40年間における台風の傾向
2020年8月30日 寺岡克哉
気象庁・気象研究所は、8月25日。
過去40年間における台風の観測データを分析し、その結果に
ついて発表しました。
そして、以下の3つの傾向が明らかになったとしています。
(1)東京など太平洋側の地域に接近する台風の数が増えている。
(2)強い台風に着目しても、接近の頻度が増えている。
(3)台風の移動速度が遅くなっている。
以下、これらについて、もうすこし詳しく見ていきたいと思います。
* * * * *
まず(1)についてですが、
過去40年間で、たとえば東京に接近した台風の数は、明かに
増加しました。
期間の前半(1980年~1999年)では、毎年平均1.55個の
台風が東京に接近していたのに対し、
期間の後半(2000年~2019年)では、毎年平均2.35個の
台風が接近していました。
このように、
東京への接近数は、およそ1.5倍(2.35÷1.55=1.52)
にも増加しているのです。
この理由について、
一般的に台風は、太平洋高気圧の縁(へり)に沿って移動する
のですが、
期間の前半(1980年~1999年)では、太平洋高気圧の張り出し
があまり強くないため、台風は日本の南の海上を通過していました。
ところが、
期間の後半(2000年~2019年)では、太平洋高気圧が西および
北へ張り出すようになり、
そのため台風が、より日本の太平洋側の陸地に近いところを通る
ようになったと考えられます。
* * * * *
つぎに(2)についてですが、
たとえば中心気圧が980ヘクトパスカルよりも低く、けっこう強い
勢力で東京に接近した台風の数は、
期間の前半(1980年~1999年)に比べて、期間の後半(2000年
~2019年)では、2.5倍にも増加しています。
この理由について、
期間の前半(1980年~1999年)に比べて、期間の後半(2000年
~2019年)では、
「海水の温度が高い」とか、「大気の湿度が高い」など、台風の発達
に都合の良い条件が整っていたと分かりました。
そのため、
強い勢力を保ったまま、東京まで接近してくる台風が増えたのだと
考えられます。
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そして(3)についてですが、
980ヘクトパスカルよりも低い中心気圧で、東京に接近した台風
について、
期間の前半(1980年~1999年)では、移動速度が平均で
時速48.1キロメートルだったのに対し、
期間の前半(1980年~1999年)では、平均で時速30.6キロ
メートルになっており、
台風の移動速度が、明かに遅くなっています。
この理由について、
「偏西風(へんせいふう)」が、日本の上空で弱まっており、
それに従(したが)って、台風を移動させる力が弱くなり、
台風の移動速度が遅くなったと考えられています。
ところで、台風の移動速度が遅くなると、
台風が通過する地域では、その影響を受ける時間が長くなり、
それだけ被害も大きくなる可能性があります。
* * * * *
以上、ここまで見てきましたが、
このたび示された「台風の変化傾向」にたいし、その原因を分析
していく上では、
やはり、「地球温暖化」との関連を考えていく必要があります。
しかしながら、
「太平洋十年規模振動」と呼ばれる「気候の内部変動」が、このたび
示された「台風の変化傾向」と関連している可能性があることから、
地球温暖化の影響に加えて、気候の内部変動にも注目して解析
を行わなければなりません。
つまり、
「地球温暖化」の影響と、「気候の内部変動」の影響を、分離して
解析することが必要なのです。
そのため、気象庁・気象研究所では、
コンピューターシミュレーションの結果などを用いて、今後の解析
を進めていく予定です。
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