感染者の9割が無症状か?
                                2020年5月3日 寺岡克哉


 新型コロナウイルスに感染した人のうち、なんと9割もの人々が、

 「無症状」か、「ごく軽い症状」で済んでいるのではないか?

 と、思えるような調査結果が、アメリカから出ています。


 今回は、そのことについて報告したいと思います


           * * * * *


 まず、事(こと)の発端(ほったん)は、

 アメリカ・ニューヨーク市の、コロンビア大学メディカルセンターによる
調査結果です。

 このメディカルセンターでは、出産のため入院する女性たちに対して、

 症状の有無にかかわらず、全員に新型コロナウイルスの検査を行っ
ていました。



 このたびの調査は、2020年3月22日~4月4日までの、

 同メディカルセンターで出産した215人の女性にたいして行われま
したが、

 その結果、

 215人のうち33人が陽性だったのですが、その中で症状があった
のは4人だけで、残りの29人が「無症状」だったのです。

 つまり、(29÷33)×100=87.9 なので、

 新型コロナウイルスに感染した人のうち、およそ88%が「無症状」
だったわけです。




 しかしながら、

 陽性で無症状だった人のうち、退院する日(平均で2日後)までに
症状(発熱)が出てしまった人が3人いました。

 また、

 陽性で無症状だった人のうち、退院までに症状がでなかった26人
についての、退院後の状態については、調査結果に含まれていま
せん。

 なので、退院後に症状が出た人も、いるかも知れません。



 しかし、それでも、「入院中」に話を限れば、

 (26÷33)×100=78.8となり、

 新型コロナウイルスに感染しても、およそ79%の人が無症状だった
ことが分かります。



 ところで、この調査結果には、これとは別に「重大な意味」がありま
した。

 つまり、

 215人を検査して、33人が陽性だったのだから、

 (33÷215)×100=15.3となり、

 およそ15%の人が、新型コロナウイルスに感染していたわけです。



 もしも、これが、

 ニューヨーク市における感染の全体像を示しているならば、

 ニューヨーク市の人口は840万人なので、

 840×0.153=128.5となり、

 ニューヨーク市だけで、およそ130万人もの感染者がいることになる
のです。


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 しかしながら上の調査は、たった215人にたいして行ったものなので、

 この結果を、ニューヨーク市全体に当てはめて考えるには、検査人数
が少なすぎます。

 そこでニューヨーク州は、追加の調査を行うことにしました。



 そして4月23日。 ニューヨーク州のクオモ知事は、

 住民3000人を対象にして、新型コロナウイルスの「抗体検査」を行っ
た結果、

 これまでに13.9%が陽性だったと発表しました。



 抗体検査が陽性だった人は、

 その人が、新型コロナウイルスの「抗体を持っている」ことを示しており、

 その人は、「これまでに新型コロナウイルスに感染した経験がある」こと
を意味します。



 このたびの抗体検査は、

 外出したことのあるニューヨーク州の住民から、無作為に3000人の
大人を抽出して行われました。

 その結果、

 抗体を持っていた人は、州全体で13.9%、ニューヨーク市に限ると
21.2%でした。



 ちなみに、

 ニューヨーク州の人口は1950万人、ニューヨーク市の人口は840
万人ですから、

 ニューヨーク州全体では、1950×0.139=271万人。

 ニューヨーク市では、840×0.212=178万人が、

 新型コロナウイルスに感染した経験を持っていると推定できます。



 ところで、ニューヨーク州全体では、

 4月23日までに、26万3000人の感染者が確認されていますが、

 この26万3000人は、新型コロナウイルスの症状が出たために
病院へ行き、PCR検査を受けたのだとします。

 そして一方、

 抗体検査による推定で、新型コロナウイルスに感染したと思われる
271万人は、無症状だったか、ごく軽い症状だったために、病院へ
行かなかったとします。

 そうすると、{271÷(271+26.3)}×100=91.2% となり、

 ニューヨーク州全体において、新型コロナウイルスに感染したと思わ
れる人の、およそ91%が、無症状か、ごく軽い症状だったのではない
かと推察できます。


             * * * * *


 さらに4月27日。 ニューヨーク州のクオモ知事は、

 住民7500人まで対象を増やし、新型コロナウイルスの「抗体検査」
を行った結果、

 ニューヨーク州全体で14.9%、ニューヨーク市に限れば24.7%の
人が陽性だったと発表しました。



 上と同じような計算をすると、

 ニューヨーク州全体では291万人、ニューヨーク市では207万人が、

 新型コロナウイルスに感染した経験を持っていると推定できます。



 また、

 4月27日までの時点で、ニューヨーク州全体における感染者の数は、
およそ29万人と言われていますから、

 これも、上と同じような計算をしてみると、

 {291÷(291+29)}×100=90.9% となり、

 やはり、ニューヨーク州全体において新型コロナウイルスに感染した
人の、およそ91%が、無症状か、ごく軽い症状だったと推察できるの
です。


            * * * * *


 以上、ここまで見てきましたように、

 もし、新型コロナウイルスに感染してしまったとしても、

 大部分(およそ9割)の人々にとって、べつに深刻な問題には、ならない
ように思えます。

 (しかし、高齢者など一部の人々にとっては、とても深刻な問題です。)



 ちなみに現在、わが国の日本においても、

 新型コロナウイルスにたいする抗体検査の結果が、出始めてきており、

 日本における「感染の全体像」が、一刻も早く、明らかになって行くこと
が望まれます。



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