ゴーン逃亡事件に思うこと
2020年1月26日 寺岡克哉
昨年の暮れに、
日産自動車の元会長だった、カルロス・ゴーン被告(65歳)が、
海外への渡航を禁止されていたにもかかわらず、レバノンに逃亡
してしまいました。
これに関するニュースは、連日のように報道されていたので、
皆さんも、よくご存知(ぞんじ)だろうと思います。
今回は、
この逃亡事件について、ちょっと私の思ったことを、書いてみること
にします。
* * * * *
まず第一に、私がすごく疑問に思っているのは、
ゴーン被告を、みすみす海外に逃亡させてしまったにもかかわらず
その責任が誰にあるのか、「責任の所在」をまったく明確にしていな
いことです。
たとえば、
なぜ、ゴーン被告の保釈を認めたのか?
ゴーン被告の資産にくらべたら、15億円という保釈金は安すぎたの
ではないか?
保釈中の監視体制に、問題があったのではないか?
なぜ、出国する前に捕(つか)まえること(逮捕すること)ができなかっ
たのか?
などなど、これらの問題にたいして、
裁判所や検察や警察には、一体どれぐらいの責任があるのでしょう?
それとも、まったく責任はないのでしょうか?
ゴーン被告の海外逃亡は、日本国にとって、前代未聞の大失態
です!
それなのに、この大失態にたいして、
誰も責任を取る者がいないし、誰も責任を追及しようとしないのです。
私は、裁判所か検察か警察のトップが、辞職に追い込まれるほどの
大失態だと思うのですが、
どうも、そのような責任問題には、全くならないみたいです。
つまり、日本当局としては、
「あーあ、ゴーン被告がレバノンに逃げちゃった。仕方がないなー」
で済まし、誰も責任を取るつもりがないのでしょう。
これでは、ちょっと情(なさ)けないような気が、何となくします。
* * * * *
ところで、
ゴーン被告は、日産自動車を立て直した立役者(たてやくしゃ)、
つまり「ヒーロー」なのに、なぜ「逃亡」などという不名誉なマネを
したのか?
というような意見を、テレビで見たことがありました。
しかし、そのとき思ったのですが、
私は、以前に「エッセイ873」で以下のように書いており、
ゴーン被告の「人間性」には、ものすごく大きな疑問をもっています。
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エッセイ873 からの抜粋
ところで、私は思うのですが・・・
ゴーン容疑者は、日産自動車の業績を回復させるために、21000人
ものリストラを、強引に行なったと言われています。
なので恐らく、リストラされた従業員の方々や、その家族の方々が、
それぞれの人生において、ものすごく大変な状況に陥(おちい)ったの
は、絶対に間違いありません。
しかし、それも、日産自動車という会社の全体を、倒産の危機から救う
ためには、ほんとうに仕方がなかったのかも知れません。
しかしながら私は、大規模なリストラを尻目(しりめ)に、陰(かげ)に
隠れて不正を行ない、
私利私欲を貪(むさぼ)った、カルロス・ゴーン容疑者の「人間性」に
たいしては、ものすごく大きな疑問を、感じずにはいられない次第です。
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このように私は、ゴーン被告の「人間性」にたいして大きな疑問
をもっているので、
ゴーン被告が「ヒーロー」であるとは、まったく思えないし、
逃げるチャンスがあるのなら、逃げるのは当然と考えるような、
そのような人間ではないかと思っています。
* * * * *
ところでゴーン被告は、逃亡先のレバノンで、
日本の司法制度にたいし、「基本的な人権の原則に反している」
と批判をしています。
具体的には、長期にわたって勾留が続いたことや、弁護士を立ち
会わせずに検察の取り調べが行われたこと。
さらには、長い期間、妻との接触が禁じられたことなどを挙げていま
す。
これについてですが、おそらくゴーン被告は、
世界を股にかけて、法の網の目をくぐり、さまざまな「あくどいこと」を、
やってきたのでしょう。
だから、海外の司法制度についても、それなりに詳しいのだと思い
ます。
なので、もしも日本の司法制度が、
世界の司法制度にくらべて、あまりにも非常識な所が、本当に存在
するのならば、
そのような所は、改めていくべきだと思います。
* * * * *
ところで・・・
ゴーン被告の逃亡先のレバノンでは、昨年の10月から大規模な
「反政府デモ」が続いています。
デモの原因は、
深刻な経済危機が続いている(若年層の失業率が25%にも上ると
されている)中で、
政治家などの汚職が蔓延(まんえん)しているためで、
レバノンの国民は、腐敗した政治家や富裕層にたいして、ものすごく
怒っているのです。
そして例えば、
昨年10月の当初からデモに参加してきたという若者が、日本人記者
の取材にたいして、
「自分たちの利益しか考えない腐敗した連中が、レバノンをダメにして
いる」
「ゴーンもその仲間だ。日本から逃げれば、かくまってもらえると思った
のだろう」
と、語っています。
現在のレバノンは、そのような状況なので、
反政府デモの矛先(ほこさき)が、ゴーン被告に向けられる可能性も
あります。
つまり、せっかく日本から逃げたのに、
ゴーン被告にとってレバノンが、「安住の地」では、なくなるかも知れ
ないのです。
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