AIに人間が採点される時代
2019年11月3日 寺岡克哉
NHKで、10月29日の午後10時から放送された、
「クローズアップ現代+」という番組を、なにげなく見たのですが、
何とも恐ろしい世の中に、なってきたように感じました。
というのは、
インターネット上に存在する、さまざまな「個人情報」を大量に
収集し、
その膨大な個人情報を、AI(人工知能)によって分析することで、
ある特定の人物の、(仕事などの)能力や、人格までをも、
「点数化」しているというのです。
* * * * *
もう少し具体的に言うと、
AIが分析するのは、ツイッターやフェイスブックといったSNSや、
ブログの記事などです。
そしてまず、「仕事の能力」を点数化するには・・・
たとえば、「システムエンジニア」をしているAさんの場合、
Aさんは、ネット上のさまざまな場所に、システムエンジニアの仕事
に関係したことを投稿していました。
AIの分析システムは、バラバラに投稿された情報をつなぎあわせ
ることにより、
Aさんの得意な技術や、技術セミナーへの参加歴、メールアドレス
などを割り出していきます。
またAさんは、自分のブログで、最新のプログラミング技術について
投稿を続けていましたが、
AIは、その投稿を分析し、どのプログラミング言語を、どのていど使え
るのか、10点満点で評価します。
さらに、その評価には、ブログの記事についた「いいね」の数や、
その「いいね」をつけた人の技術的なレベルも計算に入れた上で、
Aさんを採点するのです。
つまり、プログラミングの初心者がつけた「いいね」と、プログラミン
グの上級者がつけた「いいね」とで、「重み」を変えて計算するわけ
です。
(「いいね」をつけた人物が、プログラミングの初心者なのか上級者
なのかも分かってしまうみたいです。)
ちなみにAさんの場合は、技術力が3.39点でしたが、これは結構
高めの点数で、
このAIシステムが扱っている、全体で143万人のデータベースのうち、
上位10%に入る成績だといいます。
その後Aさんは、知らない企業から「ヘッドハンティングのメール」が
突然に届きましたが、
Aさんがやっている技術や、精通しているものが的確に把握されてい
たため、
「自分の能力が高く評価されている」と感じたAさんは、「転職」を決意
しました。
そして現在は、前の会社よりも良い環境で、スキルアップをしながら
仕事に励んでいるといいます。
(しかしながら、Aさん本人がまったく知らない間に、それほどのことが
調べ上げられていたわけです。)
* * * * *
さてつぎに、「人格」を点数化するには・・・
その場合は、
SNSで公開されている投稿の言葉遣いや、投稿した時間などを把握し、
本人でさえ気がついていない、「攻撃性」や「自己顕示欲」などを数値化
していくといいます。
AIによる「人格分析」には、独自の「ネガティブワード・リスト」というのが
用いられますが、
そのリストには、犯罪やコンプライアンス違反に関わる言葉が登録され
ているだけでなく、
「は?」とか、「何言ってんの」などの言葉も、対人関係のトラブルにつな
がる恐れがあるとして、「ネガティブワード・リスト」に加えられています。
この「ネガティブワード・リスト」には、700個ぐらいの「キーワード」が登録
されており、
「調査対象者の名前」+「キーワード」を、AIで自動的に検索していき、
検索に引っかかった書き込みを、片っ端(かたっぱし)から読み込みます。
そして再(ふたた)びAIによって、それらの書き込みが、ほんとうに本人の
ものなのかを判断していくのです。
さらには、匿名のアカウント、いわゆる「裏アカウント」による投稿も、
フォロワーなどを分析することで、本人を特定していくと言います。
このようなAIを使った方法で、人格分析をしている担当者によると、
「裏アカウント」で発言する場合は、ほんとうに自分の本性が出やすい
そうです。
そして実際に、「裏アカウント」を使った者による「情報の漏洩(ろうえ
い)」や「暴言」が、見つかることもあったと言います。
このようにして、
調査対象者の「暴言」や、「毎日、多数の場所で投稿をくりかえす」
などの行動をあぶり出し、
「攻撃性」や「自己顕示欲」などを点数化していくのです。
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以上、ここまで見てきましたが、
個々人の能力や人格などが、AIによって分析され、採点(点数化)され
てしまうというのは、
ものすごく恐ろしいことだと思いました。
さらには、
ブログに「いいね」をつけた人の素性が判明したり、
「裏アカウント」を使っている本人の特定なども、出来てしまうみたいです。
つまり、
いくら「裏アカウント」を使っても、誹謗中傷や罵詈雑言などを繰り返して
いれば、AIを使った調査によって、本人が特定されてしまうのです。
これには「恐ろしさ」を感じる人も、少なからず居るのではないでしょうか。
たとえば私なども、本サイトで書いている内容がAIによって分析され、
私の能力や人格、あるいは私が傾倒している思想や世界観などが
点数化されたら、
おそらく「企業に適さない思想の持主だ!」などと判断されて、企業で
採用される可能性など「ゼロ」になってしまうでしょう。
いまさら私は、企業に就職することなど考えていませんが、
しかし、このようなことは、企業への就職を目指している学生の人々
にも、起こり得ることなのです。
つまり、本人のまったく知らない間にAIによって調査され、もしも何らか
の理由で「悪い結果」が出てしまったら、
就職にたいする将来の可能性が、潰(つぶ)されてしまうかも知れない
のです。
そんなことを、無制限に認めるわけには行きません。
やはり、何らかのルールや、さらには法律を作るなどして、
AIによる能力・人格調査にたいする「ガイドライン」を、設けなければ
ならないと思います。
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