新型コロナウイルスの脅威 7
2020年3月15日 寺岡克哉
前回の最後で、
「新型コロナウイルスの脅威というのは、病気そのものの脅威よりも、
むしろ、うわさやデマあるいは過剰な報道などによる ”扇動(せんどう)
の脅威” の方が、ずっと大きいのではないかと思った次第です」
と、締(し)めくくりましたが、
これに関連して、私が住んでいる北海道では、ものすごく不名誉な
事例が起こってしまいました。
それは、
新型コロナウイルスに感染した患者を受け入れる医療機関(感染症
指定医療機関)などで、
看護師や医師や、その家族の人たちが、心ない誹謗中傷(ひぼう
ちゅうしょう)にさらされる事例が出てしまったことです。
この問題を扱っている専門家は、
「根拠のない偏見は、医療従事者を疲弊(ひへい)させ、医療
体制の崩壊など悪循環をまねく」
と、警鐘(けいしょう)を鳴らしています。
* * * * *
そもそも、
(一般の病院ではなく)感染症指定医療機関は、感染者病棟が
他の病棟を分かれており、
動線(注1)は、感染者と重ならないようになっています。
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注1 動線:
日常の生活や仕事で、建物内を人が移動する経路を線で表した
もの。
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また感染症指定医療機関は、治療を担当する医師や看護師を
専従にするなどして、
ウイルスを感染者病棟から持ち出さないようにする対策もとって
いるのです。
感染管理が専門の、北海道医療大学の塚本教授は、
「今は市中の誰もが(新型コロナウイルスに)感染している可能性
があり、医療者がことさらに(感染の)可能性が高いわけではない」
「根拠のない攻撃が広がれば、感染防止や治療にも影響が
出かねない」
と、指摘しています。
その上で、道や各病院にたいし、
「医療者を守るため、院内の安全対策などに関する情報を、積極的
に発信する必要がある」
と、訴えています。
* * * * *
以上を見てきて、私は思うのですが・・・
看護師や医師や、その家族などを誹謗中傷し、
医療従事者を精神的に追いつめて、疲弊(ひへい)させるような
行為をするなど、
まったく愚かだとしか言いようがありません!
今後、
新型コロナウイルスによる肺炎患者が、増加していくことが予想され
ているのに、
そのような状況のなか、医療従事者の人たちに対し、根拠のない
攻撃を加えて足を引っ張るなど、
そんな者どもは、「医療体制の崩壊を企(くわだ)てている」としか、
言いようがありません。
* * * * *
ところで、上とは話がすこし異なりますが、
ウイルスに感染した一般の人たちに対して、あまりにも白い目を
向けて差別をすると、
感染した人々は、それを隠すようになってしまうかも知れません。
あるいは、
自暴自棄になって、感染を拡大させるような行動をするかもしれ
ません。
また軽症の人は、周囲からの誹謗中傷を避けるために、
症状が長く続いていても、市販のかぜ薬を飲んで誤魔化し、
新型コロナウイルスの検査を、受けようとしなくなるかも知れません。
このような考察から、
新型コロナウイルスに感染した人たちへの偏見や差別は、
新型コロナウイルスの感染を、ますます拡大させる方向に働く
のではないかと、私には思えてならない次第です。
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