親の体罰禁止法が成立
2019年6月23日 寺岡克哉
6月19日。
「改正児童虐待防止法」と、「改正児童福祉法」という法律が、
参議院の本会議において、全会一致で可決・成立しました。
これらの法律は、一部を除いて、来年の4月から施行されます。
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さっそくですが、これらの法律の「要点」は、以下のようになっています。
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改正児童虐待防止法と改正児童福祉法の要点
●親権者や里親らは、児童の「しつけ」に際し、「体罰」を加えてはなら
ない。
●民法の懲戒権の在り方は、施行後2年をめどに検討する。
●児童相談所で一時保護などの「介入対応」をする職員と、「保護者支援」
をする職員を分けて、「介入機能」を強化する。
●学校、教育委員会、児童福祉施設の職員に守秘義務を課す。
●ドメスティックバイオレンス(DV)の対応機関との連携(れんけい)も強化
する。
●都道府県などは虐待した保護者に対して医学的、心理的指導を行う
ように努める。
●児童相談所の児童福祉司に過剰な負担がかからないよう、人口や対応
件数を考慮して体制を強化する。
●転居しても切れ目ない支援をするため、転居先の児童相談所や関係機関
と速やかに情報を共有する。
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私は、
上の要点のうち、太字で示した部分について、とくに注目したというか、
思うところがありました。
まず、
●親権者や里親らは、児童の「しつけ」に際し、「体罰」を加えてはなら
ない。
という部分についてですが、これは報道によると、
虐待に関与した疑いで逮捕された親族が、「しつけのためだった」と供述
するケースが後を絶たないことから、
親権者や里親、児童福祉施設長が子供をしつける際の、「体罰の禁止」
を「明文化」したそうです。
たしかに、
何でもかんでも「しつけのためだった」と言えば、子供への体罰が容認
されるのであれば、そんなのは全く馬鹿げた話です。
なので、
子供への体罰禁止を「明文化」したことは、画期的なことであるし、今ごろ
になって、やっと明文化されたというのは、遅いぐらいだと思います。
しかしながら、
このたび法律が改正されたのですが、それであっても、子供への体罰に
たいして罰則がありません。
これでは、
法律をナメてかかる、馬鹿な親がいるかも知れないので、それが心配に
なってしまいます。
ところで、
子供にたいし、日常的に暴力を振るうというのは、まったくの論外です。
が、しかしながら、
一生のうちに、「ゲンコツ」や「ビンタ」の1つや2つぐらいは、父親から
もらうのも当たり前でしょう。
それに対して、厳しい罰則を設けるというのも、これまたナンセンスな話
になってしまいます。
その辺との整合性をとるのが難しいので、このたびの法律改正でも、
罰則を設けなかったのかも知れません。
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つぎに、
●都道府県などは虐待した保護者に対して医学的、心理的指導を行う
ように努める。
という部分についてですが、これは、今国会での成立を目指すため、与党
が野党との修正協議に応じて、
医学的・心理的な知見に基づく再発防止プログラムの実施を努力義務に
するなど、野党が求めていた項目が盛り込まれたのです。
ところで、虐待の程度によると思いますが・・・
たとえば、自分の子供に食事を与えず、日常的に暴行を加えて、じわじわ
と嬲(なぶ)り殺すという、
とても人間であるとは思えない「凶悪な殺人者」にたいして、
「医学的・心理的指導」というものが、一体どれほど有効なのでしょう?
私は思うのですが、本当なら、
子供に対して行った虐待を、今度は逆に、親が同じように虐待を受けて
みなければ、
虐待した親は、子供に対して何を行ったのか、理解できないのでは、ない
でしょうか。
つまり、(もちろん法治国家である日本では許されませんが)
「子供を虐待して殺した親」を、然(しか)るべき場所に監禁して、餓死する
直前まで食事を与えなかったり、
毎日のように半死半生になるまで暴行を加えつづけ、しかも、それを何ヶ月
も続けなければ、
「子供を虐待して殺した親」は、子供に対して本当に何を行ったのか、理解
できる訳がないと思うのです。
もし、そこまでしなくても理解できるのなら、子供を殺すわけがありません。
「子供を虐待して殺した親」は、
餓死するほどの飢えの苦しみも、本当に死んでしまうほどの大怪我の苦し
みも、己(おのれ)の人生において経験したことがなく、
虐待で殺された子供がどれほど苦しんでいたのか、毎日子供を目の前で
見ているのに、まったく理解することができなかったのでしょう。
なので私は、
「医学的・心理的指導」という程度では、とても「生ぬるく」感じてしまいます。
が、しかし、
上で述べたような「同等の苦しみを与えて、罪を認識させる」という方法は、
日本では絶対に認められないので、
公(おおやけ)の行政機関で取り組むことが可能な対策としては、
「医学的・心理的指導」というぐらいが、精々(せいぜい)なのかもしれません。
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