モーリシャス沖の座礁事故
2020年8月23日 寺岡克哉
今から1ヵ月ほど前の、7月25日。
インド洋にある島国モーリシャス(注1)の沖で、日本の大型貨物船が
座礁して燃料が漏れ出しました。
この座礁事故は、貨物船を所有している長鋪(ながしき)汽船(注2)
の広報担当者が、8月7日に明らかにしましたが、
座礁した貨物船の運航は、商船三井(注3)が担っていたといいます。
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注1 モーリシャス:
正式には「モーリシャス共和国」といい、イギリス連邦加盟国の1つで、
首都はポートルイス。インド洋のマスカレン諸島に位置するアフリカの
島国で、人口はおよそ127万人。
注2 長鋪汽船:
岡山県の笠岡市に本社を置き、日本のコンテナ船の運行などを行って
いる海運会社。
注3 商船三井:
東京都の港区に本店を置く、日本の大手海運会社。
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ところで、座礁した貨物船の付近には、サンゴ礁が広がっており、
島の沿岸部には、国際的に重要な湿地を保全する「ラムサール条約」
に指定された地区もあります。
現地からの報道によると、モーリシャスの環境省は8月6日。
サンゴ礁などが被害を受ける恐れがあるとして、「危機的な状況だ」と
いう声明を発表しました。
その後、
貨物船の燃料である重油が、およそ1000トンも流出したとみられ、
現場周辺のマングローブ林にも重油が漂着するなど、被害は広範囲
に及んでいます。
生態系の保全に詳しい、JICA(国際協力機構)の阪口法明・国際
協力専門員は、
「(マングローブの呼吸根などに)油が付着すると、酸素呼吸ができ
なくなり、死んでしまう可能性もある」と話していて、
生態系への影響を早急に調査し、回復に向けた計画を作る必要が
あると訴えています。
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ところで!
このたびの座礁事故には、大きな疑問点が2つあります。
まず、1つ目の疑問点は、
貨物船が座礁したのは7月25日でしたが、重油の流出が確認された
のは、それから10日以上たってからでした。
それまでの間に、なぜ重油の流出を防げなかったのでしょうか?
このことについて、商船三井が行った記者会見によると、
貨物船が、中国からシンガポールを経由してブラジルに向かう途中、
モーリシャスの沖合で座礁したのは7月25日でした。
そして翌日の7月26日に、地元で観光業を営む男性がドローンで撮影
した映像には、浅瀬に乗り上げて、まだ船体のきれいな貨物船が映って
いました。
ところが、座礁してから12日後の8月6日に撮影された「衛星画像」に
より、貨物船から重油が流出して、周辺の海域一帯が黒くなっているの
が分かったのです。
商船三井によると、船体に亀裂が生じて、燃料の流出が確認された
のは、この日だったと言うことです。
そして、2つ目の疑問点は、
なぜ、座礁するほどの浅瀬まで、貨物船が島に向かって接近したので
しょうか?
これについては、現地のメディアによると、
貨物船の乗組員たちが、モーリシャス捜査当局の調べにたいして、
「Wi-Fi(注4)に接続するため、島に近付いた」と、話しているなどと
伝えています。
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注4 Wi-Fi(ワイファイ):
無線によってデータの送受信をするシステムを、無線LANと
いいますが、
Wi-Fiというのは、その無線LANに関する登録商標の1つです。
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モーリシャスの地元警察は、8月18日。
座礁した貨物船のインド人船長を、「安全な航行を怠(おこた)った」
という疑いで逮捕しました。
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まったく何ということでしょう!
Wi-Fi に接続したいがために島に近づき、こんな大事故を起こし
てしまうとは!
ほんとうに、開いた口が塞(ふさ)がりません。
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