このままだと2050年にどうなるか? 6
2008年11月30日 寺岡克哉
もしも、効力のある温暖化対策がとれず、今のまま二酸化炭素を出しつづ
けてしまったら・・・
もしもそうなったら、2050年には、2.6℃の気温上昇になる可能性
が高いと考えられます。
そのような2.6℃の気温上昇が起こったら、一体どんな事態になってしまう
のでしょう?
前々回までは、「地球温暖化の影響」として以下に挙げられる項目、
(1)異常気象
(2)海面上昇
(3)生態系への影響
(4)農業や漁業への影響
(5)健康被害
(6)その他
のうち、(1)〜(3)について見てきました。
今回は、その続きです。
* * * * *
(4)農業や漁業への影響
これまで見てきましたように、地球温暖化が進むと、
異常気象によって「干ばつ」が起こったり、
山岳氷河や積雪などの、水を溜めておく「自然の白いダム」が消滅して、
「水不足」になります。
そのため、農業に大きな影響を与えます。
また、地球温暖化が進むと、
海水の温度が上がったり、
「海水の酸性化」が酷(ひど)くなったりします。
そのため、漁業にも大きな影響を与えます。
ここでは、そのような農業や漁業への影響について、見て行きましょう。
* * * * *
農業への影響
たしかに、
中緯度や高緯度にある、「寒い気候の地域」では、
その地域の気温上昇が1〜3℃で収まるならば、
反って、農業の生産がふえる所もあります。
たとえば日本でも、北海道や、東北の北部などでは、農業生産が増加
する地域になっています。
しかし、低緯度にある地域・・・
とりわけ「熱帯」で、さらに「乾季」がある場所では、
その地域の気温が1〜2℃上昇しても、
農業の生産が減少してしまいます。
そしてさらに・・・
灌漑(かんがい)設備が発達しておらず、もっぱら、空から降ってくる
「雨」にたよって、農業をやっている地域・・・
とくにアフリカでは、2020年までに、農業生産が半分に減ってしまう
所もあるのです。
これは、世界の平均気温が、1.4℃上昇することに相当します。
だから2050年までに、気温が2.6℃上昇すれば、
おそらくアフリカでは、すごく大変なことになっているのは間違いありま
せん。
また、南アジアや中央アジア(インド、パキスタン、アフガニスタンなど)
でも、
2050年までに、穀物の生産が、最大で30%ていど減少し得ると予測
されています。
* * * * *
漁業への影響
地球温暖化によって、海水の温度が上がると、
海水の循環が弱まって、大気中の酸素が、海に供給されにくくなったり、
深層水に含まれる豊富な栄養が、表層に運ばれにくくなったり、
海流の、場所や強さが変わったり、
魚が移動して、それまで棲んでいた場所から居なくなったり、
稚魚の死亡率が高くなったり、
エサとなるブランクトンが影響をうけたりして、
漁獲量の減る恐れがあります。
たとえば、日本近海の水温が、最大で2.9℃上昇した場合・・・
北海道〜東北沖のサンマは、30%減少。
日本海のマダイやトラフグも、30%減少。
関東沖のマイワシも、30%減少。
そして、西日本近海のマアジ、マダイ、マサバは、30〜70%減少。
と、予測されています。
なので、2050年までに気温が2.6℃上昇すれば、それに近い被害が
起こる恐れがあるでしょう。
しかしながら・・・
今の話は、「温度だけ」の影響を評価したものです。
その上、「海水の酸性化」の影響が加われば、さらに被害が大きくなる
でしょう。
このまま人類が二酸化炭素を出しつづけたら、
2050年には「海水の酸性化」によって、
北極や南極にちかい、高緯度の「冷たい海」では、漁業資源が壊滅して
しまいます。
また、赤道にちかい、低緯度の「暖かい海」でも、サンゴ礁が壊滅して
しまうでしょう。
なので、それらによる漁業への影響は、計り知れないものになるはず
です。
(海水の酸性化と、その影響については、エッセイ352で、もうすこし詳しく
説明しています。)
* * * * *
最後に、今回の要点をまとめてみます。
2050年までに気温が2.6℃上昇すれば、
アフリカでは、農業が壊滅してしまう地域が出るでしょう。
また、南アジアや中央アジアでも、穀物の生産が3割ていど減少します。
その結果、とても多くの「飢餓難民」が発生するのは確実です!
さらには、食料をめぐって紛争が起こるかも知れません。
漁業資源も、おおむね減少(たとえば日本近海では30%ていど減少)
するでしょう。
その上さらに、「海水の酸性化」も加わって
高緯度にある「冷たい海」や、低緯度にある「サンゴ礁」では、漁業
資源が壊滅します!
* * * * *
(5)健康被害
これは、次回でお話したいと思います。
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