自動車の省エネ 2 2006年9月3日 寺岡克哉
前回は、運輸部門(自動車、船舶、航空機等)から排出される二酸化炭素のなか
で、とくに「自動車」が82パーセントも占めていること。
しかも「自家用乗用車」は、運輸部門における二酸化炭素の排出の、じつに55
パーセントを占めていることについて、お話しました。
今回は、その続きです。
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前回のエッセイ236でお話しましたように、運輸部門における二酸化炭素の排出
は、1997年から横ばいでした。
しかし、こと「自家用乗用車」に話しを限れば、エネルギー消費は年々増加
しています。
それを示しているのが次の表です。
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自家用乗用車における、エネルギー消費の推移(ガソリン換算)
1990年 36479000 キロリットル
1991年 39569000 キロリットル
1992年 42455000 キロリットル
1993年 43833000 キロリットル
1994年 45679000 キロリットル
1995年 48514000 キロリットル
1996年 51271000 キロリットル
1997年 52865000 キロリットル
1998年 54044000 キロリットル
1999年 57259000 キロリットル
2000年 57528000 キロリットル
2001年 59832000 キロリットル
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上の表のように、自家用乗用車のエネルギー消費(つまり二酸化炭素の排出)
は、1997年以後も止まることなく増え続けています。
その結果、2001年では1990年に比べて、二酸化炭素の排出が64パーセント
も増加しているのです。
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一体どうして、自家用乗用車のエネルギー消費は、増え続けているのでしょう?
その主な原因は、自家用車の「台数」の増加です。
最近では、一家に2台以上の車がある家庭も、珍しくなくなりました。
また、単身赴任や、大学進学で親元を離れた場合などには、実家とは別に車を
持つこともあるでしょう。
そのような「自家用車の増加」を示しているのが、つぎの表です。
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日本における自家用乗用車の保有台数
軽自動車 小型乗用車 普通乗用車
1990年 270万台 3030万台 190万台
2001年 1100万台 2740万台 1490万台
増加率 4.1倍 0.9倍 7.8倍
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1990年と2001年を比べると、小型乗用車は若干減っているものの、軽自動車
は4.1倍の増加、そして普通乗用車は、なんと7.8倍も増加しているのです。
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このように自家用車は、ただでも絶対数が多いのに、さらにその台数が増えて
います。
だから車を乗る一人一人の、省エネの努力と工夫が、今とても大切になっている
のです。
それでは、車を乗る一人一人は、一体どうすれば良いのでしょう?
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現在、キャンペーンなどによって社会に広めようとしているのは、「アイドリング
ストップ」です。
ところで、長い時間を停車しているときのアイドリングストップに、省エネ効果が
あるのは当然です。
が、しかし、「信号待ち」の短いアイドリングストップにも、かなりの省エネ効果
があるのです!
その証拠に、たとえば次のような実験結果があります。
北海道の宗谷岬から、鹿児島の佐多岬までの、3718キロメートルを27日間で
キャラバン走行し、「信号待ち」のアイドリングストップの、燃料消費の削減効果が
調べられました。
その結果、都市と都市の間では3.4パーセントの削減、都市の中では13.4
パーセントの削減、全体では5.8パーセントの削減になることが実証されました。
このように「信号待ち」のアイドリングストップは、とくに都市部において
大きな効果を発揮するのです。
たしかに、いちいち「信号待ち」でアイドリングストップをするのは、とても面倒かも
しれません。
しかしこれからは、簡単にアイドリングストップのできる装置や車が、普及して行く
のではないかと思います。
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ところで、片道5キロぐらいの距離なら、「自転車通勤」をするのも良いかも知れ
ません。
たとえば片道4キロの道のりを、週2日だけ自転車通勤にすると、年間で185
キログラムの二酸化炭素の削減になります。
毎日が自転車通勤だと、年間463キログラムの削減です。
たしかに、雨の日や積雪期などには、自転車通勤を毎日つづけるのは無理がある
でしょう。
しかし、晴れて気持ちの良い日などは、自転車通勤を取り入れると適度な運動に
なり、反って健康に良いのではないでしょうか。(このように、ものは考えようだと思い
ます。)
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ところで、もしも新しい車を買うのならば、なるべく軽自動車などの「燃費の良い
車」にして頂けたらと思います。
さらに、お金のゆとりがある方は、「ハイブリッドカー」などの低公害車にして
頂ければ、なお好ましいでしょう。
しかし、(車の存在を否定することなく)根本的に解決する方法は、やはり「燃料
電池自動車」や「バイオマス燃料」などの開発と普及です。
車が好きで、車を愛する方々にこそ、それらの開発や普及に対する社会的な機運
を、ぜひ盛り上げて頂きたいと願っています。
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