米大統領選・両候補の政策
2020年11月1日 寺岡克哉
今回は、
アメリカ大統領選挙のバイデン候補とトランプ候補が、それぞれどんな
政策を主張しているのか、
とくに日本と関係が深い部分や、私が興味を持っている部分について、
確認しておきたいと思います。
* * * * *
日米安全保障・在日米軍について
バイデン候補
●アジア太平洋地域において、対中政策に重きを置く。
●とくに日本、そしてオーストラリアや韓国との同盟関係を、さらに深めて
いく。
トランプ候補
●日米安全保障条約は不公平であり、防衛費の負担増を求める。
●去年のG20で、「日本が攻撃されたらアメリカは日本のために戦わない
といけないが、アメリカが攻撃されても日本は戦わない」と、不満をにじま
せた。
●アメリカ軍の駐留経費については、大幅な引き上げを求めるとみられる。
* * * * *
対中国について
バイデン候補
●中国をアメリカにとっての「特別な問題」だとした上で、「厳しく対応しなけ
ればならない」とする。
●中国政府による知的財産権の侵害や不公正な貿易慣習などから、アメ
リカの労働者を守るために、厳しい姿勢をとる。
●人権問題を厳格に追及する。香港の問題で市民の民主的な権利を支持
し、香港の自治を脅かす中国政府の当局者に制裁を科す方針。また、多く
のウイグル族が不当に拘束されているとして、問題の解決に向けて国際
社会の結束を図る。
●トランプ政権が行った、関税引き上げにより圧力を加える手法を批判し、
気候変動や核拡散の問題では中国との協力の道を探る方針。
●世界貿易のルールづくりで中国が主導権を握ることを阻止するため、関係
国と結束していく必要性を強調。しかしながら、オバマ前政権が貿易面で
の中国との対抗も視野に推し進めたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)
についての方針は示していない。
●不当な価格の引き下げや為替操作などに対しては、断固とした措置をとる。
同盟国と協力して、ルールの順守を迫り、従わない場合には責任を負わせ
る。ただし、他国に高い関税をかけるトランプ大統領の手法については批判
的。
●中国の不公正な貿易への対抗を念頭に、人工知能や再生可能エネルギー
などの先端技術の研究開発に3000億ドル(日本円で31兆5000億円)を
投資する。
●アメリカ製品の購入を推奨。とくに医療関連など重要な物品の生産は、中国
に依存しないよう、サプライチェーン(供給網)をアメリカに戻す方針。
トランプ候補
●中国を「大国間競争」の競合国と位置づけ、政治、経済、軍事のあらゆる
分野でのアメリカの優位確保を掲げて激しく対立。
●中国がサイバー攻撃やスパイ活動でアメリカの技術を盗み、中国に進出
するアメリカ企業にも技術の移転を強要しているとして、中国に追加関税を
かけて是正を強く迫(せま)る。
●中国が力を入れる次世代通信規格5Gの発展を強く警戒し、中国の通信
大手ファーウェイなどを欧米各国から締め出す。
●中国の海洋進出に対する圧力を強化し、他国の領有権争いには踏み込ま
ないという、これまでの外交方針を事実上転換し、南シナ海をめぐる中国の
主張を明確に否定して対立姿勢を鮮明。
●新型コロナウイルスの感染拡大の原因は、中国による隠蔽や対策の遅れ
にあったと主張し、中国の責任を厳しく追及する。
●アメリカ第一主義を掲(かか)げ、保護主義的な貿易政策を推し進める。
中国からの鉄鋼製品などの輸入品に、高い追加関税をかける手法で、
貿易交渉を優位に進める方針。
●新型コロナウイルスの感染拡大にあたり、マスクなどの医療品を中国から
の輸入に頼る現状が問題だとして、製造拠点そのものをアメリカに戻すこと
を訴える。
* * * * *
対北朝鮮について
バイデン候補
●非核化に向けて北朝鮮と交渉を進める必要性は認めるものの、キム委員
長との首脳会談は、アメリカ政府が独裁者を正当化することにつながると
批判。
●北朝鮮とは同盟国や中国と協力して協議を進める。
トランプ候補
●トランプ大統領は北朝鮮のキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長との史上初
の米朝首脳会談に踏み切り、トップどうしの直接交渉で非核化を迫る。
●しかし2019年2月の会談でビッグディールを迫るトランプ大統領に対し、
キム委員長が制裁の解除を主張して事実上、物別れとなり、2019年5月
の3回目の会談を最後に、交渉は行き詰まっている。
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対ロシアについて
バイデン候補
●プーチン大統領のロシアは、NATO(北大西洋条約機構)やEU(ヨーロッパ
連合)の加盟国間の関係を悪化させ、西洋諸国の民主主義の基礎を破壊し
ていると主張し、対立姿勢を鮮明。
●ロシアはアメリカの選挙に不正に干渉していると主張し、警戒感を強める。
トランプ候補
●ロシアのプーチン大統領を評価し、良好な関係を築くと主張して、協力姿勢
を見せる。
●しかし、いわゆるロシア疑惑で批判にさらされ、政権内部や国内でもロシア
への批判や反発が強く、両国関係は冷戦終結後、最悪になっている。
●米ロの核軍縮の柱の1つとなってきたINF(中距離核ミサイルの全廃条約)
を破棄。2021年に期限を迎える核軍縮条約「新START」についても、中国
の参加が必要だとして延長の見通しが立たず。
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環境問題について
バイデン候補
●「パリ協定」にとどまり、大統領になったら、就任後直ちに離脱を撤回する
と表明。
●気候変動対策を経済再生の一環に位置づけた「バイデン計画」を打ち出し、
2050年までに温室効果ガスの排出ゼロを目指すほか、気候変動に強い
インフラの整備などを進める方針。そのために、4年間で2兆ドル(日本円で
約210兆円)を投入する。また、発電所からの二酸化炭素の排出量を20
35年までにゼロを目指す。
●自動車産業にたいしては、税制の優遇や、50万ヵ所の充電スタンド設置
などにより、電気自動車の生産・購入を後押しするほか、100万人の新規
雇用を創出する。
トランプ候補
●地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」からの離脱を表明。
●就任以来、毎年、環境科学や生命科学などの研究予算の大幅な削減
を打ちだし、環境保護局で研究者のポストも大幅に削減。さらには、温室
効果ガスの排出規制を緩和した。
●連邦政府による環境アセスメントのプロセスには時間とコストがかかり、
負担が大きいとして見直すことを発表。手続きをより簡素化し、迅速にイン
フラ建設などに着手できるようにすることで雇用を増やす。
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以上、ここまで見てきましたが、
とくに地球温暖化対策で、「パリ協定」から離脱しようとするトランプ候補は、
日本だけでなく、「世界にとって最悪のアメリカ大統領」だと言えるでしょう。
ちなみに、
このエッセイを書いている時点では、まだ大統領選挙が行われていませ
んが、
ぜひともバイデン候補が当選してほしいと、私は願ってやみません。
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