風力発電について 2006年7月2日 寺岡克哉
二酸化炭素の出さない「新エネルギー」として、とくに期待されているのは、太陽光、
バイオマス、そして風力です。
今までは、その内の「バイオマス」について、すこし詳しく見て来ました。バイオマス
は、調べれば調べるほど奥が深く、面白そうな話もたくさんあります。
しかしここで、いったん話に区切りをつけることにして、今回は「風力」についてお話
したいと思います。
(私がいちばん期待しているのは「太陽光」ですが、これはいろいろとお話したい
ことがありますので、この次から追々に話して行きたいと思います。)
* * * * *
「風力」によるエネルギー生産量は、バイオマスの10分の1、太陽光と比べる
と4倍です。だから、これら3つの中では、ちょうど真ん中に位置していると言え
ます。
そして世界各国の、風力による発電量は、以下の表のようになっています。
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国 発電量
ドイツ 6560000000ワット
アメリカ 2600000000ワット
スペイン 2582000000ワット
デンマーク 2325000000ワット
インド 1340000000ワット
オランダ 458000000ワット
イタリア 427000000ワット
イギリス 409000000ワット
中国 361000000ワット
ギリシャ 254000000ワット
スウェーデン 240000000ワット
日本 150000000ワット
カナダ 140000000ワット
アイルランド 118000000ワット
ポルトガル 100000000ワット
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上の表は2001年のデータです。これを見ると、1位のドイツは、2位のアメリカを
2.5倍も引きはなしてダントツです。
日本と比べると、ドイツは44倍もの発電量です。しかし現在、日本も風力発電は
頑張っており、2010年には20倍の3000000000ワットにする計画になって
います。
私は、以前に書いたエッセイ223で、日本で風力発電があまり普及しないのは、
ごく一部の地域しか「適した風」の吹くところが無いからだと話しました。
しかし別の本を見ると、日本が風力発電に適さないわけでは、決してないみたい
です。
日本は海岸線が長いので、海上風力発電により、日本で使う電気の2割ぐらいを
まかなえると、国土交通省では試算しているそうです。
そして、沖合1キロメートルから3キロメートルに大型の風車をつくり、発電の研究
にのりだしているみたいです。
* * * * *
つぎに、風力発電の問題点や誤解について、少しまとめてみたいと思います。
風力発電は、風車をいちど作ってしまえば、あとは風で回るだけなので、運転の
コストが「タダ」のように思えます。(実際、私もそう思っていました。)
しかし、風車の運転を続けるためには、1月ごと、半年、1年ごとの、保守や点検
の費用がかかります。また、故障などが生じた場合は、それを修理する費用も
かかります。
風車をつくる費用も含めた「発電コスト」は、当然ながら風の強さにより変わって
きます。
年間の平均風速が4メートルのときは、1000ワット時あたり60円ぐらいの発電
コストで、平均風速が6メートルになれば15円ぐらいに下がります。
ところで風力発電には、「古くなったプロペラ」の問題があります。
大型風車のプロペラの翼は、一枚が20メートルから50メートルもの大きさが
あります。そして風車の部品のうち、もっとも過酷な条件で動いているのがプロペラ
で、10年から20年で新しいものに交換しなければなりません。
つまり、50メートルもの「巨大な産業廃棄物」が、将来つぎつぎと生まれて行く
わけです。風力発電は、この問題を克服しなければなりません。
また、風力発電における誤解で、「多くの鳥が風車にぶつかって死んでしまう!」
と言うのがあります。
しかしこれは、ほかの原因で鳥が死ぬ場合とくらべると、あまり問題はなさそう
です。
たしかに、風車は鳥を殺します。たとえばアメリカでは、毎年70000羽ぐらいの
鳥が、風車にぶつかって死んでいるそうです。
しかし、車は毎年57000000羽の鳥を殺し、建物のガラスにぶつかって死ぬ鳥
は97500000羽いるそうです。
つまり、車と建物を足したものに比べて、風車で死ぬ鳥は2200分の1にすぎま
せん。これで風車の存在が問題だというのなら、車や建物の存在は、もっと問題に
されるべきでしょう。
その他、風力発電には、景観や騒音の問題もあります。
しかしこれも、人里から離れたところや、海上などに風車をつくれば、あまり問題
にならないのではないでしょうか。
* * * * *
以上、風力発電についてザッと見てきました。
その結果、やはり風力発電は、「新エネルギー」の一角として期待されるだけ
のことはあり、将来的には大切なエネルギーになると私は思いました。
(補足・訂正)
2001年の日本の風力発電量は150MWですが、2005年では1231MW
と、8倍以上に増えています。
このままどんどん風力発電が増えれば、日本においてもバードストライクの
問題が無視できなくなって行くでしょう。渡り鳥の特別な経路になっていたり、
野鳥の大量繁殖地などでは、風車の建設にあたって慎重な調査と検討が必要
になるでしょう。
現在すでに、北海道の瀬棚(せたな)町や、山形県の酒田市などでは、洋上
風力発電が実際に行われています。
現在の風力発電コストは、大規模風力発電で、平均的な風の場合、10〜
14円/kWhです。さらに風の環境の良いところでは10円/kWhを切り、
火力発電と肩をならべるまでになっています。
2007年9月13日 加筆訂正
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