地球温暖化への懐疑論 2007年3月18日 寺岡克哉
じつは今まで、地球温暖化にたいする「懐疑論」というものが存在していました。
というか、未だにまだ、それを主張する人がいるかも知れません。
それは、
本当に地球は温暖化しているのか?
本当に、人類のだす二酸化炭素が、地球温暖化の原因なのか?
と、疑問の声を主張する人たちです。
ほんの1年前でさえ、地球温暖化にたいして懐疑的な人が、けっこう居たのでは
ないかと思います。
私は今まで、そのような人たちと議論するのを、あえて避けて来ました。なぜな
ら、いくら議論をしても、まったく埒(らち)があかないからです。そしてまた、いずれ
真実が明らかにされるという確信もあったからです。
それはもちろん、
地球の温暖化している事実が明らかになること。
そしてその原因が、人類のだす二酸化炭素などの温暖化ガスであること。
という真実が、明白になるという方向へです。
そして事実、エッセイ260でお話した「IPCC第4次報告」により、それらが明白に
されたのでした。私はこの時を、じっと待っていたのです。
* * * * *
じつは私の所にも、何人かの人から、地球温暖化にたいする「懐疑的な質問」の
来たことがありました。
そしてそれは、地球温暖化懐疑論者たちが世間に吹聴している論調と、そっくり
同じようなものでした。だからその方面の人々にとって、それは結構有名な話なの
でしょう。
以下、それについて、ちょっとお話したいと思います。
かつて、まず第一に懐疑論者たちは、「地球は本当に温暖化しているのか?」
という疑問を主張しました。
都市部の「ヒートアイランド」(たくさんの建物やアスファルトのせいで、熱がこもる
現象)を見ているだけではないのか?
気温の上昇していない地域もあるではないか!
海上の気温は、詳しく測定されていないではないか!
本当に、地球全体として温暖化しているのか?
という疑問です。
たぶんそれを受けて、IPCCの第4次報告では開口一番に、
「気温や海水温の上昇、雪氷の融解の増加や海面上昇などから気候の温暖化
は明白」
と、明言したのだと思います。
過去100年で、海水面は10〜25センチ上昇してきましたが、その原因の4分
の3、つまり7.5センチ〜18.8センチは、海水が暖かくなって膨張したからです。
これは、海水全体が暖められたこと、つまり地球全体が温暖化していることの
疑いえない証拠です。
また、もしもヒートアイランドだけで、地球全体が温暖化していないのなら、
アルプスやヒマラヤの山岳氷河の縮小
南極や北極の海氷の縮小
シベリアやアラスカの永久凍土の融解
なども、まったく説明ができないでしょう。
だから、地球全体が温暖化していることは100パーセント確実です!
* * * * *
温暖化の事実が否定できなくなると、つぎに懐疑論者たちは、
たしかに地球は温暖化しているようだが、それが人類のだす温暖化ガスで
起こっているのか?
太陽活動などの、なにか別の自然現象で、地球が温暖化しているのではない
のか?
という疑問を主張するようになりました。
たぶん、IPCCの第4次報告はそれを受けて、
「20世紀の半ば以降に観測された平均気温上昇の大部分が、人為的な温室
効果ガスの増加によって引き起こされた可能性がかなり高い」
と、明言したのでしょう。
この「可能性がかなり高い」というのは、90パーセント以上の可能性を意味し、
ほぼ「科学的に明確にされた!」と言って良いでしょう。
もちろん、太陽の活動などは十分に考慮されています。それでも現在の温暖化
を説明できないから、人為的な原因だと結論されるのです。
もしも、IPCCの結論を覆(くつがえ)そうと思うならば、IPCCが行った以上の
たくさんのデータを集め、さらに詳しい研究をしなければなりません。
しかし、もしそのような詳しい研究をしても、人為的な原因で温暖化の起こって
いることが、さらに確実になる公算の方がはるかに大きいでしょう。
* * * * *
私は前から思っていたのですが、人類がだす温暖化ガスよりも、さらにそれよ
り大きな原因がもし存在するのならば、そのように主張する人たちは、それを
明確に示さなければなりません。
懐疑論者たちは、地球温暖化は人為的な原因ではないかも知れないと主張し
ておきながら、いったい何が、人類のだす温暖化ガスよりも、さらに大きな原因
になっているのかを明確にしようとしません。
これでは、いたずらに社会の混乱を招くだけです。とても不誠実で、無責任な
態度と言わざるをえないでしょう。
地球温暖化への懐疑論がはびこるのは、
「今まで通りに、化石燃料を使い放題にしたい!」
という、とても強い願望が、その根底に潜んでいるからだと思います。
だから、社会的な集団意識としてそれが受け入れられやすいのは、当然と
いえば当然でしょう。
しかし、人為的な原因で地球温暖化の起こっていることは、すでに「科学的に
明確」となりました。
だから今後なお、地球温暖化懐疑論を主張するとすれば、それは「非科学的」
と言われても仕方のないことになるでしょう。
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