国会議員が戦争を唆す 1
                                2019年9月8日 寺岡克哉


 近ごろ、

 ある衆議院議員が、「戦争」を唆(そそのか)すような言動をして、

 けっこう大きな話題になっています。



 たとえば、その国会議員は今年の5月11日。

 北方領土のロシア人住民と、日本人の元島民たちが相互に往来
する「ビザなし交流」において、日本側の訪問団に同行した際、

 滞在先だった、国後(くなしり)島にある日本人とロシア人の友好の
家において、訪問団の団長にたいし、

 「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」などと質問
しました。

 訪問団の団長は、「戦争はすべきではない」と答えましたが、

 それに対して、この国会議員は、「戦争しないと、どうしようもなくな
いですか」
などと、発言したといいます。


 (同議員は5月13日に、この発言について謝罪し、撤回を表明して
います。)



 また、同・国会議員は8月31日。

 韓国の与野党の議員6人が、同日に島根県の竹島に上陸したこと
にたいして、自らのツイッターに

 「竹島も本当に交渉で返ってくるんですかね?」

 「戦争で取り返すしかないんじゃないですか?」などと、投稿した
のです。


              * * * * *


 ところで、

 本エッセイでは、あえて、この国会議員の名前を伏(ふ)せています。


 というのは、

 この問題を、その国会議員の個人的な問題として捉(とら)えるので
はなく、

 「国会議員の立場にある者が、戦争を唆すような言動を、公然と
行うようになってきた」
という、

 そのような「社会的な変化」として、この問題を捉えてみたいと思った
からです。



 つまり、この国会議員にたいする

 何らかの「社会的な共感」というか、「社会的な支持」いうものが、
まったく存在していなかったら、

 この国会議員が辞職もせずに、ここまで強気の姿勢を貫ける訳が
ないと、私は思うわけです。



 さらに今後、

 この国会議員が、次回の選挙にも当選したり、

 さらには同じような言動をする候補、つまり戦争を唆すような国会
議員候補が、どんどん選挙に当選するようになったら、

 日本は「戦争への道」をまっしぐらです!



 そのようなことが私は、ものすごく心配でなりません。


             * * * * *


 ところで、

 実際に戦争が起こったら、いったい日本がどんな状況になって
しまうのかを、

 私たち国民の一人ひとりが、ほんの少しでも想像してみること。


 そして選挙のときに、

 戦争を唆(そそのか)すような候補者には票を入れず、当選させ
ないようにすること。


 それこそが、

 ふたたび日本が戦争を起こさないようにするための、唯一の方法
ではないかと、私は考えています。



 なので、

 日本が、ロシアにたいして戦争を仕掛けたり、

 日本が、韓国にたいして戦争を仕掛けたら、

 いったい日本はどうなってしまうのか、ちょっと想像してみたいと
思います。


            * * * * *


 まず、日本がロシアに戦争を仕掛けた場合ですが・・・ 


 ロシアは「核兵器」を持っているので、日本は絶対にロシアには
勝てません。

 それどころか、たとえアメリカだって、ロシアに勝つことはできない
でしょう。



 たとえば、

 日本が先制攻撃を仕掛けて、北方領土を一時的に占領できた
としても、

 ロシア側が、「核兵器の使用」を少しでも仄(ほの)めかせたなら
ば、

 日本側は、すぐに撤退(てったい)せざるを得なくなるでしょう。



 なので、

 日本がロシアと戦争を行っても、北方領土を取り返すことは、
絶対にできません!




 もしも、

 ロシアと戦争することにより、北方領土が取り返せると思って
いる人間がいるとすれば、

 それは、東京から遠く離れた、北方の島々における軍事衝突
が行われるだけで、

 それで、すべて事(こと)が済むと思っているのでは、ないで
しょうか。



 ところが、その気になればロシアは、

 日本の主要都市にたいして、いつでも「核攻撃」を行うことが
できるのです。

 そのことを、絶対に忘れてはいけません。


            * * * * *


 ところでアメリカは、

 日本などの同盟国が核攻撃にさらされた場合、

 自国(アメリカ)の核兵器で報復することを約束しています(い
わゆる核の傘)。



 が、しかしながら、

 日本がロシアの核攻撃を受けることなど、アメリカ本土の死活
問題としては直接関係がありません。

 それなのにアメリカが、ロシアとの核戦争に踏切り、アメリカ全土
を核攻撃のリスクにさらすなど、

 「はたしてアメリカが、本当にそんな決断をするのか?」という
疑問が指摘されているのです。



 ましてや、

 日本が勝手に、ロシアに戦争を仕掛けた場合においては、

 アメリカが「核の傘」で日本を守ってくれるのかどうか、私は甚(は
なは)だ疑問に思っています。



 つまり日本が、そのような「勝手な戦争」をやった場合、

 もしも日本が、ロシアから核攻撃を受けたとしても、

 アメリカからは「自業自得(じごうじとく)でしょ」と言われて、

 それで済まされるような気がしてならないのです。



 なので、

 (国際社会が許す訳がありませんし、私も反対しますが)日本
が「核武装」でもしないかぎりは、

 日本からロシアに戦争を仕掛けても、日本がロシアに勝つこと
は絶対にできず、

 ゆえに北方領土も、戦争で取り返すことは、絶対にできないと
言わざるを得ません。


            * * * * *


 つぎに、

 日本が韓国に戦争を仕掛けた場合ですが、それについては

 次回でやりたいと思います。



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