経団連が原発利用を提言
2019年4月14日 寺岡克哉
経団連は、4月8日。
電力エネルギー政策に対する、「新しい提言」を発表しました。
提言のタイトルは、「日本を支える電力システムを再構築する」
というもので、全体で26ページに上ります。
この新提言では、
再生可能エネルギーの拡大なども訴えているのですが、
「原子力」にたいする記述に、気になるところ、つまり看過(かんか)
できないところが、いくつもありました。
なので、その部分を、
「日本を支える電力システムを再構築する」の本文から抜粋し、
それに対して私の思ったことを、以下に書いてみることにします。
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本文16ページの16行~18行を抜粋
政府は、安全性が確認された原子力発電所の再稼働に向けた取り組み
を一層強化するとともに、原子力の長期的な必要性を明示し、リプレース・
新増設を政策に位置づけるべきである。
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ここで、「リプレース」というのは「建て替え」のことですが、
経団連の新提言では、再稼働への取り組み強化だけでなく、原発の
建て替えや、新増設をも訴えており、
とても看過できるものではありません。
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本文16ページの24行~28行を抜粋
再処理、廃炉、最終処分といったバックエンドの環境整備や、万が一の
原子力事故に備える原子力損害賠償制度の見直しも、原子力事業の予見
可能性を確保するうえで重要となる。これらは原子力分野のなかでも国の
果たすべき役割が大きい領域であり、政府には精力的な検討・対応を
継続することを求める。
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これを見ると、
原発の廃炉や、使用済み核燃料の最終処分や、大事故が起こった
ときの対応など、
いま現在でも未解決で、ものすごく大変な問題については、すべて
国へ「丸投げ」する気満々です!
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本文16ページの30行~32行を抜粋
既に一定の立地環境整備や減価償却が行われている既設原子力発電
所については、安全性を確認し地元の理解を得たうえで、着実かつ迅速
に再稼働していくことが重要である。
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ここで再度、
原発の再稼働を「着実かつ迅速に」と、力を込めて強調しています。
経団連は、よほど原発の再稼働を進めたいのでしょう。
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本文 17ページの14行~19行を抜粋
震災から現在までに経過した8年間という期間は、原子力発電所の通常の
運転期間40年の2割に相当する。仮に運転期間を60年に延長したとしても、
全体の1割超にわたって、一切運転していない期間が存在することになる。
運転年限の計算におけるプラントが稼働していない期間の取り扱いにつ
いて、技術的観点から安全性について検討したうえで、可能な範囲で40年
ないし60年の運転期間から控除すべきである。
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ここで私は思ったのですが、
原発が稼働していなくても、劣化していく部分や部品などは、おそらく
存在するでしょう。
さらには、原発が停止していたからこそ、調子が悪くなった部分や部品
なども、おそらく存在するはずです。
たとえば自動車などの機械は、何年もエンジンをかけなければ調子が
悪くなってしまうのは、広く知られた事実でしょう。
だから、原発を運転していない期間があるからと言って、それを一義的
に「ノーカウント」にすることは出来ないと思います。
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本文17ページの19行~21行を抜粋
米国では運転期間を80年間まで延長する申請も行われ始めている。運転
期間を60年間よりもさらに延長した場合の安全性についても、技術的
観点から検討を行うべきである。
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これを、正気の沙汰とは思えないのは、私だけでしょうか。
たとえばアメリカの原発は、ほとんど地震の起こらない場所に建設され
ていますが、
日本の原発は、何回も何回も、「地震の揺れ」に晒(さら)されています。
それだけ日本の原発は、アメリカの原発に比べて、劣化が早いと考え
るべきでしょう。
ものすごく地震が多い日本では、原発の運転期間が60年でも正気の
沙汰とは思えないのに、
80年なんて許したら、震度6ぐらいの地震でも、福島のような大事故
が起こってしまうような気がしてなりません。
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以上、私の思ったことを書いてみましたが・・・
経団連による、このたびの新提言は、まるで原発推進派の考えを
代弁しているような感じがしてなりません。
しかし、
なぜ経団連は、こんなにも原発を推進しようとするのでしょう?
じつは、
経団連会長の中西宏明氏は、原発メーカーである日立製作所の
会長でもあります。
そして、このたびの新提言、「日本を支える電力システムを再構築
する」は、その中西氏が主導してまとめたといいます。
つまり中西氏は、経団連という組織を隠れ蓑(かくれみの)に使って、
日立製作所へ利益誘導するような政策が取られるように、働きかけ
たのでは、ないでしょうか。
私には、そのように思えて仕方がありません。
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