「8050問題」に思うこと
                               2019年6月16日 寺岡克哉


 近ごろ、「8050問題」というのが注目されています。


 これは、ひきこもりの子をもつ家庭が高齢化して、

 80歳代の後期高齢者にさしかかった親が、50歳代の中高年ひき
こもりの子の面倒を見るケースが増えているという、

 そのような社会問題のことです。


 親が80代で、子が50代なので、「8050問題」と呼ばれているの
です。


 ところで何を隠(かく)そう、私の父が80代で、私は50代です。

 また、私は定職に就(つ)いている訳でなく、父との二人暮らしです。

 なので、隣近所や親戚などの、いわゆる傍(はた)から見れば、

 私たち親子は「8050問題の当事者そのもの」として、映(うつ)って
いるのではないかと思います。



 わが家は、そんな状況なので、

 「8050問題」の対策について、私が日頃経験していることも、

 すこしは何かの参考になるかも知れないと思った次第です。


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 さっそくですが、単刀直入に言いますと、

 「8050問題」を抱える家庭において、子が会社勤(づと)めなどの
定職に就いておらず、「時間的なゆとり」があるのならば、

 子は、「親の介護」をすれば良いのではないかと思います。



 たとえば、わが家の場合は、

 父の体力が低下して、一人では買い物に行くことができず、食事を
作ることも、洗濯も、掃除もできないので、

 それらを全て私がやっています。



 さらに父は、糖尿病や肺ガンを患っているので、

 定期的に病院へ連れていき、病気の経過や治療方針など、主治医の
先生の話を聞いて理解したり、

 病院からもらう薬の種類や、効能、副作用などを把握したり、

 父の体温が高くなったり、体重が減ったり、下痢や便秘をしていないか
などを、毎日チェックしなければなりません。



 そして、父の体調が急変したときは、

 すぐに病院に電話をして、主治医の先生の指示を仰(あお)がなければ
なりませんし、

 必要ならば、その日のうちに病院へ連れて行ったり、その場ですぐ入院
などということもあります。



 このように、

 やらなければならないことが多くあり、私は定職に就いていなくても、
けっこう忙(いそが)しかったりします。

 というか、

 もしも私が定職に就いていたら、これほどの、きめの細かい介護をする
ことは絶対に不可能です。


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 さらには、

 父の体調に合わせて、食事の材料や、調理方法を変えなければなりま
せん。

 (抗癌剤や、他の薬の副作用で、父は便秘になったり、下痢をしたりする
のです。)


 たとえば便秘をしているなら、野菜などの食物繊維や、ヨーグルトなどの
乳製品、そして水分を多く取るようにします。

 その反対に下痢をしているなら、食物繊維を少なくして、消化の良い材料
使い、煮炊(にた)きに時間をかけて柔らかく作ります。


 このため、

 食事のメニューを決めるのに、父の体調を毎日のように確認しなければ
ならず、

 わが家における親子間のコミュニケーションは、これまでになく活発
なっています。



 そしてまた、

 病院や薬局などで、医師や看護師、薬剤師など、さまざまな人たちとも、
コミュニケーションを取らなければなりません。

 なので、私たち親子が社会的に孤立することはありません。


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 このように、わが家だけでなく、

 親が80代にもなると、多くの場合は、何らかの介護が必要になって
いるでしょう。



 ところで・・・ 

 「ひきこもり対策」と言えば、「とにかく就労させよう」とする傾向が強い
ように、私は感じています。


 しかしながら、その前にまず、

 買物や調理、洗濯、掃除など、さまざまな家事をやることで、親子間
のコミュニケーションを取り、

 さらには病院などで、さまざまな人とのコミュニケーションを取る。


 そのようなことから始めて、

 親子のつながりや、社会とのつながりを、回復させて行くというのも、

 「ひきこもり対策」の一つになるのでは、ないでしょうか。



 「8050問題」について、私の日頃の生活体験から、ちょっとそのよう
に思った次第です。



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