ミャンマーでクーデター 2
2021年2月14日 寺岡克哉
今回は、
ミャンマーで起こったクーデターに対する、「各国の反応」について、
見て行きたいと思います。
* * * * *
まずアメリカでは、バイデン大統領が声明を発表し、
「民主主義と法の支配への移行プロセスに対する直接的な攻撃だ」
「軍が直ちに権力を手放し、拘束した人々を釈放するよう、国際社会
は一致して圧力をかけるべきだ」
として、各国が足並みをそろえて対応を迫るべきだという考えを、示し
ました。
その上で、
ミャンマーの軍事政権時代にアメリカが科してきた制裁を、ミャンマー
の民主化を受けて解除してきたことに触れ、
「民主化の発展が逆戻りするなら、制裁に関連する法律を再検討した
上で適切な行動をとる」
として、解除していた制裁を改めて適用することも辞さない姿勢を、示し
ています。
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イギリスでは、ジョンソン首相がツイッターに投稿して、
アウン・サン・スー・チー国家顧問などの拘束を「非合法」だと非難し
ました。
その上で、選挙の結果は尊重されるべきだとして、拘束された人たち
の解放を求めました。
また、イギリス政府の報道官も声明を発表し、
「イギリス政府は、ミャンマー軍による非常事態宣言や、スー・チー
国家顧問やウィン・ミン大統領といった文民政権の幹部の拘束を非難
する」とした上で、
軍に対して「法の支配」や「人権」を尊重し、非合法的に拘束された
人たちを解放するように求めました。
そして、去年11月の総選挙の結果を尊重し、議会を平和的に開会
することが必要だと強調しました。
さらにイギリス政府は、
イギリス駐在のミャンマー大使を外務省に呼びだし、軍によるクーデ
ターや、スー・チー国家顧問などを非合法に拘束したことを、非難しま
した。
外務省報道官の声明によると、アジアを担当するアダムズ閣外相が、
拘束された人たちすべての安全を確保し、即時に解放するよう求めた
としています。
また、ミャンマーの人々の民主的な願いは尊重されるべきだとした
上で、
平和的に民主主義に復帰できるよう、イギリスはあらゆる外交的な
手段を使って、各国と協力していくと強調しました。
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EU(ヨーロッパ連合)では、ミシェル大統領がツイッターに、
「クーデターを強く非難し、軍に対して不当に拘束した人たちを解放
するよう求める」と投稿し、
このたびの出来事が「クーデター」であるという認識を示しました。
また、EUのフォンデアライエン委員長もツイッターに、
「憲法と選挙結果に基づいて文民による正当な政府が取り戻されな
ければならない」と投稿し、
アウン・サン・スー・チー国家顧問たちを、条件なしに直ちに解放する
ように求めています。
* * * * *
国連では、ミャンマーの人権状況を調査しているアンドリュース特別
報告者が、
「民主主義が軍によって倒された。重要なことは、国際社会がまず
はっきりと今回の事態を容認できないと発言することだ。これは単に
政治指導者や政党の問題ではなく、民主主義と人々への攻撃だ」
と述べて、軍の対応を批判しました。
また、国連のバチェレ人権高等弁務官も声明をだし、
「現地の情勢を憂慮している」として、拘束された人々の速やかな
解放を求めました。
さらに声明では、「現地のジャーナリストが攻撃を受けたり、インター
ネットなどへのアクセスが限られているという報道があり、情報への
アクセスや表現の自由を制限するものだ」という、懸念を示しました。
その上で、クーデターを実行した軍にたいして、
「ミャンマーは、平和的な集会を行う権利を尊重するなど、人権を守る
国際的なルールを順守する義務があり、不必要、または度を越した力の
行使は慎(つつし)まなければならない」と、求めました。
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ノルウェーの、ノーベル賞・委員会も声明をだし、
スー・チー国家顧問や拘束された政治家たちを、即時に解放するよう
に求めました。
委員会は声明の中で、「ミャンマーにおける軍のクーデター、そして
ノーベル平和賞の受賞者であるアウン・サン・スー・チー氏や、ウィン・ミン
大統領らの拘束にがく然としている」と、非難しています。
さらに声明では、「スー・チー氏の受賞から30年後の今、軍が再び民主
主義を押しやり、法的に選ばれた政府の代表者たちを拘束している。スー・
チー氏などの即時解放と、去年の総選挙の結果を尊重するように求める」
と、しています。
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中国では、外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官が記者会見で、
「ミャンマーで起きている事態を注視し、状況の把握を進めている。中国
はミャンマーの友好的な隣国であり、ミャンマーのそれぞれの当事者には、
憲法と法律の枠組みのもとで意見の違いを適切に処理し、政治と社会の
安定を守るよう望む」と述べて、批判を避けました。
しかしその一方で、汪文斌・報道官は、
アメリカのバイデン大統領が声明を発表し、クーデターを厳しく非難した
上で制裁の復活も辞さない姿勢を示したことにたいし、
「国際社会のいかなる行動も、ミャンマーの政治と社会の安定、それに
平和と和解に資するものであるべきで、矛盾を激化させたり、情勢を複雑
にしたりすべきではない」と述べて、批判しています。
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ASEAN(東南アジア諸国連合)では、議長声明をだし、
「ASEAN加盟国は、ミャンマーでの事態の推移を注意深く見守ってい
る。加盟国の政治的な安定は、平和で安定し、繁栄したASEAN共同体
を実現するために不可欠だと改めて表明する」
として、法の支配や人権を尊重するように呼びかけています。
その上で、「ミャンマー国民の意志と利益に従って、対話や和解を追求
し正常化するよう働きかけていく」
として、平和的な解決に向けて後押しする姿勢を示しました。
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東南アジア諸国連合の加盟国であるインドネシアでは、外務省が声明
をだし、
2008年に発効した地域の基本法にあたる「ASEAN憲章」に触れて、
「ASEAN憲章の原則、とりわけ法の支配とよい統治、民主主義と立憲
政府の順守を求める」と、しています。
その上で、「インドネシアは、ミャンマーのすべての当事者に対して
自制心を行使し、状況を悪化させないように課題の解決策を見いだす
ように要請する」と、呼びかけています。
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以上、ここまで見てきましたが、ミャンマーで起こったクーデターは、
アメリカ、イギリス、EU、中国、そして東南アジア諸国に、大きな影響
を与えているみたいです。
ところで、
わが国でも、ミャンマーは「アジア最後のフロンティア」と呼ばれており、
民主化と経済成長を追い風に、「400社を超える日系企業」が進出
しています。
なので今後、
クーデターによる政情不安で、それら日系企業への影響が、一体どう
なって行くのか、
とても心配なところです。
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