森林によるCO2の固定 4
2006年11月12日 寺岡克哉
ここでは、植林によって森林を増やして行くときに、「適度な伐採」をすると、
さらに効率よく二酸化炭素が固定されることについて、お話したいと思います。
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まず、前のエッセイ244で話しましたように、1本の小さな若木を植えた場合、
それがどんどん成長している間は、どんどん二酸化炭素が固定されるのでした。
なぜなら、樹木の背が高くなり、幹が太くなり、枝葉の数が増えて行くこと。つま
り「樹木の体」が大きくなるためには、光合成によって、二酸化炭素を有機物とし
て固定しなければならないからです。
しかし樹木が十分に生長してしまうと、二酸化炭素の吸収と放出がバランス
して、もうそれ以上の二酸化炭素の吸収増加は起こらないのでした。
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そしてこれは、植林によって森林を育成するときにも、同じことが言えます。
小さな苗木を植えたあと、しばらくの間は、すべての苗木がどんどん生長しま
す。だから、森林全体としての二酸化炭素の吸収も、どんどん増加します。
しかし、すべての苗木が十分に生長してしまうと、二酸化炭素の吸収と放出が
バランスして、もうそれ以上の二酸化炭素の吸収増加はしなくなります。
だから、大気中の二酸化炭素をどんどん吸収させるためには、森林の面積を
どんどん増やしていく必要があるのです。
(ここでちょっと注意をしますが、十分に成長して、二酸化炭素の吸収増加が
なくなった森林でも、二酸化炭素を蓄える「倉庫」としての役割を果たしています。
だからそのような森林でも、それが存在し続けることには、とても大切な意味が
あります。)
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ところで、森林の成長が終わり、二酸化炭素の収支がバランスするのは、植林
を行ってから、だいたい20年から30年後ぐらいだと言われています。
だから20年から30年たつと、その森林ではもう、新たな二酸化炭素吸収の
増加が起こらなくなります。
しかし、ここで「適度な伐採」をして木を切りたおし、そこに新しい苗木を植えれ
ば、その森林はさらに二酸化炭素を吸収するようになります。これが、「伐採の効
果」です。
もちろん、伐採した木を燃やしたり、その場に放置して細菌などによって分解
されたりすれば、それらは二酸化炭素にもどってしまうので、元のもくあみです。
だから伐採した木材は、建築物や家具として使うのです。そうすれば、大気
中に二酸化炭素を放出しないで済みます。つまり建築物や家具が、二酸化炭素
を蓄える「新たな倉庫」となるわけです。
また、伐採するときには、森林を破壊しないように、すべての木を切り倒すこと
はしません。これが、「適度な伐採」と言うゆえんです。
そのような「適度な伐採」をしつつ、その後に植林をするのはもちろんですが、
さらに新たな土地にも植林をしていき、森林自体の面積を増やして行きます。
そうすれば、ただ単に森林の面積を増やすのに比べて、その何倍もの二酸化
炭素を、森林に吸収させることが出来るのです。
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ところで、建築物として木材を多く使うと、たしかに二酸化炭素が減ります。
しかもそれは、木材として二酸化炭素が固定される以上の効果があります。
なぜなら、石灰石を加工(焼成)してセメントを作るときに、二酸化炭素を出す
からです。つまりセメントを使うだけで、じつは二酸化炭素を出しているのです。
だから建築物に木材を多用すると、そのぶんコンクリートを使うところが減り、
セメントの使用量も減ります。
ゆえに、木材として二酸化炭素が固定されるだけでなく、セメントの使用量を
減らした分までも、二酸化炭素を削減することが出来るのです。
そしてまた、コンクリートの塊だけの建築物よりは、各所に木材が使われた
建築物の方が、心がなごんで住みやすいのではないかと私は思います。
適度に管理された森林から、それを破壊しないよう計画的に伐採し、その
木材を建築物や家具として多用すること。
それは温暖化対策の一つとして、とても好ましい方法ではないかと、私は思っ
ています。
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