新型コロナウイルスの脅威
                               2020年2月2日 寺岡克哉


 中国の湖北省・武漢市で発生した、新型のコロナウイルス(注1)
よる肺炎が、世界中に拡大しそうです。


------------------------------
注1: コロナウイルス

 ヒトに感染するコロナウイルスとしては、風邪のウイルス4種類と、
動物からヒトに感染する重症肺炎ウイルス2種類(SARSとMERS)の、
これまでに合計6種類が知られていました。

 このたびは、それらとは異なる、新型のコロナウイルスが現れた
のです。

 ちなみに、ヒトに日常的に感染するコロナウイルスは4種類あります
が、風邪の10~15%(流行期35%)は、それら4種類のコロナウイ
ルスが原因とされています。
------------------------------



 さて、

 この「新型コロナウイルス」について、これまでに得られている最新
情報によると、

 中国全土で2月1日の時点において、感染者が11791人、死者は
259人となっています。

 これらの人数から「致死率」を計算すると、(259÷11791)×100
=2.2%となります。


 また、

 ウイルスの「感染力」を表すための数値として、基本再生産数(感染
者1人からうつる人数)というのがありますが、

 このたびの新型コロナウイルスは、基本再生産数が1.4~2.5 と
されています。



 ちなみに、わが国の日本では、2月1日の時点において、

 新型コロナウイルスの感染者が20人となっており、死者は出て
いません。


             * * * * *


 ところで、

 この新型コロナウイルスは、一体どれぐらいの「脅威」があるので
しょう?


 その脅威の大きさを、分かりやすく把握(はあく)するには、

 毎年のように流行する、「季節性インフルエンザ」と比較してみる
のが良いと思います。



 たとえば厚生労働省のサイトによると、

 例年の「季節性インフルエンザ」の感染者は、日本国内で推定
約1000万人いると言われています。


 また、

 直接的及び間接的にインフルエンザの流行によって生じた死亡を
推計するのに、「超過死亡概念」というのがありますが、

 この「超過死亡概念」による推計だと、インフルエンザによる年間の
死者は、日本で約1万人とされています。


 これらの感染者数と死者数から、

 季節性インフルエンザの致死率を計算すると、(1万÷1000万)×
100=0.1% となります。


 そしてまた、一般的に、

 季節性インフルエンザの感染力、つまり基本再生産数は、2~3
程度とされています。


             * * * * *


 さて、

 新型コロナウイルスの脅威が、一体どれぐらいなのか、考えて行き
たいと思います。


 まず、ここまで見てきた

 「新型コロナウイルス」と「季節性インフルエンザ」の状況を、まとめて
比較すると、以下の表のようになります。


------------------------------
      新型コロナウイルス(中国)  季節性インフルエンザ(日本)

感染者      11791人            10000000人

死者         259人               10000人

致死率       2.2%                 0.1%

基本再生産数  1.4~2.5              2~3
 (感染力)
------------------------------



 上の表で、感染力(基本再生産数)をみると、新型コロナウイルス
よりも、季節性インフルエンザの方が、すこしだけ大きいみたいです。

 しかし大ざっぱには、だいたい同じぐらいだと思ってよいでしょう。



 だとすると、

 もしも新型コロナウイルスが、季節性インフルエンザのように流行し、
日本で1000万人もの感染者が出てしまったら・・・ 

 上の表を見ると、新型コロナウイルスの致死率は2.2%なので、

 (1000万人×0.022)=22万人ぐらいの死者が出る可能性が
考えられます。

 この死者数は、季節性インフルエンザによる死者数の22倍もあり、
ものすごく大きな数だと言わざるを得ません。



 しかしながら、

 新型コロナウイルスの致死率は2.2%ではなく、実際にはもっと
小さな値かもしれません。

 というのは、ウイルスに感染しても、症状が出ない人や、症状の軽い
人が、たくさんいるからです。



 たとえば中国政府の発表によると、

 新型コロナウイルスの感染者11791人の他に、感染が疑われる者
が17988人いるとしています。

 それらを合わせた致死率は、{259÷(11791+17988)}×100
=0.87% となります。



 しかし、致死率が0.87%だとしても、

 油断をすれば、季節性インフルエンザと同じぐらいか、それ以上の
感染者が出るかもしれないので、

 (1000万人×0.0087)=8万7000人以上の死者が、日本国内で
出る可能性が考えられるのです。

 この死者数は、先ほど計算した22万人よりは少なくなっていますが、

 しかし例えば、東日本大震災の死者数が1万5897人であったことと
比較すれば、やはり、ものすごく大きな数だと言わざるを得ません。



 以上の考察から、

 新型コロナウイルスを、季節性インフルエンザのように流行させる
わけには行きません!

 さらに現状では、まだ「ワクチン」が開発されていないので、

 新型コロナウイルスの脅威は、ものすごく大きいと言わざるを得な
いのです。




 新型コロナウイルスを、日本国内で流行させないためには、

 国の行政機関が、できる限り、しっかりとした対策を取らなければなら
ないのは当然ですが、

 私たち国民も、マスク、手洗い、うがい、栄養(食事)、睡眠、不要の
外出をしないなど、ひとり一人が健康管理に注意しなければなりません。

 そして、一刻も早く「ワクチン」を開発する必要があるのは、言うまでも
ないでしょう。



      目次へ        トップページへ