水温が、上昇している原因は何か?」と言えば、
それこそ、「地球温暖化」以外の、何ものでもないのです!
温暖化が進んで、海水温が上昇すれば、
「はげしい豪雨」が増えるのは、当然の結果です。
事(こと)あるごとに、それを再認識する必要があるでしょう。
なぜなら、「運の悪い天災」だとしか思っていなければ、
いつまで経っても、「地球温暖化の深刻さ」の認識に、繋がらない
からです。
そして、地球温暖化の深刻さが、ひろく一般に認識されなければ、
「温室効果ガスの大幅な削減」にたいする、社会的な理解が得られ
ないからです。
せっかく大自然が、人類に警告を発してくれているのです。
「地球温暖化による被害が、すでに日本でも起こっている!」
「地球温暖化による死者が、すでに日本でも発生している!」
「少なくても、その可能性は決して否定できない!」
と、事あるごとに、それを再確認することが、すごく大切だと思います。
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