医療崩壊の危機
                              2020年12月6日 寺岡克哉


 日本医師会の中川俊男・会長は、12月2日。

 新型コロナウイルスの感染拡大にたいして記者会見をひらき、

 「これ以上、感染者が急増すれば、新型コロナウイルスと、それ以外
の疾病(しっぺい)への医療提供の両立が不可能になる」

 「実際に、がんや心疾患、脳卒中の受け入れが難しくなってきた地域
も出ている」

 と述べて、医療崩壊の可能性が強まっているという認識を示しました。



 同・日本医師会の幹部によると、

 東京都や大阪府、そして北海道などで、患者の受け入れに支障が
出始めているといいます。



 また、中川・会長の記者会見によると、

 最近の「第3波」では、中高年の感染者の割合が多く、重症患者の
増加につながっているといいます。

 その上で、

 このまま感染者が増え続けた場合には、「国民の命を守ってきた
体制が崩れるし、すでに崩れ始めている地域もある」と、語っていま
す。



 さらに中川・会長は、医療従事者の心身の疲労がピークに達して
いることを踏まえ、

 「医療従事者が、最前線から離脱する恐れも現実化している」

 「重症患者に対応する医療従事者は、まったく足りていない」

 として、医療崩壊への危機感を募(つの)らせています。


            * * * * *


 ところで、

 上に挙げられた東京都、大阪府、そして北海道の中でも、

 とくに大阪府で、医療崩壊の危機が迫(せま)っています。



 そのため大阪府は、12月3日。

 緊急の対策本部会議を開いて、感染状況を判断する独自の基準
である「大阪モデル」に基づき、

 非常事態を示す「赤信号」を、初めて点灯させました。



 吉村洋文・大阪府知事は、対策本部会議で、

 「医療体制の逼迫(ひっぱく)は厳しい」

 「医療崩壊を防ぎ、命を守ることを第一に対策を取りたい」

 「そのため ”医療の非常事態宣言” を発令したい」

 と、訴えたといいます。



 ちなみに大阪府内では、

 10月10日ごろから、高齢者を中心に感染が「急拡大」しており、

 11月になると、新規感染者数が200人を超えた日が、20回にも
上りました。

 そして11月22日には、新規感染者数が過去最多である490人を
記録したのです。



 ところで、

 12月3日現在の「重症者数」は、過去最多の136人で、重症病床
(じゅうしょう・びょうしょう)使用率が、66.0%まで上昇しています。

 ただし、

 この使用率は、大阪府が確保済みとする206床を基に算出したもの
なのです。

 ところが実際には、

 重症病床の一部は、脳梗塞(のう・こうそく)など、新型コロナ以外の
患者にも使用されているため、

 新型コロナに運用できる病床数(12月3日現在)は、164床しかあり
ません。

 この164床を基にして、重症病床使用率を計算すると、82.9%に
まで跳ね上がるのです。



 さらに、翌日の12月4日になると、

 新型コロナに運用できる、実際の病床数で計算した重症病床使用率
が、

 84.8%にもなり、ものすごく逼迫(ひっぱく)した状況になっています。



 また高齢者施設では、クラスター(感染者集団)が多発しており、

 11月の死者数は78人に上り、大阪府では死者数も過去最多を更新
しているのです。


               * * * * *


 以上、ここまで見てきましたように、

 とくに大阪府で、新型コロナによる「医療崩壊の危機」が迫(せま)って
おり、


 まったく予断の許されない状況になっています!



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