香港はどうなるのか 4
                              2019年12月22日 寺岡克哉


 前々回と、前回で、

 アヘン戦争 ~ イギリスの植民地 ~ 中国への返還 ~ 一国二制度

 という「香港の歴史的な背景」を、ざっと大まかに見てきました。



 いよいよ今回は、

 「香港の現在の状況」について、見て行きたいと思います。



 さて、今年の3月以降から、

 香港警察が逮捕した容疑者を、中国本土へ引き渡すことを可能にする
「逃亡犯条例改正案」に反対するデモがたびたび発生し、

 6月9日には、主催者発表で103万人が参加したとする「大規模なデモ」
が行われました。

 その後もデモが行われ、10月23日には「逃亡犯条例改正案」が正式に
撤回されましたが、

 しかし香港の人々は、普通選挙の実現、独立調査委員会の設置、逮捕
されたデモ参加者の逮捕取り下げ、民主化デモを暴動とした認定の取り
消しなどを求めて、

 いま現在でも、たびたびデモが行われています。



 12月15日の夜から、16日の未明にかけても、

 香港政府に抗議するデモ隊と、警官隊が衝突し、少なくても16人が
拘束されました。

 香港警察は、物を投げるなどの過激な行動を取っていない参加者にも
催涙弾を発射しており、より強硬な姿勢を示しています。

 ここ最近、「過激なデモ」は沈静化の兆しを見せていたのですが、

 しかし香港市民の反発はかえって強まっており、年末にかけて衝突が
激化する懸念もあるといいます。


             * * * * *


 上でも書きましたように、香港の人々は、

 普通選挙の実現、独立調査委員会の設置、逮捕されたデモ参加者の
逮捕取り下げ、民主化デモを暴動とした認定の取り消しなどを求めて、
デモ活動を行っているのですが、

 それらの中でも、香港市民と中国政府の間で、いちばん激しく衝突して
いる問題は、「普通選挙の実現」だと思います。



 というのは、

 香港の地方議会にあたる「区議会選挙」では、普通選挙が実施されて
いるものの、

 香港政府のトップを決める「行政長官選挙」や、香港の立法機関である
「立法会」の議員選挙では、普通選挙が実施されていないからです。



 たとえば「行政長官選挙」は、

 親中派が多いとされる産業界などから選出された、投票権をもつ
「1200人の選挙委員」が投票して、行政長官を選ぶ仕組みになって
います。

 この1200人というのは、普通選挙(区議会選挙)の有権者の、たった
6%にすぎません。

 なので、香港政府のトップである行政長官は、もっぱら中国政府寄りの、
ごく少数の人々によって決められているわけです。



 また、「立法会選挙」についてですが、

 「立法会」というのは、香港特別行政区における立法機関で、定数は
70人となっています。

 ところが、香港市民による直接普通選挙によって選出される枠が、
35人しかありません。

 残りの35人は、各種職能団体(親中派)を通じた、間接制限選挙に
よって選出されています。

 つまり立法会選挙は、議員定数の半分しか、普通選挙が実行されて
いないのです。


 しかも、普通選挙の枠で選ばれた立法会議員の中には、

 忠誠の誓い(中華人民共和国・香港特別行政区への忠誠)を正しく
述べることを拒否したり、

 「香港は中国でない」と書かれた旗を掲(かか)げたりしたことで、

 議員資格を剥奪(はくだつ)された者も、居るということです。


            * * * * *


 以上、ここまで見てきましたように、

 香港で普通選挙が実現されているとは、とても言えない状況です。



 ところで、2014年の9月~12月にかけても、

 「真の普通選挙」を求めて、「雨傘運動」という大規模なデモが行われ
ました。

 このデモへの総参加数は、およそ120万人といわれています。



 しかしながら・・・ 「雨傘運動」は失敗に終わり、

 とくに行政長官選挙では、いま現在でも、普通選挙はまったく実現
されていません。



 恐らく、この「雨傘運動」のときの遺恨(いこん)も残しながら、

 いま現在も香港市民の人々は、中国政府と激しく対立しているのだと
思います。



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