ワクチン開発の最新状況
                              2020年7月26日 寺岡克哉


 いま現在、

 新型コロナウイルスの「ワクチン開発」が、前代未聞のスピードで進め
られています。


 WHO(世界保健機関)の調べによると、

 7月14日の時点で、ワクチンの開発品はおよそ160品目にも上って
います。


 そのうち、

 7月末までに、ヒトへの投与を行う「臨床試験」が始まる開発品は、
26品目。


 さらに、

 最終段階の大規模臨床試験である「臨床第Ⅲ相試験(注1)」
至る開発品は、

 5品目になっているのです。


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注1:
 一般的に、薬やワクチンの開発は、以下のステップを経て行われ
ます。


ステップ1 新規物質の探索・創製。
 薬になりそうな新しい物質を探したり、作り出したりすること。

ステップ2 物理的化学的研究。
 新規物質の構造や物理的・化学的な性状などを調べること。

ステップ3 薬効薬理研究。
 どのような効果があるか、どのようなメカニズムで効果を現すのかなど
を調べること。

ステップ4 薬物動態研究。
 どのように体内に吸収され、臓器などに分布し、代謝されて排泄され
るかなどを調べること。

ステップ5 一般薬理研究。
 どのような部位にどんな作用を及ぼすかなど、薬効薬理作用以外の
安全性に関する作用を調べること。

ステップ6.1 一般毒性研究。
 投与期間を短・中・長期などに分けて、毒性(安全性)を広く調べること。

ステップ6.2 特殊毒性研究。
 発がん性や胎児への影響がないかなど、特別な毒性(安全性)を調べ
ること。

ステップ7 臨床第Ⅰ相試験(臨床薬理試験)。
 少数の健康成人などについて、主に安全性や薬物動態などを調べる
試験。

ステップ8 臨床第Ⅱ相試験(探索的試験)。
 比較的少数の患者さんについて、有効性と安全性などを調べる試験。

ステップ9 臨床第Ⅲ相試験(検証的試験)。
 多数の患者さんについて、標準的な「くすり」などと比較して有効性と
安全性を確認する試験。

ステップ10 製造販売後調査。
 製造販売後に、多くの患者さんに使用されたときの安全性や有効性
などの情報を集め、それを分析・ 評価して医療関係者などに伝えること。
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 このように、

 新型コロナウイルスのワクチンは、およそ10段階ものステップを
経て、やっと完成するのです。



 ちなみに、

 新型コロナウイルスの感染拡大が、世界的に知られるようになった
のは、今年の1月ごろですが、

 それから、およそ半年が経った現在において、

 5品目のワクチンが、「製造販売直前」の段階までワクチン開発が
進んでいるというのは、

 やはり、驚異的なスピードで開発が進められていると言ってよいで
しょう。



 実は・・・  これまで私は、

 「ワクチンの開発が、めちゃくちゃ遅い!」

 「いったい何をやっているのだ!」

 「先進諸国が、国家規模の資金と設備と人材を投入すれば、
新型コロナのワクチンなど、すぐに完成できるはずだ!」

 と、そのように思っていました。



 しかしながら、このたび少し調べてみて、

 ワクチンの開発というのは、とても大変なことであり、

 完成するまでに、かなりの時間が必要になってしまうのは、どうして
も仕方のないことなのだ

 と、分かった次第です。



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