自動車の省エネ 1 2006年8月27日 寺岡克哉
これから、自動車による二酸化炭素の排出について、見ていきたいと思います。
そしてその上で、自動車における省エネの可能性について、考えてみたいと思い
ます。
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まず率直に申し上げて、自動車は、かなりの二酸化炭素を出します。
しかし現代社会では、もはや車の存在を否定するのは不可能でしょう。
だから私はこのエッセイで、自動車に乗ることを罪悪視したり、自動車の
存在を否定しようと言うのではありません。
私は、このエッセイを読んでもらうことで自動車の現状を知っていただき、アイド
リングストップなどの「車の省エネ」に対する意識を、すこしでも高めて頂けたらと
思っています。
そして、やはり根本的な解決は、燃料電池自動車などの開発と普及です。
あるいは、サトウキビなどから作ったアルコールや、菜種、ひまわり、大豆など
から取った植物油を、自動車の燃料にすることです。
それらの燃料は「バイオマス」から作られるので、いくら使っても、大気中の二酸化
炭素濃度が増えないのです。
私は、そのような研究開発に対する社会的な機運も、どんどん盛り上がって欲し
いと思っています。しかしそのためには、やはり自動車の現状を、多くの方に知って
いただく必要があるのです。
というのは、「少しぐらい高くても、電気自動車や、バイオマス燃料を使うべきだ!」
という社会的な同意が得られなければ、それらを普及させることが難しいからです。
そんなことを願って、このエッセイを書くことにしました。
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つぎの表は、1990年から2004年までの、運輸部門における二酸化炭素の
排出量です。
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運輸部門(自動車、船舶、航空機等)
1990年 217.2
1991年 228.9
1992年 236.8
1993年 238.8
1994年 248.1
1995年 257.4
1996年 265.2
1997年 268.4
1998年 264.5
1999年 268.4
2000年 264.5
2001年 266.7
2002年 262.1
2003年 260.2
2004年 261.5
(百万トン 二酸化炭素換算)
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この表によると、1990年から1997年までは増加傾向にありましたが、それ
以後は横ばいで、二酸化炭素の増加は治まっているようです。
しかし、1990年と比べると2004年では、20パーセントもの増加になってい
ます。
そしてまた、2004年の運輸部門における二酸化炭素の排出は、2億6150
万トンであり、産業部門(工場など)に次いで2番目に多く排出しています。
これは、日本全体における二酸化炭素排出の、じつに20.4パーセントを
占めているのです。
だから、運輸部門において「省エネの可能性」があるのならば、大いにやるべき
なのは間違いありません。
* * * * *
ところで運輸部門とは、「自動車、船舶、航空機等」となっていますので、その
なかで「自動車」がどれぐらいの割合なのか、とても気になるところです。
もしかしたら、船舶や航空機の方が、たくさん二酸化炭素を出しているかも知れ
ないからです。
もしもそうなら、自動車の燃費を良くしたり、アイドリングストップなどをしても、
二酸化炭素の削減にあまり効果がないことになります。
だから私は、上の表を最初に見たとき、そのことがとても気になっていました。
そして見つけたのが、つぎの表によるデータです。
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日本の輸送機関別の、二酸化炭素の排出量の割合 (1997年度)
自家用乗用車 55パーセント
自家用貨物車 12パーセント
営業用貨物車 17パーセント
タクシー 2パーセント
バス 2パーセント
内航海運 6パーセント
鉄道 3パーセント
航空 3パーセント
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私は、この表を初めて見たとき、とても驚きました!
なぜなら、船舶、航空、鉄道を合わせても、たったの12パーセントに過ぎ
ず、あとの82パーセントは「自動車」が占めているからです。
そして特に「自家用乗用車」は、運輸部門における二酸化炭素排出の、
じつに55パーセントも占めているのです。
しかも「自家用乗用車」に関してだけ言えば、エネルギー消費がずっと
増加傾向にあります。
だから車を乗るみなさんの、ちょっとした工夫や気づかいで、とても大きな
省エネ効果が期待できるわけです。
それらのことについては、また次回にお話したいと思います。
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