ワクチンの効果は95%
                             2020年11月22日 寺岡克哉


 アメリカの製薬会社である「モデルナ」は、11月16日。

 開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて、「94.5%の有効
性がある」とする、暫定的な結果を発表しました。


 それによると、3万人を超える臨床試験の対象者のうち、新型コロナ
ウイルスによる感染症になったのは95人でした。


 このうち、ワクチンの接種を受けていたのは5人だったのに対し、

 「プラセボ(注1)」と呼ばれる偽薬の接種を受けていたのは、90人
だったということで、

 この結果からモデルナ社は、「ワクチンの有効性は94.5%だった」
としています。


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注1 プラセボ(偽薬):

 プラセボとは、有効成分を含まない(治療効果のない)薬のことです。

 たとえば有効成分がまったく入っていない薬を飲んでも、「良く効く薬
を飲んだ!」と思うだけで心理的作用が働き、効果を表してしまうことが
あります。

 これを「プラセボ効果」と言います。つまりプラセボ効果とは、「病は気
から」という、昔から良く知られていた現象のことです。


 まったく効果のない薬(プラセボ)と比較することは、治験薬(や開発中
のワクチン)の有効性を、科学的に明らかにするために必要です。

 というのは、何を飲んでいるのか分かってしまうと、心理的なものが
影響して、正確なデータを取ることが難しくなるからです。

 そのため、プラセボ(偽薬)を用いた治験をする時は、薬の成分を含ん
だ治験薬と、成分を含んでないプラセボは、外見上まったく見分けが
つかないようになっています。

 また、誰が薬の成分を含んだ治験薬を飲んでいるのか、あるいは
誰がプラセボを飲んでいるのかは、治験に参加している患者も、担当
している医師も、薬剤師も、看護師も、分からないようになっています。
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 ところでモデルナ社は、

 新型コロナウイルスの感染症になったのが95人で、このうち、

 ワクチンの接種を受けていたのは、5人だったのに対し、

 プラセボ(偽薬)の接種を受けていたのが、90人だったことから、

 ワクチンの有効性は94.5%だとしています。



 しかしながら、その有効性を求めた「計算方法」が、私が見た報道
では説明されていなかったので、

 私は、おそらく次のようではないかと考えました。


 つまり、

 ワクチンが接種されなかったプラセボの場合、90人が感染症に
なってしまったのに、

 ワクチンの接種によって、それが5人に抑えられたことから、85人
がワクチンの効果によって感染症にならずに済んだと考えられます。


 なので、

 90人のうち85人が、ワクチンによって助かったことになり、

 (85÷90)×100=94.44 となることから、ワクチンの有効性
を94.5% と、したのだと思います。


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 ところで一方、

 アメリカの大手製薬会社であるファイザーは、11月18日。


 開発中の新型コロナウイルスワクチンについて、最終段階の臨床
試験で、「参加者の95%に予防効果が確認された」と発表しました。

 およそ4万3500人が参加した臨床試験で、170人の感染が確認
されたといいます。

 この170人のうち、8人がワクチンを接種した人で、残りの162人
はプラセボ(偽薬)を接種された人たちでした。



 これも、上と同じような計算をしてみると、

 ワクチンを接種しなければ162人が感染したところを、ワクチンの
接種によって8人に抑えられたことから、

 162-8=154人が、ワクチンの接種によって助かったことになり
ます。

 なので、162人のうち154人が助かったのだから、(154÷162)
×100=95.06 となり、

 ワクチンの有効性を95%だとしたのでしょう。


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 ところで、ワクチンの「副作用」についてですが、


 モデルナ社は、ワクチンの接種を受けた人に重大な安全上の懸念
は報告されていないとしています。

 しかしながら、2度目の接種後(このワクチンは2回の接種が必要)
において、

 9.7%の人にけん怠感、8.9%の人に筋肉の痛み、5.2%の人
に関節痛、4.5%の人に頭痛がみられたなどとしています。



 一方、ファイザー社は、

 「ワクチンの深刻な副作用は無かった」と、しています。


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 さて、これらのワクチンが、いつごろ世間に出回るかですが、


 モデルナ社は、

 年内にアメリカ国内向けにおよそ2000万回分を出荷できるとして
いるほか、来年には全世界に向けて5億回から10億回分を生産でき
るとしています。

 また、

 日本政府も2500万人分のワクチンの供給を受ける契約で、この
うち2000万人分が来年の1月~6月までに供給されることになって
います。



 一方、ファイザー社は、

 年内に最大で5000万回分、来年に13億回分を生産する見通し
です。

 また、

 日本政府も来年の1月~6月までに、1億2000万回分の供給を
受けることで合意しています。



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 以上、ここまで見てきましたが、

 モデルナ社のワクチンも、ファイザー社のワクチンも、

 「ほぼ95%の有効性がある」と、言うことができるでしょう。



 また、両社のワクチンともに、

 「深刻な副作用は無い」と判断して、まず間違いなさそうです。



 そして日本にも、

 来年の6月までには、かなりの回数分のワクチンが供給されそうです。


 なので、あと7ヵ月ぐらい辛抱(しんぼう)すれば、

 新型コロナウイルスの脅威が、ずいぶん軽減されるのではないかと、

 私は大いに期待している次第です。



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