原発事故の費用は最大81兆円
                              2019年4月21日 寺岡克哉


 前回は、原発の話題について書きましたが、

 今回も原発関連の話として、「福島第1原発事故の処理費用」
について、書いておきたいと思います。


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 民間のシンクタンクである「日本経済研究センター」は、3月7日。

 福島第1原発事故の処理費用が、事故の発生から40年の間に、

 最大で81兆円かかるという試算を発表しました。


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 ところで・・・ 

 福島第1原発の敷地内には、これまでに120万トンの汚染水が、
保管されています。


 そして今後、

 原子炉内にある燃料デブリ(注1)などの冷却が、2030年まで
続くとすると、

 さらに80万トンていどの水が、必要だと見込まれています。


 つまり合計で、

 200万トンていどの「放射能汚染水」が、発生することになるの
です。


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注1 燃料デブリ:
 原子炉の事故で、炉心が過熱し、溶融した核燃料や被覆管および
原子炉構造物などが、冷えて固まったもの。
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 これら200万トンの放射能汚染水から、

 ストロンチウムなどだけでなく、「トリチウム(注2)」も取り除こう
とすると、

 およそ40兆円の費用が必要になります。


 そして、この場合、その他もろもろの費用を含めると、

 福島第1原発事故の処理費用は、総額で81兆円に上ると試算
されているのです。


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注2 トリチウム:
 陽子1つと中性子2つから構成される、水素の同位体。
 半減期12.32年でβ崩壊するので、「放射能」を持っています。
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 ところが!

 200万トンの「トリチウム汚染水」を希釈し、すべて海洋へ放出
すれば、

 先ほどの総額81兆円のうち、40兆円分の費用が浮いて、

 福島第1原発事故の処理費用が、総額41兆円になると試算され
ています。



 ちなみに原子力規制委員会は、

 ストロンチウムなどの放射性物質を除去し、トリチウムのみが残る
汚染水にたいして、


 「海洋放出」することを認めています。



 しかしながら、トリチウム汚染水の「海洋放出」については、

 地元の漁業関係者の理解が、まったく得られていないと言います。


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 ここで、私は思うのですが、

 地元の漁業関係の人たちが、トリチウム汚染水の海洋放出に
反対するのは、

 ほんとうに、まったく当然のことです。



 たとえば、今年の4月11日。

 韓国による福島など8県産の水産物の輸入禁止は不当であると
して、日本が提訴していた問題にたいし、

 WTO(世界貿易機関)は、韓国の措置を妥当とする最終判決を
下しました。



 つまり、

 韓国政府は2013年から、水産物への放射能汚染が懸念される
として、

 福島、茨城、群馬、宮城、岩手、栃木、千葉、青森の、8つの県の
水産物の輸入を禁止していたのですが、

 この韓国の措置にたいして、WTO(世界貿易機関)が「お墨付き」
を与えた形となったのです。



 このように、いま現在においても、

 千葉県~青森県までの広い範囲にたいして、海産物の輸入を拒否
している国があり、

 国際機関が、それを認めたわけです。



 この上さらに、

 200万トンもの「トリチウム汚染水」を海洋放出したら、

 関東~東北の太平洋側で水揚げされる海産物の「信頼性」に
たいして、

 ものすごく大きなダメージを与えてしまうのは、想像に難くありま
せん。



 が、しかしながら、

 40兆円もの費用が浮くというのは、経済的にすごく大きな話です。


 なので将来的には、

 トリチウム汚染水の海洋放出を、強行するような気がしてなり
ません。


 これに対しては、

 私たち「国民の目」を、つねに光らせていなければ、ならないと思い
ます。



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