アメリカとイランが激しく衝突
                              2020年1月12日 寺岡克哉


 最近、アメリカとイランが激しく衝突しており、「戦争」にもなりかねない
状況になっています・・・ 


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 事(こと)の発端(ほったん)は、イラクの首都バグダッドの国際空港で、
現地時間の1月3日未明。

 イラン革命防衛隊の精鋭組織である「コッズ部隊」の、カセム・ソレイマニ
司令官を、アメリカ軍が空爆によって殺害したことです。



 アメリカ国防総省は声明をだして、

 ソレイマニ氏が中東地域で、アメリカの外交官やアメリカ兵にたいする
攻撃を計画していたとし、

 また、昨年(2019年)の12月末に起こった、イラクのアメリカ大使館
にたいする襲撃も、ソレイマニ氏が承認していたとして、

 「イランによる今後の攻撃計画を抑止することが目的だった」と、説明
しました。



 アメリカのトランプ大統領も、ツイッターで、

 ソレイマニ氏が、多くのアメリカ人の殺害を企(くわだ)てていたとして、

 「彼は何年も前に排除されるべきだった」と、正当性を主張しています。


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 ところで、

 ソレイマニ司令官が率いてきた「コッズ部隊」は、イランの最高指導者で
あるハメネイ師の直属組織で、革命防衛隊の中核を占めています。

 そのためソレイマニ司令官は、ハメネイ師からの信頼が厚く、イラン国民
の人気も高い人物として知られていました。



 つまりアメリカは、

 ソレイマニ司令官の殺害によって、「実質的な宣戦布告」といえるほど、
本気でイランを怒らせてしまったわけです。



 ハメネイ師は、1月3日の声明で、

 「血で手を汚した犯罪者は、重大な報復を受けるだろう」と、警告して
います。


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 そして、ついに、現地時間の1月8日未明。

 イランが十数発の弾道ミサイルを発射して、アメリカ軍などが駐留する
イラク西部のアサド空軍基地と、イラク北部のアルビルの基地の、

 少なくとも2か所が狙われたと、アメリカ国防総省が明らかにしました。



 また、アメリカの複数のメディアも、政府関係者の話として、

 ミサイルは合わせて15発であり、このうち10発がアサド空軍基地に、
1発がアルビルの基地に着弾したと伝えています。





 一方、イランの最高指導者であるハメネイ師は、1月8日。

 首都のテヘランで演説し、「昨夜はアメリカに平手打ちを食らわせた」
と述べて、アメリカに一撃を与えたと主張しました。

 その上で、「今回の軍事行動では十分ではなく、この地域における
アメリカの存在を消し去ることが重要だ」として、

 「アメリカ軍を中東地域から撤退させる必要がある」と訴えています。



 また、ハメネイ師直轄の革命防衛隊も、

 「アメリカがさらなる挑発行為をとれば、一層激しく破壊的な報復に
直面することになる」として、アメリカ軍の反撃をけん制しました。



 しかし、その一方で、

 イランのザリーフ外相はツイッターで、「緊張のさらなる激化や戦争は
望まない」という考えも示しています。


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 アメリカのトランプ大統領は、1月8日。

 イランによるミサイル攻撃を受けて、ホワイトハウスで国民向けに演説し、

 「軍事力を行使したくはない」と、イランへの報復攻撃に否定的な考えを
示しました。

 しかし、その一方で、「即座に新たな経済制裁を科す」とも表明していま
す。



 上で書きましたようにイランは、イラクにあるアメリカ軍基地にたいして、
ミサイル攻撃を行いました。

 が、しかし、イランはアメリカ側に人的被害が出ないように配慮したと
みられ、

 またザリーフ外相も、「緊張激化や戦争は望んでいない」と明言してい
ます。

 それでアメリカ側としても、全面衝突を回避するため、経済制裁で幕引き
を図った形です。



 トランプ大統領は、「アメリカ人に犠牲者はおらず、基地の損傷も最小限
だった」と強調しました。

 その上で、「イランは攻撃を終えたようだ。全ての関係者や世界にとって
良いことだ」と述べて、

 このだびのイランによるミサイル攻撃にたいして、直接的な非難を避けま
した。


 また、「ソレイマニを排除することで、テロリストに強力なメッセージを送っ
た」と、アメリカ軍の作戦を正当化し、

 イランの指導部と国民に対しては、「自国の繁栄と他国との協調に基づく
素晴らしい未来をつくってほしい」と呼びかけ、対話の意思を示しています。


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 以上、ここまで見てきましたが、

 一時は、「アメリカとイランの全面戦争になるのではないか」という所まで、

 緊張関係が高まってしまいました。



 しかしながら、トランプ大統領が、

 「軍事力を行使したくはない」と、イランへの報復攻撃に否定的な考えを
示したため、

 報復の連鎖による戦禍の拡大にたいして、ひとまず歯止めがかかった
形となりました。



 が、しかし、これで安心できる訳ではないと、私は思っています。

 なぜなら、アメリカとイランの衝突に呼応して、アメリカに攻撃を加えよう
とするイスラム過激派組織が、きっと存在していると思うからです。



 そのようなイスラム過激派組織が、イランの指導部の知らないところで、
アメリカの軍や施設を攻撃し、

 それがイラン軍による攻撃と勘違いされることで、再びアメリカとイラン
の軍事衝突が始まってしまう・・・ 

 そんな事態が起こらなければよいと、私はつよく願っている次第です。



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