日本では98%以上が無症状か?
2020年5月10日 寺岡克哉
最初に、前回の補足ですが、
5月2日。 ニューヨーク州は、住民1万5000人まで対象を増やした、
新型コロナウイルスにたいする抗体検査の結果を発表しました。
それによると、
ニューヨーク州全体で12.3%の人が陽性となり、新型コロナウイルス
に感染した経験をもつことが分かりました。
(前回の7500人を対象にした検査結果は、陽性が14.9%だったので、
それより2.6ポイント低下したことになります。)
ところで、ニューヨーク州の人口は1950万人ですから、
1950×0.123=240万人が、5月2日までに感染していたと推定
できます。
一方、ニューヨーク州全体では、
PCR検査によって、5月2日までに31万3000人の感染者が確認
されています。
ここで、
感染が確認された31万3000人は、新型コロナウイルスの症状が
出たために病院へ行き、PCR検査を受けたのだとします。
そして一方、
抗体検査による推定で、新型コロナウイルスに感染したと思われる
240万人は、無症状だったか、ごく軽い症状だったために、病院へ
行かなかったとします。
そうすると、{240÷(240+31.3)}×100=88.5% となり、
ニューヨーク州全体において、新型コロナウイルスに感染したと思わ
れる人の、およそ9割が、
無症状か、ごく軽い症状だったのではないかと推察できます。
* * * * *
さて今回は、
日本における、新型コロナウイルスの抗体検査について、見て行きた
いと思います。
すこし以前になりますが、4月30日。
感染症に詳しい久住英二医師が、東京都内で新型コロナウイルスの
抗体検査をしたところ、
一般市民147人のうち、その4.8%にあたる7人が陽性(抗体あり)
となり、新型コロナウイルスに感染した経験をもつことが分かりました。
この抗体検査は、ホームページで東京都内の希望者を募(つの)り、
久住医師が理事長を務める新宿区と立川市のクリニックで、4月21日
~28日に実施されたといいます。
ここで、
東京都の人口は、1395万1791人(2020年3月1日現在)と、なって
いますから、
その4.8%だと、66万9700人ぐらいが、すでに4月28日までに、
新型コロナウイルスに感染していたと推定できます。
一方、
東京都の発表によると、4月28日までに、PCR検査によって新型コロナ
ウイルスの感染が判明したのは、4059人となっています。
ここでまた、上のニューヨークの例と同じように、
感染が確認された4059人は、新型コロナウイルスの症状が出たため
に病院へ行き、PCR検査を受けたのだとします。
そして一方、
抗体検査による推定で、新型コロナウイルスに感染したと思われる
66万9700人は、無症状だったか、ごく軽い症状だったために、病院へ
行かなかったとします(注1)。
そうすると、{669700÷(669700+4059)}×100=99.4% となり、
東京都の全体において、新型コロナウイルスに感染したと思われる人の、
99.4%が、
無症状か、ごく軽い症状だったのではないかと推察できます。
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注1:
たしかに、高熱や咳など、かなりの症状が出ていたのに、PCR検査を受け
させてもらえなかった人も、居たのではないかと思います。
しかしながら、推定感染者66万9700人のうち大部分は、無症状か、ちょっ
とした風邪の症状で済んでしまい、
新型コロナウイルスに感染したとは気がつかずに、自然に治ってしまったの
ではないかと、私は考えています。
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また、5月1日。
大阪市立大の研究チームは、4月中に市立大病院を受診した外来患者
のうち、312人の血液を調べたところ、
3人から、過去に新型コロナウイルスに感染したことを示す「抗体」が検出
されたと発表しました。
研究チームの城戸康年・准教授(熱帯医学)は、
「今回の結果は、大阪市内の流行状況を反映していると考えられる」
「大阪市民の1~2%程度は、抗体を持っているのではないか」
と、指摘しています。
ここで、
大阪市の人口は、274万6983人(2020年4月1日現在)となっていま
すから、
仮に1~2%の中央の値として、大阪市民の1.5%が抗体をもっていた
とすると、
4万1200人ぐらいが、すでに4月30日までに、新型コロナウイルスに
感染していたと推定できます。
一方、
大阪市の発表によると、4月30日までに、PCR検査によって新型コロナ
ウイルスの感染が判明したのは、691人となっています。
これらから、上と同じような計算をすると、
{41200÷(41200+691)}×100=98.4% となり、
大阪市の全体において、新型コロナウイルスに感染したと思われる人の、
98.4%が、
無症状か、ごく軽い症状だったのではないかと推察できます。
* * * * *
さらに、5月2日。
神戸市立医療センター中央市民病院が、3月31日~4月7日までの
8日間に、
新型コロナウイルスと関係のない症状で外来を受診した、患者1000人
の血液を調べたところ、
過去に感染したことを示す「抗体」が、33人から検出されたと発表しま
した。
単純に計算すると、(33÷1000)×100=3.3% と、なりますが、
性別や年代の偏りを修正すると、抗体を持つ人の割合は2.7%になる
そうです。
ここで、
神戸市の人口は、151万8870人(2020年4月1日現在)となっていま
すから、
その2.7%だと、4万1000人ぐらいが、すでに4月7日までに、新型コロ
ナウイルスに感染していたと推定できます。
一方、
神戸市の発表によると、4月7日までに、PCR検査によって新型コロナ
ウイルスの感染が判明したのは、68人となっています。
これらから、上と同じような計算をすると、
{41000÷(41000+68)}×100=99.8% となり、
神戸市の全体において、新型コロナウイルスに感染したと思われる人の
99.8%が、
無症状か、ごく軽い症状だったのではないかと推察できます。
* * * * *
以上を、まとめますと
新型コロナウイルスに感染したと思われる人のうち、
東京都では99.4%、大阪市では98.4%、神戸市では99.8%が、
無症状か、ごく軽い症状で治ってしまったのではないかと推察でき
ます。
なので、
圧倒的な大多数(日本人の98%として1億2300万人ぐらい)の
人々にとっては、
新型コロナウイルスを、そんなに恐れる必要がないでしょう。
が、しかし、
高齢者や、基礎疾患を持っていたり、抗がん剤を使っている人々に
とっては、やはり「恐ろしいウイルス」であることに変わりがありません。
そしてまた、「医療崩壊」を引き起こすことも、絶対に避けなければ
なりません。
なので、やはり、
不必要な外出を制限して3密(密閉・密集・密接)を避け、
マスク、手洗い、うがいを心がけて感染拡大を阻止することは、
絶対に必要なのです。
ところで最後に、
ウイルス感染の全体像を、しっかりと把握(はあく)するためには、
抗体検査を行った地域も、検査した人数も、まったく不足しており、
日本全国において、抗体検査を大々的にやらなければならないのは、
言うまでもありません。
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