アメリカのワクチン供給戦略
2021年3月7日 寺岡克哉
アメリカのバイデン大統領は、3月2日に記者会見を開き、
「5月の末までに、アメリカの全ての成人分の(新型コロナウイル
ス)ワクチンを確保できる!」
と、強調して述べました。
そのために、バイデン政権は、
アメリカの大手製薬会社であるメルクが、アメリカのジョンソン・エンド・
ジョンソン(J&J)社が開発した新型コロナウイルスワクチンを、
生産できるようにしたと言います。
つまり、
メルク社と、ジョンソン・エンド・ジョンソン社は、じつは競合関係に
あるのですが、
後れをとっていたジョンソン・エンド・ジョンソン社のワクチン生産を
拡大するために、
両社による生産契約の締結(ていけつ)を、バイデン政権が仲介
したというのです。
これにより、メルク社がアメリカ国内に持つ2つの生産拠点が、
ジョンソン・エンド・ジョンソン社のワクチン生産などに充(あ)てら
れることになったのです。
ちなみに、メルク社は今年の1月。
他社に比べて効果が見劣りしているとして、新型コロナワクチンの
開発を断念していました。
* * * * *
ところで、
ジョンソン・エンド・ジョンソン社のワクチンは、2月27日にFDA(アメリ
カ食品医薬品局)が、緊急使用を承認しました。
アメリカでは、ファイザー社と、モデルナ社のワクチンに続いて、3例
目の承認となります。
しかも、ジョンソン・エンド・ジョンソン社のワクチンは、
初めての「1回接種タイプ」であり、これまでの2回接種に比べて、
時間や手間がかからずに済みます。
さらに、ジョンソン・エンド・ジョンソン社のワクチンは、
プラス2~8℃の温度で保管可能であるという「取り扱いやすさ」も
あります。
(ちなみにファイザー社のワクチンは、保存温度がマイナス75℃てい
どです。)
これらの有利な性質、
つまり、「1回の接種」で良いことと、保存温度の「取り扱いやすさ」の
ため、
ジョンソン・エンド・ジョンソン社のワクチンによって、アメリカにおける
ワクチン接種の普及が、加速すると期待されています。
* * * * *
以上ここまで見てきて、私は思ったのですが、
日本も生産契約を締結して、日本に現存するワクチン工場で、
ファイザー社などの承認されたワクチンを生産することは、できない
のでしょうか?
そのように思っていたところ、
国内の中堅製薬会社であるJCRファーマが、イギリス・アストラゼ
ネカ社のワクチンを、
製造する計画であることが分かりました。
ところで、いま現在、
世界中で、新型コロナワクチンの奪(うば)い合いが起こっています。
なので、
日本で生産が可能ならば、生産契約を締結して、どんどん日本でも
ワクチンを作るべきだと思います。
ひいては、それが、
ワクチンの生産能力が無くて、輸入にしか頼ることができない国々を、
助けることにもなるのです。
目次へ トップページへ