アメリカで大規模なデモ
2020年6月7日 寺岡克哉
いま現在、アメリカでは、
新型コロナウイルスの流行によって、11万人を超える死者が出ています。
しかも、さらに、
そのような状況の中、「大規模なデモ」がアメリカの各地で起こっている
のです。
* * * * *
デモが起こった切っ掛け(きっかけ)は、
アフリカ系アメリカ人(つまり黒人)の男性が、警察官の暴行によって
死亡したことです。
5月25日。
ミネソタ州のミネアポリスで、たばこを買おうとしたジョージ・フロイドさん
(46歳)が、
20ドル紙幣の「偽札」を使ったとして、4人の警官に拘束されました。
フロイドさんは、地面にうつぶせにされ、4人のうち1人の白人警官に、
膝で首を押さえつけられました。
「息ができない!」と、フロイドさんは訴えましたが、拘束は解かれず、
やがて動かなくなりました。
首が押さえられていた時間は8分46秒にも上り、後にフロイドさんの
死亡が確認されたのです。
それらの一部始終は、周囲の目撃者たちによって撮影されており、
日本でも多くの人々が、テレビやインターネットの動画で、それを見た
ことだろうと思います。
私も、テレビの映像で何度か見ましたが、
すでに動けなくなっているフロイドさんの首を、死ぬまで押さえつける
なんて、
「警官による殺人だ!」と判断されても、まったく不思議ではないように
思いました。
* * * * *
さて、
白人警官の暴行による、黒人(フロイドさん)死亡事件への「抗議デモ」
は、5月31日までに、アメリカ全土に大きく広がりました。
アメリカのメディアによると、「抗議デモ」は少なくとも140の都市におよび、
首都のワシントンや、サンフランシスコなど、40を超える都市で「夜間外出
禁止令」が出されました。
こんなに多くの都市で「外出禁止令」が出されたのは、およそ50年ぶりだ
といいます。
また、
アメリカの各地で放火や略奪が相次ぎ、15の州で「州兵」が動員されて、
合計でおよそ4100人が逮捕されました。
6月2日になると、
29の州と、首都ワシントンで、合計およそ1万8000人の州兵が動員
されて、「厳戒態勢」が敷かれました。
さらには、6月4日までに、
アメリカ全土で12人が死亡し、およそ1万人が逮捕される事態になって
います。
フロイドさんの死亡事件から11日が経った、6月5日の時点においても、
アメリカの各地で「抗議デモ」が続いており、収束する見通しが立ってい
ない状況です。
* * * * *
以上、ここまで見てきましたが、
いま現在のアメリカは、新型コロナウイルスの流行に加えて、アメリカの
各地で「抗議デモ」が広がっており、
「ものすごく大変な状況」になっています。
ところで、このように「抗議デモ」が広がった理由は、
新型コロナウイルスの流行による、外出規制のストレスや、失業者増加
の社会不安に加えて、
アメリカに根深く存在している「人種差別問題」が、その根底にありますが、
さらには、トランプ大統領の「人種差別的な言動」が、それに拍車(はく
しゃ)をかけたのだと考えられます。
というのは、たとえば、
トランプ政権の発足(ほっそく)当時から、2年近く大統領を支えたマティス
前国防長官が、
「ドナルド・トランプは、アメリカ国民をまとめようとしない」
「そして、そのふりすらしない私の人生で初めての大統領だ」
「彼(トランプ大統領)は、私たちを分断しようとしている」
「私たちは、成熟した指導者がいない3年間の結果を、目の当たりにして
いる」
として、トランプ大統領を名指しで厳しく批判しているからです。
ちなみに、マティス前国防長官は、
2年前に辞任して以降、公(おおやけ)の場でトランプ大統領を直接的に
批判したことはありませんでした。
それのためアメリカのメディアは、「異例の批判」として大きく伝えている
のです。
やはり、このたびの「抗議デモ」の拡大は、
これまで度々(たびたび)行われてきた、トランプ大統領の「人種差別的
な言動」によるところが、
かなり大きいのではないかと思えてなりません。
目次へ トップページへ