新疆ウイグル問題 2
                              2021年4月11日 寺岡克哉


 前々回では、

 新疆(しんきょう)ウイグル自治区における、地理や歴史について、
ザッと見てきました。



 そして、

 ●新疆ウイグル自治区には、もともとウイグル族が、数多く住んで
 いたこと。

 ●しかし1954年以降から、漢民族が大量に流入するようになった
 こと。

 ●漢民族が増えたことで、ウイグル族の伝統的なイスラム信仰や
 慣習が、虐(しいた)げられるようになったこと。

 ●新疆ウイグル自治区では、人民警察、公安警察、武装警察、特殊
 警察、城管と呼ばれる監視員が展開して、ウイグル族の行動を管理
 していること。

 などについて書きました。


 今回は、その続きです。


               * * * * *


 さて、

 中国政府によるウイグル族への弾圧は、中国政府の報道統制に
よって、

 なかなか国外に情報が出てきませんでした。



 しかしながら、

 ようやく近年になって、徐々にその実態が明らかになってきており、

 国際社会に大きな衝撃を与えるようになっています。



 その中でも、とくに国際社会から注目されているのが、

 「強制収容所」と、「PUBF(Pair Up and Become Family)」の、2つ
なのです。


 以下、それらについて説明して行きたいと思います。


              * * * * *


 まず1つ目の、「強制収容所」についてですが、

 新疆ウイグル自治区内には、それが500ヶ所以上もあるとされて
おり、

 100万人以上のウイグル族が、強制収容されていると言われてい
ます。



 ちなみに、

 自治区内におけるウイグル族の人口は、1271万人なので、

 その全体の、およそ8%以上が、強制収容されている計算になり
ます。



 しかも、

 強制収容の対象となるのは、中国国内のウイグル族だけでなく、
国外にいるウイグル族も含まれているのです。

 彼らには、中国政府から帰国命令が出され、帰国したところで逮捕
されるのが一般的のようです。

 もしも「帰国命令」に従わない場合は、中国国内にいる家族、親戚、
友人、知人などが、逮捕されて人質にされてしまうそうです。


 さらには、

 パスポートの期限が切れた際に、中国の在外公館(注1)では、
更新ができないとされており、

 新疆ウイグル自治国に帰国したところを、逮捕されたという事例も
あります。


 このように、

 中国政府は、さまざまな方法でウイグル族を逮捕しようとしているの
です。


------------------------------
注1 在外公館:

 外国にあって対外関係事務を担当する、政府の出先機関のことです。

 具体的には大使館や公使館、領事館などのことで、日本の場合は、
大使館や総領事館、政府代表部がこれにあたります。
------------------------------



 彼らが強制収容所に入れられる際の罪は、「ウイグル族であること」
です。

 収容所内では拷問を受け、イスラム教徒であるにもかかわらず、豚肉
を食べることを強要され、共産党政権を讃(たた)える歌を歌わされる
そうです。

 また、「女性に対する性暴力」が起こっているという報告もあります。


              * * * * *


 そして2つ目の、「PUBF」についてですが、

 これは「Pair Up and Become Family」の頭文字を取ったもので、

 「ペアを組んで家族になる」という意味です。



 夫が強制収容所に入れられて、妻や子どもだけが残ったウイグル族
の家庭に、

 共産党員である漢民族の男性を送り込むというもので、2017年ごろ
から実施(じっし)されていると言われています。



 彼ら漢民族には、もともと面識すらないのですが、

 「親族」と呼ばれ、仕事や食事、睡眠をともにして、疑似的な「家族
生活」を送るといいます。

 その目的は、

 ウイグル族の女性や子どもたちが、「中国人として」正しい思想や
振る舞いを身につけられるように、支援をすることだそうです。



 ちなみに中国政府は、

 PUBFにより「民族の統一を促進する」として、「ウイグル族の女性に
熱心に支持されているプロジェクトである」と、報告しています。


              * * * * *


 以上、ここまで見てきましたが・・・ 


 100万人以上のウイグル族を、強制収容して拷問し、

 家に残された妻や子供と、面識のない漢民族の男とを、無理やり
一緒に住まわせるなんて・・・


 ほんとうに中国政府には、「人の心」というものが、まったく無いのか
と思えてなりません。



      目次へ        トップページへ