米韓関係も悪化か? 2
2019年11月24日 寺岡克哉
韓国の大統領府は、11月22日の午後6時。
日本政府に破棄を通告していた、日韓のGSOMIA(軍事情報包括
保護協定)について、「当分維持することを決めた」と発表しました。
これにより、
11月23日の午前0時をもって、日韓のGSOMIAが失効してしまう
という問題が、ギリギリになって回避されたことになります。
私はてっきり、GSOMIAが失効するものとばかり思っていたので、
ものすごく意外な結果となりました。
* * * * *
このように韓国政府が、ギリギリになってGSOMIAの維持を決定した
のは、
やはり、「アメリカの圧力」が相当に強かったのではないかと、思わ
れます。
たとえば前回の「エッセイ924」で紹介しましたように、
アメリカ政府の高官が次々と韓国を訪れて、GSOMIAの破棄を思い
とどまらせようと、一生懸命に説得していました。
また、アメリカの外交消息筋によると、
韓国政府が11月22日までに、GSOMIA破棄の決定を覆(くつがえ)
さなかった場合は、
米国は23日に、最も強度の高いムン・ジェイン政権批判声明を、発表
する方針だったといいます。
またさらに、アメリカ政府関係者は、
「これまで長官クラスをはじめ、さまざまな次元でGSOMIA維持を望む
言及をしてきた」
「韓国が最終的に、米韓日3ヵ国の協力強化を望む我々の要請を拒否
するなら、想像しがたいほどの波紋が起こるだろう」と、語っていました。
さらに別の、アメリカ政府関係者は、
「韓国が我々の立場を受け入れていないなら、 ”パーフェクト・ストー
ム(最悪の状況)” に見舞われるかもしれない」と、述べていたのです。
これらのことから、やはり私は、
アメリカが韓国に対して、「相当に強い圧力」をかけていたのだと、
思わざるを得ません。
* * * * *
状況が一転して、11月23日。
アメリカ国務省の報道担当者が声明を発表し、
「(韓国側の)判断を歓迎する」と評価するとともに、「現在の地域的・
世界的な課題を考えると、日米韓3ヵ国の協力の強化は欠かせない」
として、
ミサイル発射を繰り返す北朝鮮や、軍備増強を続ける中国に対して、
日米韓が連携して当たる必要があるという認識を、改めて示しました。
また、アメリカ国防総省のホフマン報道官も声明を発表し、
エスパー国防長官が、失効の直前までGSOMIAの維持を強く求めて
いたことを踏まえ、
「この地域の共通の脅威に対して、われわれが団結しているという
強いメッセージを送るものだ」と、評価しました。
さらには、
アメリカ議会上院の外交委員会と軍事委員会の、共和党と民主党の
トップ4人が共同で声明を発表し、GSOMIAの維持を決めた韓国政府
の決断を歓迎しました。
この声明の中で、リッシュ外交委員長たち上院議員の4人は、
「GSOMIAの維持は、日米韓3ヵ国の同盟関係のばく大な利益となる。
われわれの分断は、敵対勢力を利するだけだ」
と、3ヵ国の結束の重要性を強調しています。
このようにアメリカ側は、
韓国のGSOMIA維持の決定にたいし、歓迎・評価する声明を、次々
と発表しました。
それほど、日韓のGSOMIAを維持することが、アメリカにとって重要な
ことだったのです。
* * * * *
以上、ここまで見てきましたが、
米韓関係の「深刻な悪化」は、ギリギリのところで避けることができ
たと言えるでしょう。
これはこれで、日米側にとっては、とても良いことだと思います。
しかしながら、韓国のムン・ジェイン大統領にとっては、
韓国内における世論の反発や、北朝鮮や中国との関係など、
なかなか頭の痛い問題が、「山積み」になっているだろうと思います。
これから先、日韓関係も含めて、
ムン・ジェイン大統領が、どのような判断をして、どのように行動して
行くのか、
とても興味深いところです。
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