安倍政権を振り返って 1
                               2020年9月6日 寺岡克哉


 8月28日。

 安倍首相が、病気のため辞任する意思を表明しました。



 ちなみに、

 第2次安倍内閣が発足(ほっそく)したのは、2012年12月26日
ですから、

 それ以来、安倍政権は、ずいぶん長く続いてきたことになります。



 その長い間には、いろいろなことがありましたが、

 安倍政権が、注目するべきことを決定したり、行ったときには、

 そのたびに本サイトでも、幾度(いくど)となく取り上げてきました。



 それで今回から、

 安倍政権について、すこし振り返ってみたいと思いました。


            * * * * *


 まず、

 安倍政権の「経済政策」について、振り返ってみましょう。



 これについては、安倍首相が2回目の就任(第2次内閣の発足)
をする直前に、

 「大胆な金融緩和を無制限で行うために、日本銀行の輪転機
をぐるぐる回してお金を刷らせる」


 と、語ったとされています。



 当時の私は、この発言にすごく驚きました。

 なぜなら、輪転機をぐるぐる回して大量にお金を刷ったら、

 お金の価値がどんどん下がって「ただの紙切れ」になり、物価が
どんどん上昇するからです。



 たしかに、

 お金が「ただの紙切れ」になるというのは、すこし大げさかもしれ
ません。

 しかしながら、

 お金を刷る量の「さじ加減」をちょっと間違えただけで、

 想定外に大きな物価上昇が起こってしまう恐れも、まったく無い
とは限らないのです。



 それで、その後、私は心配して成り行きを見ていました。

 が、しかし、どうやら経済が破綻してしまうほどの物価上昇は、

 起こらないで済んだようです。


            * * * * *


 さて、

 安倍首相が就任すると、円の価値が下がって行きました。

 就任した2012年では、1ドル80円という円高でしたが、

 2015年には、1ドル120円ぐらいまで円安が進みました。

 それだけ、円の価値が下がったことになります。



 そして、それに連れて日経平均株価が上昇して行きました。

 2012年では、日経平均株価が9500円ぐらいだったのに、

 2015年には、日経平均株価が20000円台まで上昇したの
です。



 この点を見る限り、その時までは、

 安倍政権による経済政策が、成功しているように思えます。


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 ところが、

 2016年のアメリカ大統領選挙で、トランプ大統領が誕生すると、

 1ドル100円ぐらいまで円高が進み、その後、現在は105円ぐら
いで推移しています。



 これは恐らく、

 トランプ大統領が、安倍政権の円安政策をつよく批判し、

 日本に対して圧力をかけたのだと思われます。



 安倍首相は、

 「日本銀行の輪転機をぐるぐる回してお金を刷らせる」と、言って
いたのですが、

 それにブレーキをかけたのは、皮肉にもトランプ大統領という形
になったのでしょう。


            * * * * *


 ところで、安倍政権による経済政策で、

 日本国民の生活は、ほんとうに豊かになったのでしょうか?



 これについて私は、とても大きな疑問を感じています。

 なぜなら、たとえ手取りの賃金が多少増えたとしても、

 物価が上がってしまっては、生活が豊かになる訳がないから
です。



 この物価上昇を考慮した賃金の指標として、「実質賃金」と
いうのがあります。

 その実質賃金の推移を調べてみると、

 なんと2008年に起こったリーマンショックのときと比べても、

 現在の実質賃金は上がっていないのです。



 これでは、

 安倍政権の経済政策によって、国民の暮らしが豊かになった
とは、決して言えないでしょう。

 なので、

 多くの日本国民が、生活の豊かさを感じられないというのも、
まったく当然なのです。



 そしてまた、

 昨今では「子供の貧困」という問題が深刻になっていますが、

 「子供の貧困」というのは、じつは言葉のまやかしで、

 子供を育てている親たちが貧困に陥(おちい)り、子供に手が
回らなくなっているというのが、本当のところでしょう。


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 以上、ここまで見てきましたが、

 円安が進んで大企業の利益が増加し、株高によって資産家の
資産が増えたものの、

 非正規やパートの増加、実質賃金の低下、子供の貧困(じつは
親の貧困)などによって、

 多くの一般国民が、生活の豊かさを実感できなくなった・・・ 


 それが、

 安倍政権による経済政策の実態だったのではないかと、私には
思えてならない次第です。



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