ミャンマーでクーデター 1
                              2021年2月7日 寺岡克哉


 2月1日。

 ミャンマー(注1)で、軍事クーデターが起こりました!


 アウン・サン・スー・チー(注2)国家顧問や、与党の幹部が、ミャンマー
軍に相次いで拘束されています。

 ちなみにスー・チー氏は、自宅で拘束されているということです。


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注1 ミャンマー連邦共和国(旧称ビルマ):

 東南アジアに位置する共和制の国家で、首都はネピドー、最大の都市
はヤンゴン(旧称ラングーン)。


注2 アウン・サン・スー・チー:

 古くから民主化運動のリーダーとして活動しており、1989年に当時の
軍事政権によって自宅に軟禁され、政治活動を禁止されました。

 1991年には、たび重なる弾圧にも屈せず、非暴力によって民主化を
求め続けたとして、ノーベル平和賞を受賞しています。

 延べ15年にわたる自宅軟禁から解放されたスー・チー氏は、NLD(国民
民主連盟)を率いて2015年の総選挙に臨み、およそ8割にあたる390
議席を獲得して圧勝し、軍主導の政治からの歴史的な転換を実現しまし
た。

 その後、スー・チー氏は国家顧問として事実上、政権を主導し、民主化
の推進と民族の融和を図っています。

 しかしながら、少数派のイスラム教徒であるロヒンギャの人たちへの
政府の対応を巡っては、迫害を容認しているとして、1991年に受賞した
ノーベル平和賞を取り消すべきだという声も上がるなど、国際的な批判
も高まっていました。
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 まずミャンマー軍は、2月1日の午前。

 国営テレビを通じて「非常事態宣言」を出したと発表し、期間は1年間
だとしました。


 その理由について、ミャンマー軍は、

 去年の11月に行われた総選挙での不正や不備(注3)を調査する
ためだとしており、

 同2月1日から予定されていた、総選挙後初めてとなる議会の開会を、
延期すると表明したのです。


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注3:

 ミャンマーでは去年の11月に、5年に1度の総選挙が行われました。

 この選挙で、スー・チー氏が率いるNLD(国民民主連盟)が、改選議席
の8割以上を獲得して圧勝した一方、

 旧軍事政権の流れをくむ野党は、大きく議席を減らしてしまいました。


 そこでミャンマー軍は、この選挙をめぐり有権者名簿に数百万人に上る
名前の重複が見られるなど、多くの不備や不正があったと主張しだして、
政府や選挙管理委員会にたいし、調査や対応を迫りました。

 そのため、ミャンマー軍と、NLD(国民民主連盟)との緊張が、ものすご
く高まっていたのです。
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 さらには、

 ミャンマー軍のトップ、ミン・アウン・フライン(注4)司令官に大統領権限
を移譲して国を統治するとし、軍が政権を掌握(しょうあく)したとしていま
す。


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注4 ミン・アウン・フライン:

 クーデターで全権を掌握した、ミャンマー軍のミン・アウン・フライン氏は、
2011年に軍のトップである司令官に就任しました。

 その後、10年にわたって軍のトップを務めており、軍内部にたいして、
絶大な影響を与えるようになったと言われています。

 またミン・アウン・フライン氏は、日本にもたびたび訪れており、一昨年
には当時の安倍首相と会談し、ミャンマーの少数民族ロヒンギャの問題
をめぐって、意見を交わしました。
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 ところで軍の発表によると、同2月1日。

 ミャンマーの閣僚たち24人が解任され、11人の閣僚が新たに任命
されたとしています。

 11の閣僚ポストには、それまでアウン・サン・スー・チー氏が兼務して
いた外相も含まれており、スー・チー氏は事実上、解任されたことになり
ました。

 また、新しく任命された閣僚の少なくとも7人が、軍の関係者だとみら
れています。


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 一方、これに対してNLD(国民民主連盟)は、

 スー・チー氏が拘束される前に、あらかじめ用意したものだとする声明
を、同2月1日に発表しました。

 この中でスー・チー氏は、「人々の支持により選ばれた議会や政府が、
憲法を無視する軍によって破壊されてしまった」と、述べています。

 その上で、

 「軍事クーデターは国民が新型コロナウイルスの感染拡大に直面して
いるときに、この国を軍事独裁政権下に再び戻すものだ」として、

 「クーデターに反対する姿勢を力強く示すべきだ」と、国民に呼びかけ
ています。


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 さあ、大変なことになりました!

 この先、ミャンマーは一体どうなって行くのでしょう?

 そしてまた、世界の各国は、ミャンマーに対して、一体どのような対応
をして行くのでしょう?


 今後しばらくは、

 ミャンマーの動向について、目が離せない状況がつづきそうです。



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