アメリカとイランが激しく衝突
2020年1月12日 寺岡克哉
最近、アメリカとイランが激しく衝突しており、「戦争」にもなりかねない
状況になっています・・・
* * * * *
事(こと)の発端(ほったん)は、イラクの首都バグダッドの国際空港で、
現地時間の1月3日未明。
イラン革命防衛隊の精鋭組織である「コッズ部隊」の、カセム・ソレイマニ
司令官を、アメリカ軍が空爆によって殺害したことです。
アメリカ国防総省は声明をだして、
ソレイマニ氏が中東地域で、アメリカの外交官やアメリカ兵にたいする
攻撃を計画していたとし、
また、昨年(2019年)の12月末に起こった、イラクのアメリカ大使館
にたいする襲撃も、ソレイマニ氏が承認していたとして、
「イランによる今後の攻撃計画を抑止することが目的だった」と、説明
しました。
アメリカのトランプ大統領も、ツイッターで、
ソレイマニ氏が、多くのアメリカ人の殺害を企(くわだ)てていたとして、
「彼は何年も前に排除されるべきだった」と、正当性を主張しています。
* * * * *
ところで、
ソレイマニ司令官が率いてきた「コッズ部隊」は、イランの最高指導者で
あるハメネイ師の直属組織で、革命防衛隊の中核を占めています。
そのためソレイマニ司令官は、ハメネイ師からの信頼が厚く、イラン国民
の人気も高い人物として知られていました。
つまりアメリカは、
ソレイマニ司令官の殺害によって、「実質的な宣戦布告」といえるほど、
本気でイランを怒らせてしまったわけです。
ハメネイ師は、1月3日の声明で、
「血で手を汚した犯罪者は、重大な報復を受けるだろう」と、警告して
います。
* * * * *
そして、ついに、現地時間の1月8日未明。
イランが十数発の弾道ミサイルを発射して、アメリカ軍などが駐留する
イラク西部のアサド空軍基地と、イラク北部のアルビルの基地の、
少なくとも2か所が狙われたと、アメリカ国防総省が明らかにしました。
また、アメリカの複数のメディアも、政府関係者の話として、
ミサイルは合わせて15発であり、このうち10発がアサド空軍基地に、
1発がアルビルの基地に着弾したと伝えています。
一方、イランの最高指導者であるハメネイ師は、1月8日。
首都のテヘランで演説し、「昨夜はアメリカに平手打ちを食らわせた」
と述べて、アメリカに一撃を与えたと主張しました。
その上で、「今回の軍事行動では十分ではなく、この地域における
アメリカの存在を消し去ることが重要だ」として、
「アメリカ軍を中東地域から撤退させる必要がある」と訴えています。
また、ハメネイ師直轄の革命防衛隊も、
「アメリカがさらなる挑発行為をとれば、一層激しく破壊的な報復に
直面することになる」として、アメリカ軍の反撃をけん制しました。
しかし、その一方で、
イランのザリーフ外相はツイッターで、「緊張のさらなる激化や戦争は
望まない」という考えも示しています。
* * * * *
アメリカのトランプ大統領は、1月8日。
イランによるミサイル攻撃を受けて、ホワイトハウスで国民向けに演説し、
「軍事力を行使したくはない」と、イランへの報復攻撃に否定的な考えを
示しました。
しかし、その一方で、「即座に新たな経済制裁を科す」とも表明していま
す。
上で書きましたようにイランは、イラクにあるアメリカ軍基地にたいして、
ミサイル攻撃を行いました。
が、しかし、イランはアメリカ側に人的被害が出ないように配慮したと
みられ、
またザリーフ外相も、「緊張激化や戦争は望んでいない」と明言してい
ます。
それでアメリカ側としても、全面衝突を回避するため、経済制裁で幕引き
を図った形です。
トランプ大統領は、「アメリカ人に犠牲者はおらず、基地の損傷も最小限
だった」と強調しました。
その上で、「イランは攻撃を終えたようだ。全ての関係者や世界にとって
良いことだ」と述べて、
このだびのイランによるミサイル攻撃にたいして、直接的な非難を避けま
した。
また、「ソレイマニを排除することで、テロリストに強力なメッセージを送っ
た」と、アメリカ軍の作戦を正当化し、
イランの指導部と国民に対しては、「自国の繁栄と他国との協調に基づく
素晴らしい未来をつくってほしい」と呼びかけ、対話の意思を示しています。
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以上、ここまで見てきましたが、
一時は、「アメリカとイランの全面戦争になるのではないか」という所まで、
緊張関係が高まってしまいました。
しかしながら、トランプ大統領が、
「軍事力を行使したくはない」と、イランへの報復攻撃に否定的な考えを
示したため、
報復の連鎖による戦禍の拡大にたいして、ひとまず歯止めがかかった
形となりました。
が、しかし、これで安心できる訳ではないと、私は思っています。
なぜなら、アメリカとイランの衝突に呼応して、アメリカに攻撃を加えよう
とするイスラム過激派組織が、きっと存在していると思うからです。
そのようなイスラム過激派組織が、イランの指導部の知らないところで、
アメリカの軍や施設を攻撃し、
それがイラン軍による攻撃と勘違いされることで、再びアメリカとイラン
の軍事衝突が始まってしまう・・・
そんな事態が起こらなければよいと、私はつよく願っている次第です。
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