それでも「温暖化」と言わない
                               2019年10月20日 寺岡克哉


 大型で強い台風19号が、10月12日の夜に静岡県の伊豆半島へ
上陸し、

 関東地方を縦断したあと、10月13日の未明に福島県沖へ抜けま
した。

 この台風19号により、関東甲信越から東北地方にわたって、甚大
な被害が発生しています。



 たとえば、国土交通省によると10月18日の時点で、

 台風の豪雨によって、河川が増水して堤防が壊れる、いわゆる「決壊」
が発生したのは、

 宮城 福島 栃木 茨城 埼玉 新潟 長野の7つの県で、合わせて
71河川の128か所に上っています。



 また、 NHKによる各地の放送局を通じたまとめによると、

 10月18日の時点で、これまでに全国で4万5000棟以上の住宅が
水につかり、

 およそ2500棟の住宅が、全半壊や一部損壊の被害を受けています。



 また同じく、NHKによる各地の放送局を通じたまとめによると、

 10月18日の時点で、これまでに全国で79人が亡くなり、11人が
行方不明となっています。



 ものすごく甚大な被害が発生してしまいました!

 被害に遭(あ)われた方々には、心からお見舞い申し上げます。


             * * * * *


 ところで・・・ 

 私は、テレビ報道をけっこう良く見ている人間だと思いますが、

 このたびの台風19号についての報道を見ていて、ものすごく
「違和感」を感じることがありました。



 それは、

 テレビのアナウンサーたちも、現地のリポーターたちも、そして
自然災害などの解説者たちも、

 皆(みな)が皆、「地球温暖化」という言葉を絶対に言わないの
です。



 これには、まったく異常なほどの違和感を感じてなりません!



 私が、テレビ報道を見ていて思ったのは、

 たとえば台風19号が急速に発達し、巨大化した理由として、

 「海水温が高いため」とは良く言うのですが、

 「地球温暖化の影響で海水温が高いため」とは、絶対に言わな
いのです。



 またテレビ報道で、早めの避難を促すために、

 「これまで経験したことのない大雨が降る」とか、

 「これまでの経験が役に立ちません」とは良く言うのですが、

 「地球温暖化による気候変動で、これまで経験したことのない
大雨が降る」とか、

 「地球温暖化による気候変動のため、これまでの経験が役に
立ちません」とは、絶対に言わないのです。



 さらにまた、昨年の西日本豪雨や、今回の台風19号などを指して、

 「近年では大規模な気象災害が続いている」とは良く言うのですが、

 「地球温暖化による気候変動で、近年では大規模な気象災害が
続いている」とは、絶対に言わないのです。



 このように、

 「海水温が高い」 「経験したことのない大雨が降る」 「経験が役に
立たない」 「大規模な気象災害が続いている」というように、あえて
「結果の部分」だけしか言わず、

 その理由に当たる「地球温暖化」については、まったく言及しないの
です。



 そのため、

 一般の言論としては、不十分で不自然な表現になっており、(つまり
理由を述べずに結果だけが言いっぱなしになっており)、

 それで私は、テレビ報道にたいして、大きな「違和感」を感じてしまう
のだと思います。


             * * * * *


 ところで一方、テレビではなく、新聞報道(地元紙)を見てみると・・・ 


 たとえば10月14日付の記事では、

 国立環境研究所・地球環境センターの、江守正多・副センター長が、

 「一般に温暖化で海水温が高くなると、台風が発達する傾向にある」

 「温暖化が止まらなければ今後、強い台風や豪雨の確率が増える」

 と警告して、温室効果ガス(おもに二酸化炭素)の排出を、減らすこと
の必要性を訴えていました。



 また、10月16日付の記事では、

 国土交通省の有識者検討会が7月31日に、

 「気候変動による豪雨の頻発・激甚化は、ほぼ確実」

 「これまで経験のない事象も発生しうる」として、

 「地球温暖化に備えた政策転換を促(うなが)す提言」を、
まとめたとしています。



 さらに、この提言では、

 これまでは「過去の雨量データ」を、「対策の根拠」としてきたので
すが、

 台風の大型化などで、雨量の増大が見込まれるため、

 今後は「(地球温暖化の)予測」も、対策に反映させるように訴えて
います。

 (これを知って私は驚きました。「過去のデータ」しか参考にしな
 かったら、今後さらに甚大になっていく気象災害を、防げるわけ
 がありません!




 このように新聞報道では、

 「地球温暖化による気候変動」のことを、必要に応じて取り上げて
いるのです。


             * * * * *


 しかし、それにしても、なぜテレビ報道は、

 「地球温暖化」という言葉を、意地でも絶対に使わないのでしょう?

 もしかしたら、「放送禁止用語」にでも指定されているのでしょうか?



 報道番組の出演者たちのコメントを聞いても、

 「地球温暖化」という言葉を絶対に使おうとしないため、とても不自然
な言い回しになっているのです。



 それを見ていると、何か、あえて意図的に、

 「気象災害」と「地球温暖化」との因果関係を、多くの国民に印象づけ
ないように、しているのではないか・・・ 

 そして

 「地球温暖化の深刻さ」や、「温暖化対策の緊急性」にたいして、

 多くの国民が理解せず納得しないように、しているのではないか・・・


 と、そのように、私には思えてならないのです。



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