日韓関係が悪化 8
2019年7月21日 寺岡克哉
2月24日付けの、エッセイ886「日韓関係が悪化 7」を書いて以降、
本サイトでは、日韓関係について少し遠ざかっていました。
が、しかしながら最近また、日韓関係が一段と悪化してきています。
というのは、日本政府が7月4日から、
大韓民国向けの「輸出管理の運用」にたいして、「見直し」を行ったから
です。
つまり、
フッ化ポリイミド(注1)、レジスト(注2)、フッ化水素(注3)の大韓民国
向け輸出及び、これらに関連する製造技術の移転(製造設備の輸出に
伴うものも含む)について、
包括輸出許可制度の対象から外し、個別に輸出許可申請を求め、
輸出審査を行うことにしたのです。
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注1 フッ化ポリイミド:
多層配線基板の層間絶縁材料や、半導体素子の表層の保護膜として
使われます。
注2 レジスト:
正確には「フォトレジスト」といい、感光性耐食被膜のことです。
半導体に微細加工を施すための、写真技術と化学腐食 (エッチング)
を組み合わせた「フォトエッチング」という技法において使用されます。
注3 フッ化水素:
半導体物質のエッチング剤として使われるほか、ウランを濃縮するため
に必要となる「六フッ化ウラン」の製造過程において使用されたり、有機
リン系の神経ガスである「サリン」の製造に使われたりもします。
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これら、
フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素は、韓国の半導体産業に
とって必須のものですが、
日本企業の世界シェアが高く、他国からの調達が難しいとされて
います。
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ところで、ここで注意しなければならないことがあります。
それは、テレビや新聞などのマスコミが、
このたびの「輸出管理の運用にたいする見直し」について、
さもさも韓国にたいする「輸出規制の強化」であるように喧伝(けん
でん)していますが、
しかし、
このたびの「輸出管理の運用にたいする見直し」というのは、決して
輸出を規制するものではなく、
これまで韓国にたいして特別な優遇措置をとっていたのを、
中国やインドや、あるいはインドネシアといった他の国々と、同様の
扱いをするということなのです。
なので、
たとえば軍事技術への転用や、他国への横流しといった「後ろめた
いこと」をしていなければ、
このたびの「見直し」による韓国企業への実害は、小さいと思われる
のです。
それなのに、
韓国側の強い反発を見ていると、何やら「後ろめたいこと」をやって
いるのではないかと、私は勘繰(かんぐ)ってしまいます。
そして一方、日本政府側は、
韓国向けの輸出管理で「不適切な事案」が確認されており、それが
このたびの「見直し」につながったとしていますが、
しかし、その「不適切な事案」の具体的な内容については、まったく
明らかにしていません。
* * * * *
ところで、表面的に見ると、
このたびの韓国に対する「輸出管理の運用にたいする見直し」は、
徴用工問題や慰安婦問題への、日本側による対抗措置のように
思えてしまいます。
が、しかし安倍首相は、
「歴史問題を通商問題に絡めたのではない」と否定しています。
そして一方、経済産業省の担当者は、
韓国向けの輸出管理で確認された「不適切な事案」について、
「第三国への横流しを意味するものではない」と、韓国側に説明して
いるのです。
なので今のところ、私たち一般の国民には、
いったい裏で何が起こっているのか、その真相について、まったく
分からない状況であると言えます。
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